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中型蒸気機関車:   9600形蒸気機関車 29608

 

実車プロフィール

 9600形「キューロク」は、大正2年から大正15年の間に770両が製造された国産初の量産蒸気機関車で、大正うまれの国産標準貨物機である。
 古い機関車ながら使い勝手の良さから、支線貨物や入換用として活躍する。 しかし、太いボイラーのため、重心が高くなり、短足の肥満児のごとくスタイル的にはスマートと言い難いが、小さな動輪と相まってどっしりとした重量感をかもし出している。
 

模型プロフィール

メーカー : TOMIX
品番:    2050
車両番号: 29608
発売日 :  1999年
入手日 : 2011年5月7日 中古品購入
定価 :  \8,820.-

分解調査

●  トミックスの17年ぶりの蒸機であったが、直前にマイクロエースから同じ96形が発売され、しかもその出来映えが良かったため、 トミックス96形は影の薄い商品になった。 この敗戦の影響で、TOMIXは蒸機から遠ざかっていたが、2009年のC57で復活する。 この様ないきさつのある伝説の蒸機である。

● 今となっては珍しいテンダー内にモータを配置し、キャブを貫通するシャフトで動輪を駆動するタイプである。
● ジージーとやや高めの音を立てて走行する。 オイルを差すと一時的には改善する。  ミニレイアウト走行可能。
● カプラーはカトーカプラーNに交換する。
● 主要諸元は次の通りである。

車体全重量
58.0 gf
先輪車軸荷重 1.1 gf 動輪車軸荷重 41.7 gf
テンダー車軸荷重 15.2 gf ギャ比 i = 30.0 動輪直径 D = φ8.2 mm

● 分解調査のため、車両を分解して行ったが、テンダー部分で問題が発生した。 まず、モータとドローバとが配線でくっついているためテンダーから分解出来ないのである。 どうやって組付けたのだろうかと知恵の輪のごとく考えたが、そのまま分解するのは無理とわかり、組付け時に配線のハンダ付けを実施したものと結論付けした。 わざわざ配線を切る必要も無いのでこのままの状態とする。

● さらに最悪なのは、ネジを止めていた部分からポロポロと部品のかけらが落ちてきた事である。 なんと、テンダー側のメネジ部分の円筒形突起部分が破壊していたのである。 下の写真にその様子を示す。 このままでは、再組付けは不可能である。 さて、どうしよう?・・・・・・・・・・・・・・・・・。

● 樹脂部品の劣化か? と思って見ていると、ほかの部分はまだ弾性があり、ポロポロと壊れる様子はないので、一安心するが、何故壊れたのか?

● 使用しているネジがタッピンネジなので、その楔作用によって、円筒形突起部分にひびが入ったものと推定する。 それにしても、こんな部分にタッピンネジを使うのか ・・・・・・・・。 普通の技術者なら、その応力を考えて、タッピンネジを回避するか、もっと細いネジを使用するであろうと思う。 でかいタッピンネジと薄いメネジ肉厚 ・・・・・・。 破壊するのは当然の様な気がします。 壊れてしまったので嫌味たっぷりと皮肉を言わせてもらいました。

● 気を取り直して分解を進めましょう。 他の部分は問題なく分解出来ました。

● 動力ユニットの本体を成すフレームについて、左右のフレームの内側と外側を下に示す。

● リード線が邪魔して分解出来なかったモータを下にしめす。 14mm×10mm の角型モータである。 しかし、回転子にはスキューが実施されていた。 この角形モータは古いタイプでは多く使われていたようですが、1999年の時代では、もう時代遅れではないのかと思われますが、鉄道模型の新参者には良く解りません。

● ウォーム軸は、テンダー内のモータと連結するため、長く伸びており、その先に二つ割りのジョイントが圧入されていた。 歯車は2枚で、ウォームホイールとアイドラギヤである。 ウォームホイールは小ギヤとの2段ギヤであるのだが、写真を見ると小ギヤが写っていない! 裏返して写真を撮るべきでしたが、撮影し直すには再度分解する必要があるのですが・・・・・・・・・・・。 そこまでする必要が無いのでこのままにしておきます。

