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大型蒸気機関車:   D51 356 号機

 

実車プロフィール

 D51形は、昭和11年(1936)に本線用大形貨物用蒸気機関車として、高性能を発揮できるよう溶接を多用して車体の軽量化を計るなど、当時の最新技術が投入されて誕生した。 D51形は全体で1115両が量産され、四国を除く全国各地で活躍しました。 デゴイチの愛称で広く親しまれています。

 D51-356号機は、1940年に日立製作所笠戸工場で製造され、広前、盛岡、青森、尻内で活躍し、1968年廃車される。

模型プロフィール

メーカー : KATO
商品名 : D51
品番 : 206
車両番号: D51 356
発売日 : 1977年
入手日 : 2013年8月 中古品入手
定価 : \5,500-

分解調査

 

● 本品は、KATO のD 51初期製品の一つと判断し、動力部の調査のために入手する。

● 丸形モータ、シール式ナンバープレート、オールプラスチック製のロッド類、スポークなし先輪、リード線でのモータ配線などの特徴を持つ1977年モデルである。 KATO のD 51初代は、1973年モデルであるが、構造的にはモータの形状などが変更されているとのことであるが、基本は類似していると考えている。
● アーノルドカプラーからカトーカプラーに交換する。

● 主な諸元:

連結面間距離 148.0 mm 先輪車軸荷重 1.8 gr 動輪車軸荷重 84.0 gr ギャ比 i = 33.23
車体全重量 120.8 gr 従輪車軸荷重 2.1 gr テンダー車軸荷重 32.9 gr 動輪直径 D = φ9.5 mm

● まず、ボイラー部を取り外してみる。 興味のあったモータ回りの構成が、手持ち品の2007年再生産品であるD51-125号機と殆んど同じであることに驚いた。 リード線での配線やプラ製ロッドなどは古い構造ではあったが、この30年間の違いを感じさせないという事は、何を意味するのだろうか。

 

● この動力機構とプラ製ロッドの観察のために、いろいろな角度から見てみよう。

 ウォームと一体となったモータは、D51-125号機と見たところ同じ様な構造である。 性能仕様は異なっているかも知れないが、不安定な支持方法や外観などは30年後の製品と同じとは・・・・・・・・!。  ただ一つの違いは、ハンダ付けされている配線だけのようである。

 

 

● 小生がはじめて見るプラスチック製ロッド類を観察してみよう。 モーションプレートなどもよく出来ている。 おっと、30年後でも、モーションプレートはプラ製でしたね。

 

● 動輪押さえを外して動輪を取り外した。 各動輪軸にギヤが設定され、ギヤ駆動されている。 軸受は1977年モデルから採用された(と推定する)角型である。 また、トラクション・タイヤは第4動輪に履いているが、アメ色のゴム製であり、溝幅に比べて幅が狭い様であった。 隙間が出来ていたのは径年変化なのだろうか。

 

 

● プラ製のサイドロッドの連結穴に注目する。 両側のピン穴は、縦 1.2mm 、横 1.7mm の長穴となっており、クランクピン径はφ1.0mm であった。 また、第3動輪のエキセントリックピン径は、φ1.2mm で、クランクロッドの穴はφ1.3mm、サイドロッドの穴は 1.3mmと1.7mm の長穴であった。 即ち、サイドロッドの各ピンの軸と穴の嵌合はガタガタの組合せである事が分かる。 さらに、水平方向のガタは大きく取られており、寸法誤差に因る干渉を逃げているものと思われる。 この事は、各動輪の駆動はギヤ駆動に依存し、サイドロッドは、単なる飾りとなっている事を意味している。 プラスチック製のロッドに負担を掛けない配慮のようである。

 この2年後の1979年に発売されたモデルでは、サイドロッド・メインロッドが金属になり、内部の第1動輪ギヤはなくなったとのことであるので、2年あまりで改良したことになる。 プラ製のロッドでは、何か問題があったのだろうか。
● 次に、分解した全部品を下に示す。

● 左右のメインフレームを下に示す。 30年後のD 51-125号機のフレームと、全く同じではないかと見ていたが、一つだか異なったいる場所を見つけました。 それは何処でしょうか? 間違い探し!  ヒント:モータの配線に関係あり。

 

 

● そのモータを見てみましょう。 モータの配線はテンダーの集電子とハンダ付けされており、分解できませんでした。 しかし、線が細いので一ヶ所がすぐに取れてしまいました。 モータは分解調査で見慣れてしまった丸形のモータでした。

 

● ギヤ類は、一枚のホィールギヤと3枚のアイドラギヤで構成さてていました。 このモデルの駆動構成を下のイラストに示す。

       

● 第1動輪と第3、第4動輪はサイドロッドが連結されている。 第3動輪とは、ややガタの少ない状態でピン連結されており、第1動輪と第4動輪とは、ガタの多い状態でピン連結されている。 また、第2動輪にはロッドとは連結されていないので、ギヤ駆動のみになっている。

