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モジュールレイアウト レールの電気抵抗 

■ はじめに

 今回のモジュールを作成している中で、KATOのユニトラックシリーズをストック品として多数持っていたので、ローカル線としてあえて使用したが、TOMIXのファイントラックシリーズの寸法に合わせて使用したため、短いレールによる構成となってしまった。 ユニトラックシリーズはジョイント部の接続に不安が有るとのうわさもあったので、モジュール毎にレールの電気抵抗を測定してみることにした。

 

■ エンドレスレールの電気抵抗

 まず始めに、円周を周回するエンドレス・レイアウトを想定して、レイアウトでのレールの電気抵抗を計算しておこう。

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 通常のレイアウトを想定して左の図の如く構成されているとする。

 パワーユニットから供給された直流は、片方のレールを通電してモータ搭載車両の車輪に届くが(プラス側)、この時、反対回りから導電しているのでこちらからも通電される。 即ち、エンドレスレールは、電気的には並列に構成されていると考える事が出来る。

 そして、モータ搭載車両のモータを駆動した後は、反対側のレールを伝ってパワーユニットに戻ってくる(マイナス側)ので、この時の抵抗はプラス側と同じと値と考える事が出来る。

 即ち、片側の一周するレールの電気抵抗を Ro Ωとすると、一周を1としてレール位置を X とすると、パワーユニットから供給されて戻ってくるまでのレール部分の電気抵抗 R Ωは、

     

で表わされる。 この式をRo を1としてグラフ化すると右の図のようになる。

 0.0 と 1.0 の位置はパワーユニットから電気を供給する給電ポイントの真上なので、レールの電気抵抗はゼロとなるのは当然である。 そして一番遠い円周の半分のところで、Ro の半分となるのである。 これは、エンドレスレールの場合は、右左の2本のレールが並列に配線されていると考えると、電気抵抗が半分になることが理解出来る。

 

■ モジュールの電気抵抗を測る

 いままで、レールの電気抵抗など測定した事が無かった。 抵抗値の測定は不安定なものとの概念があるので、上手く測定できるのか確信はなかったので、早速試しに測定してみた。 

 使用したテスターはデジタル式のもので、測定レンジが 0 〜 200Ω の最小レンジを使用したが、コンマ台の数値であった。 測定端子はなるべく新しい鰐口グリップを加工してレールを挟むようにしたものである。 この鰐口グリップの挟み方に依っても抵抗値は変化するので、何度か挟み直して最小値となる状態で測定している。

 テスターでの電気抵抗の測定は、内蔵する電池を使用しているが、どれだけの精度と信頼性が有るのか判らない。 別の電源から電気を供給し、電圧と電流を測定するして抵抗値を計算する方法もあるが、このような低抵抗の場合にはテスターを接続することによる影響が生じるとの事らしいので、テスターの抵抗値測定回路を信用することにした。

 様子が判って来たので、まずレール部分の抵抗値を測定することにする。 TOMIX のロングレール DS1120 を持ち出し、モジュールの長さ 593mm の位置でクリップを挟み、その間の電気抵抗を測定する。 下の写真。 結果は 0.2 Ωであった。

 次に、クリップの間隔を 1cm 以下にして測定すると、なんと、 0.2 Ωであった。 そして、クリップ同士を挟んでみると、0.1 Ωであった。 勿論測定のたびにその値は0.1 〜0.3 Ω程度バラツクので何度か挟み直して最小値を採用している。 

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 この事は、測定限界に近い事を示し、レール自身の電気抵抗よりも、クリップやジョイント部の接触抵抗の方が大きいのではないかと考えるべきであろう。 そこで、今回の測定は、ジョイント部の連結具合の良否を判断する材料とし、コンマ台の値は誤差やバラツキと考え、値そのものは参考値とする事にした。

 

