東海道新幹線 300系こだま 5号車

実車プロフィール

 300系は、かつてJR東海およびJR西日本に在籍した新幹線電車である。 東海道・山陽新幹線の第三世代の営業用車両として、初めて270km/h走行を行う「のぞみ」用車両として開発・製造された。 1990年に量産先行試作車が登場し、1992年(平成4年)1月から量産車のJ2編成が生産された。

 軽量化の観点から、東海道・山陽新幹線用車両で初のアルミニウム合金を使用したシングルスキン構造の車体を採用した。 そして東京駅 - 新大阪駅間を2時間30分で結んだ。 当初は名古屋飛びしとして話題になった。

 この軽くて低い車体などの技術は、700系やN700系へと引き継がれている。

模型プロフィール

● メーカー: TOMIX
● 商品名:  JR 300 系東海道・山陽新幹線 増結セットB の12号車の動力を5号車に移動させる。
● セット品番: 92810
● 発売年 : 2010年4月 リニューアル発売
● 購入日 : 2011年5月 新品購入

   

諸元と分解調査

  .

● この 5号車は12号車の動力と置き換えている。 TOMIX の編成設定では、16両編成の内で、6号車と12号車が動力車となっているが、重連走行のための原則の中で、
   動力車の間にはトレラー車を挟まない

を実践するために、この車両に動力を移動させた。

 これは二つの動力車間の動力干渉によって、引張やっこや押しやっこを起こし、カーブ走行時の脱線の危険性を回避するためである。

このシリーズは、2003年に発表された旧モデル(92639はか)のフック・リング式カプラーを通電式に改良している。 このため、各車両はこの通電式カプラーで連結され、集電性能を向上させている。

● 主要諸元

車体重量
96.4 グラム
ギャ比
i = 11
動輪直径 φ D = 5.6

● 車体を外した状態を下に示す。 連結部の幌は簡単な構造で表現されている。 カプラーの連結方法は簡単であり、小さな孫でも安心て使用させていた。

● 動力台車の構成は、スプリング・ウォーム時代の構造を踏襲しているように思われる。 ウォームのモジュールや寸法などもほぼ似通った値であった。

● 動力ユニットの側面と底面の様子を下に示す。 低いフラットな床下機器類は単純な造形形状である。 

● 全部品の分解状態を下に示す。

● シート部の表側と裏側を示す。 裏側には導電片が配置されているが、ゴム製の絶縁(?)シートによって変色しているのが観察される。 色の黒いところがシートが接触していた部分である。

● ダイカスト製のフレームの表側と裏側を示す。 重さは50.0グラムあり、全重量の52%を占めていた。 組み付け方向を示す矢印が示されており、安心して分解組付けができるのは、心憎い配慮である。

● 床下カバーの表裏を下に示す。 

● 絶縁シート類を下左に示す。 細長い部品がフレームとシート部材との間に挟むシートである。 長方形の二つの部品はモータの両側に挟んでフレームとの間に収める緩衝材と思われる。 また下右の複雑な形のゴムはウォーム保持部材を上からは保持する緩衝材である。 形状が左右に非対称であるため、組み付け方向には注意しよう。 足の長い方が中心方向になる。

  .

● 右上にモータを示す。 モータは、外径が 12mm で2面幅が10mm 、長さが25.5mm のカンモータである。 フライホイールはφ8×5mm でやや小ぶりのであった。

● 動力台車を分解して、動力系の諸元を調査した。 まず、下左の写真にウォーム部分を示す。 ウォームは外径がφ2.8 のモジュールが m = 0.4 右ネジである。 リード角はKATOに比べてかなり大きい形状である。 ウォーム軸の両端はナイロン製と思われる軸受けで保持されている。 そして黒色のウォーム保持部材でフレームに装着される。

● 動力台車は通電カプラーを組み込んでいるので詳しく見てみよう。 従来からのフック・リング式カプラーに真鍮(?)線で形成された左右の導電線を巧みに組み込んである。 を通電式に改良している。 また、台車本体は上下に分割されており、ウォーム軸を中心として回転できるようになっている。 これは珍しい構成であり、フック・リング式カプラーの動きによって台車がピッチングしないようにするための工夫ではないかと推定するが、なかなか細かい配慮がうかがえる。