● アイドラギヤの歯数は、3個とも z = 30 であり、上のイラストに示す様に配置され、全ての動輪をギヤ駆動している。 ウォームホイールは、歯数 z = 24 のホイールと、 z = 13 の小ギヤによる 2段ギヤとなっている。 

● 各動輪のギヤは、歯数 z = 18 である。 このため、 動輪を1回転させるために必要なモータ回転数、即ち減速ギヤ比は、

     ギヤ比  i = 24×18/13 = 33.23

である。

● 次に、動輪押さえ、先台車、および後台車を示す。 後台車はドローバが一体となっており、動力ユニットの本体と連結する側の穴が、長穴になっているのである。 通電式ドローバを採用している後のモデルの形状と比較すると、このモデルと原型が同じであることが分かる。 テンダー車の台車はその後もモデルで変更されている。

 

● このモデルを分解してみて、KATOの蒸気機関車のルーツに近いモデルに触れることが出来た。 

 

動力特性

 ここに示す動力特性の測定は、安定化電源を使用した自動測定システムにて実施する。  測定実施日: 2013/9/27

 

走行状態:

 この車両は、最近になって中古品を入手したものであるが、30年以上も昔の製品なので、スムースに動くのかどうか心配した。 分解調査にて見る限り、丁寧に扱われてきたようであり、走行には問題ないと判断していた。

 実際に走行させると、音が大きい事には驚いた。 ギヤ音か、あるいはロッド類なのだろうか、我が動力測定台のベニヤ板に響いて、より一層うるさい音を出して走行している。 そして、車体を横に震わせながら、フリフリと走行していた。 でも、動力性能に関しては、現在市販されているモデルと比較しても遜色のない特性を示し、安定した走りをみせていた。

 

 

速度特性:

 初めに単機平坦路での速度特性を測定する。

 スケール速度の80Km/h を出すには、 4.5〜5.0 Volt 必要であり、一般的なNゲージと言える。 その速度のバラツキは小さい部類であり、安定した走りであると言えよう(走行音を無視すれば!)。 そして、スケール速度で20Km/h 程度の極低速でも、スムースに走行出来ている。

 電流も、100〜150 mA であり、一般的なNゲージと言える。 そしてそのバラつきも少ない。

 


 

牽引力特性:

 次に牽引力特性を測定した。

 右に示すようにデータのバラツキは少なく、安定して特性を示している。 駆動側では、負荷が10グラムぐらいから動輪が滑り始め、およそ15グラム近辺で粘着限界に達している。

 一方制動側では、-20グラムを超えてから滑り始めているようであり、駆動側とこれだけ差が有るのは珍しい。 その理由はまだ解析できていないので不明である。

 また、この車両の特徴としては、ウォームギヤに掛る力が逆転する遷移点が大きい事が挙げられる。 グラフから読み取ると、およそ -15グラム程度はある様子である。 これは、駆動系の構造に由来するようである。 ギヤ系なのかロッド系なのか興味のあるところである。

 動輪荷重が80グラム以上もあるのに、粘着牽引力がたったの15グラム程度しかないのはなぜなのだろうか? 察するに、アメ色のトラクションタイヤが原因ではないだろうか。 現在は黒色のタイヤに変更されているので、この推測は当たっているかも知れない。 トラクションタイヤを取り替えて測定すれば、この仮定が証明されるのであるが・・・・・・・・・。 暇な時に実験してみよう。

 ズバリ、このモデルの改良点を挙げるとするならば、

   1) 走行音の低減・・・・・・・・・・・・・・・・ KATO さんは既に改良済みである。 最近の車両は全て静かである。

   2) 駆動機構の摩擦低減・・・・・・・・・・ KATO さんは既に改良済みである。 最近の車両の摩擦損失は数グラムまで低減されている。

 この他に、モータの配線や動輪の振れなども挙げられるが、これらも改良されている。 

 

 今回の古いモデルでの性能を測定してみて、KATO製蒸機は初期モデルから基本性能は充分に満たしていたと推測する。 このため、この基本構造を大きく変えることなく、30年近くも生産されて来たと思われる。 さらに、品番が 202 の古いC11(1978年モデル)を入手しているので、こちらの性能も調べてみることしよう。

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● 追記 (2013.9.30)

 一番言いたい事を忘れていました。  先に報告したD 51-125号機(品番:2006-1、2007年4月再生産品)と比較すると、性能は全く正常である。 30年後の製品が粗悪品になってしまったとは言いたくないが、個体差なのだろうか。 それとも使用方法が悪かったのだろうか? 同時発売のD51-36号機も要注意製品なので、同時期の品質を疑いたくなるのもやむを得ないと思います。

 なお、このD51-356 号機の測定にあたっては、ノイズの心配はありませんでした。 従って、先回のようにコンデンサを取り付けていません。 このことからも、モータの品質を疑いたくなりますね。

 なお、モータが異常と判断したD 51-125号機は、思い切ってモータやウォームギヤを取り外し、さらにテンダー車の重りも取り外しました。 これによって、この蒸機は動力を失いましたが、先台車に重連用のカプラーを細工して、重連専用のD 51として仕上げることにしました。