 実際の測定状態をコーナーモジュールを例にして説明する。

 測定中の状態を右の写真に示す。 測定には接続用のレールを接続し、連結レールの中央部、即ち、モジュールの接続点を両側の測定ポイントとして、その間の電気抵抗値を測定する。 そして、その間のジョイントの数もカウントしておく。 この方法では接続レールのジョイントもカウントされるので、各モジュールの数値を単純に合計すれば連結されたモジュールの全体の合計値とする事が出来る。 端部のクリップ状態を下の写真に示す。

 また、レールは3本立てなので、ひとつのモジュールで合計6本のレールを測定することになる。 また、ジョイントの接合状態が大きく影響するため、値の大きな場合には、ジョイントを外してガタを修正後に測定している。

 モジュールの線路を固定する場合には、ジョイント部のガタをチェックし、ガタの大きい場合には調整を実施したのち組付けている。 しかし、今回の測定中でも何本かのレールで再調整した場合があった。

 このジョイント部では、少しぐらぐらしている場合はまずNGとなる。 抵抗値が10Ω以上に跳ね上がってしまったり、データがふら付いたりしてしまう。 TOMIXの場合は、ジョイントの真ん中が開いてしまっているので、修正は容易である。 まずジョイントをレールから外し、開いた部分をラジオペンチで挟み込んで修正すればOKである。 そして上手く調整できれば、レールとの接触面積が大きいため接触部の接触抵抗値は小さくなり、測定誤差の範疇に収まってしまうのである。

 しかし、KATOの場合は、ジョイントを外すのに専用の道具がいるし、ジョイントの金具部分をジョイントから外さなければならない。 かなり面倒なのである。 このため今までも、あまりメンテナンスをしてこなかった。 また、レールとの接触面積が小さいため、どうしても接触抵抗が大きくなってしまうようである。

 

■ レール下の導線

 当初から、KATOの場合はジョイント部が多くなるので対策を考えていた。 ジョイント部をハンダ付けしてしまうと良いのであるが、分解することが出来なくなるのである。そこで、せめてモジュール間の電圧降下だけでも改善しておこうと考え、左右の端のレールを導線を使って通電させておけば、途中のジョイントによる電圧降下を防止することが出来ると考えた。

 導線は、裏側から端部レールの金属部分にハンダ付けし、ジョイント部の隙間を通して反対側の端部レールに連通させた。 上の写真。 

 導線は、ビニール被覆線を使用したり、0.45mmの銅線を使用した。 その様子を上の写真に示す。 線路を分解する場合には、導線部分を切断したりハンダ付け部分を取り去れば、容易に分解でき、再利用が可能である。

 

■ 測定結果

 各モジュール毎の電気抵抗値の測定結果を下に示す。 3本の線路(即ち6本のレール)を線路配置の順で測定している。 そして、TOMIX製は青色系、KATO製は緑系の色分けをしており、やや問題のあるものは色を濃くしている。 改善を必要とする部分は橙色の危険色で示す。 なお、ジョイント部をハンダ付けした部分はジョイントとしてカウントしていません。 フレキシブルレールを使用した場合は、その連結部を全てハンダ付けしています。

No. 線路配置 抵抗値 ジョイント数 No. 線路配置 抵抗値 ジョイント数

0.5 Ω 3ヶ所
0.3 Ω 3ヶ所
0.8 Ω 0.4 Ω
0.6 Ω 3ヶ所 0.5 Ω 3ヶ所
0.6 Ω 0.3 Ω
0.9 Ω 6ヶ所。 但し、レール下の導線あり。 0.6 Ω 2ヶ所。フレキシブルレール使用
1.0 Ω 0.5 Ω