● 台車部分を分解した状態を上に示す。 導電線と集電シューは、間にコイルスプリンが介在するので、スプリングを通電材としても利用している。

● ウォームホイールは歯数が Z = 16 で、ハスバ歯車になっている。 モジュールは m = 0.4 である。 このウォームホイールには、モジュールが m = 0.3 で、歯数が Z = 16 の小歯車が一体成型されており、歯数 Z = 15 のアイドラギアを介して、動輪の Z = 11 のギヤに伝達される。 即ち、ウォーム軸が一回転すると、ウォームホイールは1/16回転するが、小歯車も同じ歯数なので、ひと歯進む事になる。 そしてアイドラギヤを介して、動輪の歯車も同じく、ひと歯進むことになる。 これは、動輪を1回転させるには、ウォーム軸を11回転させるハイツ洋画あるので、即ち、減速ギヤ比は i = 11 となるのである。 動輪の直径は、φ= 5.6 mm であった。

  .

● 動輪に装着されていたトラクションタイヤは、事前に新品と交換することにした。 その交換したタイヤと新品のタイヤを左に示す。 ついでに6号車のものも交換したが、古いものは外径が6mm もあり、へたっている状態であった。

● 交換した新品は、説明書に記されている JG04 の車輪ゴム(φ5.6mm・10個入り)を使用している。 KATOとTOMIXでは、部品の表記方法が異なっているので注意しておこう。 ほぼ同じ直径をもつ動輪に装着するトラクションタイヤであるが、実際の部品もほとんど同じ寸法である。 しかし、部品の表記方法は、

 ◆ KATO: トラクションタイヤφ4×1mm  品番は Z01A4012  20個入り \400

 ◆ TOMIX: 車輪ゴム(φ5.6mm・10個入り)  品番は JG04  \500

である。 即ち、 KATOは部品の外径を示し、TOMIXは装着対象の動輪の外径を表示していることになる。 そして

TOMIXは、一個当たりの単価は2倍も高いぞ! 

 

動力特性

  .

■ モータ単品状態での測定

● まず、モータの回転するを検知する部分を決めなければならない。 まず下左の写真に示すように、フレームの下から覗いているフライホイールの部分を検討したが、ここに回転センサを取り付けると取り付ける部分が低くなって、レール面にぶつかってしまう。 外径が大きいフレーホールがネックとなっているのである。 次に、ウォーム軸とのカップリング部分を検討したが、フレームの下側では台車に干渉するので不可である。

 そこで、下側へのセンサの取り付けを諦めて、フレームの上側から観察可能なポイントを探した。 下右の写真。 しかし、上側にはシート部材がかぶさっているのでどこかに穴を開ける必要があった。 その上に、例の絶縁シートが間に挟まれているので、この部品を切り取るか、あるいは避けられる部位を選定する必要があった。

 このように検討した結果、右の写真のようにウォーム軸のカップリング部分にマーキングを施し、その上部のシート部材に穴を開けることにした。 絶縁シートも無傷の状態で使用可能であった。

● こうして回転センサを取り付けて、モータの単品状態で無負荷状態のモータ特性を測定した。 その時の測定データを下に示す。

 以前に経験した測定中のドリフトは見られなかった。 十分な慣らし運転の効果だろうか。 グラフに現れた回転数の勾配は、多くの要素が関係しているので特性要素を特定できないが、KATO製のモータと比較して約8割弱の特性となっている。 即ち、電圧に対する回転数の上昇具合が少ないと言える。

 

■ 動力特性の測定

 有線式の動力特性測定装置を使用して動力特性を測定する。 しかし、KATO製の場合と同様に、重り車両をどうやって連結させるか思案した。 この車両も専用のカプラーを使用してしているので、動力車と同じシリーズのトレラー車に重りを載せて重り車両とした。

 まず、光ゲートを遮断する部材は、カプラーの先端部分を利用してポリウレタンの塊を取り付けた。 下左の写真。 おもり車両は、下右の写真に示すように、トレラー車である4号車を使用して重りを搭載した。 重りは、鉛の小片を芯にしたソーゼージのようなクサリ?状のもので、古いレースカーテンの裾に取り付けてあったものである。 レースは廃却したがこの重りは利用できると思って保管して置いたものである。

● 測定実施日: 2016/7/6、 連結した重り車両: 122.2 グラム、摩擦抵抗 1.6 グラム。

1)速度特性:

 動力車の速度特性として、速度・電圧特性と電流・電圧特性を下に示す。

   .