● 幸いにギヤの装着状態を撮影した写真が有ったので、拡大して誤魔化す事にする。 また、下の写真に示すように、フレームには不思議なピンが2本あったが、アイドラギヤ用の軸ではないかと推定する。 他社のD51形の様に、当初は全ての動輪をギヤ駆動するつもりだったのだろうか。 また、シャフトを下右に示す。

● 次に、動輪とロッド類を下に示す。 トラクションタイヤは第2動輪に履いているが、その理由が理化出来ない。

● 動輪の直径をノギスであたっていると、トラクションタイヤと他の動輪との直径が異なることに気が付いた。 第2動輪は、φ8.5mm で他の動輪はφ8.2mm であった。 直径の差は走行移動量に影響するので、動輪の1回転当たりで、0.3mm×π= 0.94mm もズレることになる。 このズレ量はトラクションを履いていない動輪の滑りとなって表れ、走行中は車輪とレールをゴシゴシと磨くことになる。 当然その抵抗も発生するであろう。 滑り率は3.5%となる。 今まで分解調査してきたモデルでは、ノギスで測ったぐらいではその差は認められなかったのに。 車輪にはテーパーが付いているので、どの部分を測るのか問題となるので、あまり厳密には測定してこなかったが、これほど差のある例は初めてである。 設計意図を知りたいものである。 ゴムの摩耗量を見込んでいるのかな?

● 次に動力伝達機構のイラストを左に示す。

● テンダー内のモータからシャフトを介して伝達されたモータのトルクは、ウォームギヤのウォームからウォームホイールに伝達され、ウォームホイールの裏側に成形されている小ギャから、アイドラギャに伝達される。 そして、このアイドラギャに噛み合っている第2動輪と第3動輪の動輪ギヤによって動輪は駆動される。 第2動輪はトラクションタイヤを履いているため、ここで主に牽引力を発揮する。 そして、第1動輪と第4動輪は第3動輪のクランクピンを介してサイドロッドによって駆動されている。

● 動輪を1回転させるために必要なモータ回転数、即ち減速ギヤ比は、

        ギヤ比  i = 18×20/12 = 30.0

 である。

● ウォーム軸を支える両側の軸受けは、フレームの溝にしっかりはめ込まれて支持されているが、左右のフレームを組付ける時に、ウォームホイールとアイドラギヤと共に最初に組み込んでおく必要がある。 このことは、組付け状態での動輪とロッド類の回転具合をチェックすることが出来ないと言う事である。 ウォームが邪魔して動輪を自由に回転させることが出来ないからである。 これは、マイクロエースの動力改良モデルでも言えることである。

● 動力特性を測定した時に、不安定でバラツキのある特性を示したので、動輪系の回転状況をチェックしてみた。 当然、ウォームは組込んでいません。 案の定、ぎこちない動きであった。 どこか引っかかる様であったので、第3動輪のクランクピンを外した状態が下の左の写真である。 この状態でも滑らかに動かないである。 第1と第4はロッド連結で、第2と第3はギヤ連結状態で、それぞれは独立して回転させる事が出来のであるが、ロッド連結グループもギヤ連結グループもぎこちない回転である。

● 動輪押さえを外した下右の写真の状態で観察すると、各動輪軸が首を振って回転している事を発見した。 今まで見てきた蒸機では、動輪はスラスト方向にはかなりのガタが設けているが、首振り状態は無かったように記憶する。 動輪軸の軸受とフレームの溝のガタが大きいのである。 さらに、ギヤ連結グループでは、さらにアイドラギヤがフラフラしており、とても滑らかな回転とは言えなかった。 これは製造誤差と言うよりも設計思想の問題のような気がする。 加工や組付け精度を押さえるべきキー部分はどこなのか、などの蒸機モデルを作るノウハウが不足しているのではないかと勘ぐってしまうのである。 心配になって、品番が2003のC57をチェックすると大丈夫であった。 対策されている様である。

● 次に、左右のフレームをネジ止めするネジとナットとスペーサを下に示す。 スペーサは、左右のフレームを離して絶縁分離しておくものである。 ネジは問題のタッピンネジを使用し、ナット側は四角い回り止めの頭を持っているが、ネジ部の肉厚は薄いのである。 でもこのナットは問題ないようである。 フレームの穴にピッタリ挿入されているので、応力が逃げているものと推測する。