0.5 Ω 3ヶ所
0.4 Ω 3ヶ所
0.5 Ω 0.4 Ω
0.4 Ω 3ヶ所 0.4 Ω 3ヶ所
0.4 Ω 0.4 Ω
1.3 Ω 6ヶ所。 但し、レール下の導線あり。 0.7 Ω 2ヶ所。フレキシブルレール使用
1.0 Ω 0.5 Ω
0.6 Ω 6ヶ所 1.0Ω 6ヶ所
0.7 Ω 18〜79 Ω *2
0.5 Ω 6ヶ所 1.4 Ω 6ヶ所
1.1 Ω 1.4 Ω
3.0 Ω *1 8ヶ所 1.6 Ω 6ヶ所
7.0 Ω *1 23.6 Ω *2
0.3 Ω 4ヶ所 0.4 Ω 4ヶ所
0.5 Ω 0.4 Ω
0.4 Ω 4ヶ所 0.4 Ω 4ヶ所
0.4 Ω 0.4 Ω
1.1 Ω 5ヶ所 0.9 Ω 5ヶ所
0.8 Ω 0.7 Ω
0.4 Ω 4ヶ所 10 0.3 Ω 4ヶ所
0.5 Ω 0.6 Ω
0.5 Ω 4ヶ所 0.3 Ω 4ヶ所
0.4 Ω 0.5 Ω
0.9 Ω 5ヶ所 1.4 Ω 5ヶ所
0.8 Ω 0.7 Ω

 この測定結果をみながら考察してみる。

  1. ものモジュールの基本レールとしたTOMIXのファイントラックを使用した場合、直線とコーナーモジュールでは、ジョイント数も3ヶと4ヶの最小数で対応出来ており、抵抗値は 0.3 〜 0.6 Ω程度の抵抗値となっている。 モジュールNo.1、2、4,5、7、8、9、10
  2. モジュールNo.1、2、4,5におけるKATOのユニトラックを使用したレールは、レール下導線やフレキシブルレールを使用しているため、実質的には接続レールとのジョイント2ヶ所のみであるが、 0.5 〜 1.3 Ωとやや大きめの抵抗値を示している。
  3. KATOのユニトラックを使用したコーナーモジュールのNo.7、8、9、10 では、5ヶ所のジョイントを介して0.7 〜 1.4 Ωと、やはり大きめの抵抗値を示している。
  4. 大雑把にみて、TOMIXのファイントラックを使用した幹線線路では、モジュール当たり 0.5 Ω、KATOのユニトラックを使用したローカル線路は、モジュール当たり 1.0 Ωと見ておけば良さそうである。
  5. この標準的見方から外れているのでモジュール No.3 で、特にローカル線が要注意である。 *1 の記号の部分。 改善すべきかこのまま使用するかは様子をみることにする。
  6. 制御モジュールのNo.6 では、幹線とローカル線共に、ポイント部分を直行状態にして測定しています。 また、短いレールも多いのでジョイント数も増えていますが、問題はポイント部の通電性に有ります。 片側のレールは抵抗値はやや大きいものの、許容範囲と思っていますが、反対側のレールが大きかったり不安定だったりします。 *2 の記号の部分。 一方はTOMIX製であり、他方はKATO製でしたが、特にTOMIX製では値がフラフラとしており、完全に接触不良と判断しました。 この2個のポイントはモジュールから外して分解掃除する必要があります。

■ 結論

 全体の抵抗値の様子が把握出来ましたので、その影響具合を検討してみましょう。 モジュール当たり、幹線線路では 0.5 Ω、ローカル線路では 1.0 Ωとし、10個のモジュールで楕円形のエンドレス・レイアウトを構成すると想定します。

 一周するレールの抵抗値は、幹線線路で 5.0 Ω、ローカル線路で 10.0 Ωとなります。 従って上記の計算式より、パワーユニットから供給されて戻ってくるまでのレール部分の電気抵抗 R Ωは、幹線線路で max 2.5 Ω、ローカル線路で max 5.0 Ωとなります。 
  動力車の消費電流を標準的な 100mA とすると、レールの抵抗による電圧降下量は、幹線線路で max 0.25 Volt、ローカル線路で max 0.5 Volt となります。 供給電圧を5Volt で運転している場合には、その影響は 5%と10%程度であり、これによる速度変化は少ないものと思われます。 目で見ていても気が付かに程度ではないかと思われますので、今回のモジュールを使用した場合の給電ポイントは予定通りに1ヶ所で対応可能と考えています。

 しかし、上記の *2 の問題点が改善が出来なった場合には、もう一ヶ所の給電ポイントを検討しなければならないでしょう。