 モータの回転数のデータには、上記のモータ単品状態でのデータを追加してプロットした。 少し回転数は少し落ちているが、駆動機構の摩擦抵抗による負荷のためと思われる。 ちなみに電流値のデータをモータ端子電圧を横軸にとって比較したグラフを右に示すが、電流値もかなりアップしていることが明白である。 そして回転数が上がるにつれて抵抗も増えているのだろうか、その差が広がっている。

 速度と電圧のグラフを見ると、スケールスピードが 50Km/h 〜 350Km/h まで対応していることが分かり、さすが新幹線モデルである。

 スリップ率のグラフは、ほぼ、ゼロ近辺であったので動輪直径の修正は実施していない。 これは、事前にトラクションタイヤを新品の交換していた効果だろか。

 電圧降下量については、1.0 〜1.4 ボルトとやや大きい傾向であった。 TOMIXの集電方式ではもっと電圧降下量は小さいと思っていたが以外であった。 トレラー車を連結した場合の通電カプラーの効果を期待したい。

 

2)牽引力特性

 スケール速度が100Km/h 〜250Km/h 程度になるような電圧値を設定して牽引力を測定してみた。

  .

 KATOの新幹線モデルである500系のデータと比較してみよう。 まず、粘着領域での牽引力はKATOが20グラム程度であるが、TOMIXでは30グラム弱もある。 これは車両重量が1割強も重いためだけではなさそうである。 これは、スリップの始まる点が低いことなどから考えると、古くなったトラクションタイヤと新品のタイヤとの違いでは無いだろうか。 また、特性の勾配はTOMIXの方が立っているのは、モータのパワーが大きいものと想像する。 単品のデータを比べてみないと断定できないが。

 また、ウォームギヤの当たりが変化する遷移点は、12〜14グラムもあり、KATOの約5グラムのものとは倍以上もある。 この値は、駆動機構の摩擦抵抗を示すものとして注目するようそであるが、このTOMIXのものはその摩擦損失が大きい事を示しているようである。

 期待していた電圧降下量について、2両連結の状態でも単独車両と同じような値を示している。 抵抗を並列に並べると抵抗値が半分になる原理を期待したのであるが、思惑は外れてしまった。 どこかに通電不良個所があるのか、電圧降下が生じてい場所はどこだろうか、・・・・・・などのいろいろな疑問が沸いてくる。 

 摩擦係数はおよそ0.3と読み取れる。 ボギー車の場合、全輪が動輪であるので8輪駆動である。 このうち、2輪にトラクションタイヤを履かせているので、「トラクション・タイヤの有無を比較する (新)」で検討した結果の

   トラクション・タイヤの効果係数 K =  ( N + 1.2 * n )/N

を適用してみると、 K = 1.3 となる。 500系の摩擦係数のデータは 0.25 ぐらいであるので大まかながら数値的には合致してくるのである。 即ち500系の測定時にはタイヤがへたっていたのでその効果が発揮されていなかった、という結論にこじつけることができるのだ! ・・・・・・・・・・・・・・新品で再測定すれば良い事であるのに!

  .

 

 今回の測定では、 300Km/h のスケールスピードを出して測定したのであるがスピードの出ている下りのカーブで重り車両が見事に脱線する事態が発生してしまった。 右の写真に示す位置である。 動力車は無事通過するのであるが、重心の高いおもり車両では不可であった。

 最初から気を付けておけばよかったのであるが、失敗れいである。 そこで、重り車両の重心を低くする工夫が必要となった。 次の6号車の測定では対策を実施した。

 

 .

● 出力と効率

 上記の牽引力測定データを基にして、右に示す様に、出力と効率のグラフを追加する。 2016/11/28 追記