● 前照灯は単純な麦球であり、バック走行でも点灯する。

● 次にテンダーの一番後ろの車輪がふらふらするのでカプラーのカバーを外してみた。 すると車軸が分断されていた。 下左の写真。 カプラー装着部分を引っ込めるために、車軸が犠牲になっているのである。 車軸を分断して走行性は大丈夫なのだろうか? フラフラする車輪でも脱線しなけらば良いのあるが、普通に考えると採用しない構造と思いますが。 他社では、見栄えよりも走行性を考慮して、カプラー位置を少し下げていますよね。

● 次に見慣れない集電板を紹介しよう。 右上の写真はテンダーの前2軸から集電する集電板である。 なんだか厳つい形状をしています。

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● 最後に壊れてしまったテンダーのネジ止め部の修復具合を報告する。 このままジャンク箱に入れてしまうのもシャクなので、分解出来無くなっても仕方が無いと腹を決めて、左の写真にように、ネジ止め部分を樹脂で固めてしまいました。

● まずドローバーの穴の回りにオイルを塗って接着剤が付かない様にし、エポキシ樹脂をネジ穴回りに流しこみました。 これにより、テンダーと台車は接着され分解出来ない様になりました。 集電板とドローバーを取り外す事も出来なくなりましたが、もう分解する事は無いと思っていますので、これで充分です。

● 再組付け後の走りは相変わらずですが、Nゲージの蒸気機関車として、いろいろな勉強をさせて頂きました。 当然ながら、やはり走りの良し悪しは、製造技術だけでなく設計技術も重要であることや、発売当初からマイクロエースの96形に負けていたことなども納得出来る事です。

● TOMIX では、この96モデルの失敗の原因を踏まえ、2009年のC57-135号機の開発に生かされたものと推察します。

( 2013.8.4 追記 )      

 

動力特性

 この問題の多いモデルについて、複眼思想で見ることによって、模型としての特質を少しでも理解出来るようになるのではないかと考え、いろいろ触って見ることにした。 例えばトラクションタイヤの有り無しでの特性の違いや、直径違いによる影響などを調べてみようと考えたのである。

   その調査結果を、 ⇒ TOMIX 9600形の動力ユニット  に示す。 ( 2013.8.18 追記 )

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 ここに示す動力特性の測定は、自動測定システムを使用して実施する。 測定実施日: 2013/4/7

 

暖機運転:

 動力特性を測定する前に暖機運転を実施するも、運転中の測定は実施せず。

 

速度特性:

 速度特性は蒸気系として遅い設定となっている。 スケール速度の80Km/h を出すのに 7.5Volt も必要であり、河合商会のB6シリーズよりやや早い程度である。

 電流は、100 〜 140 mA で一般的なレベルである。 しかし、速度も電流もバラツキが大きく走りは少し不安になる状態である。

 

牽引力特性:

 粘着領域での牽引力は10グラム程度で、動輪荷重に対してはやや小さめか。 しかし、制動系は20グラム程度まで頑張る事ができているので、このアンバランスは何故なのだろうか? カトーやマイクロが第3動輪にトラクションタイヤを設定しているのと異なり、このTOMIXの96は第2動輪に履いているが、その違いなのだろうか。 動輪の荷重配分を検討した結果なら逆効果のような気がする。 牽引力による荷重移動を考えると後ろの方が良いようなきがする。

 この牽引力特性も大きくバラツイテいる。 テンダーモータ方式による性能のバラツキとは考え難いので、部品精度や組付け精度の問題なのだろうか? 

 このバラツキのため、ウォームギヤに掛る力が逆転する遷移点がはっきりしない。 データからは、10グラム以上はありそうなので、駆動機構の摩擦抵抗が大きいようである。

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 この機関車の特徴として、 電圧に対する速度が遅いのでカトーやマイクロの96シリーズとの重連は無理のようである。 重連させるなら、同種との機関車同士に限定されると思われる。

 また、走行音については、オイルを差すと一時的には改善されるが、テスト終了近くになると、また、ギリギリと怪しい音を立て始めていた。

                                          ( 2013.4.8  追記 )