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鉄道模型 動力車の調査   KATO製 C57 1次形 C57-33号機の動力特性

■ いきさつ

 動力特性の調査として、今回は最近入手したばかりのKATO製 C57 1次形 である C57-33号機を調査した。 およそ1年ぶりの測定であったので、手順や装置の調子を調整るのに手間取ってしまったが、なんとか昔の様なデータを取得することが出来た。 測定データの解析は別のレポートにする予定なので、ここでは、データの紹介までにしておきます。

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■ C57-33号機の概要

 このC57-33号機は、2014年に発売された4次形をもとにしたバリエーションであり、また、2015年に発売されたC59とも類似の構成のため、動力機構はほとんど穴痔であった。

 

 

 測定に必要な諸元は、分解調査の結果を下に示す。

 

品番 2024 品名 C57 1次形
エンジン部重量 49.5 グラム テンダー重量 19.4 グラム
動輪直径 11.4 mm ギヤ比 37.64

 

 分解は、極めて簡単であり、今までの中で一番楽々と実施出来た。 構造的によく考えられた構成になっているである。 KATO技術陣に敬意を示そう。 測定のために必要な動力部を分解した状態を下に示す。

 動力部は、C57 と C59 は殆ど同じであった。 ただ、ボイラーの太さが異なるため、フライホイールの太さと長さが違っている。 C59 の方が長くて太いのだ。

 モータはコアレスモータで、他のモデルと全く同じと判断した。 ウォームは2条ネジであり、サイズとはC57 と C59は同じであった。

 

 

■ ライトユニットの電気特性

 分解調査したついでに、ライトユニットの特性を測定しておこう。

   

 このライトユニットは、品番が2016と記されていたので、2012年の発売されたD51型モデルに使用されたものと推定する。 品名も「D51 北海道形ライトユニット」となっており、この種のSLに共通使用されている標準部品となっているようである。 ライトは側面発光のチップLEDを使用し、抵抗を直列に配置し、コンデンサも並列に挿入されている。

 このユニットの電気特性を、上の写真の様な道具を使って測定した結果を左にグラフに示す。

2.5 volt 辺りか発光を始めて、後は直線的に電流が増加している。 これは560 Ωの抵抗による特性である。

 

 

■ 空転回転特性の測定

 先回の解析により、動力機構の空転回転特性が意外と重要であることが判明したので、さっそく採用した。 方法は先回の報告と同じ方法で実施した。 ギヤ比のチェックのために、歯車部分まで分解しているので、ウォーム軸のみを組付けた状態からスタートした。 そして、ホイールギヤとアイドラギヤを組付けた状態と、動輪やロッド類を組付けた状態を順次測定した。

 測定結果を下に示す。 回転数特性は問題ないものの、電流値では不思議な現象に出くわした。

 測定開始時点に於いては、15mA 以上の高い電流まで上昇している特性であったが、いつの間にか5mA 以上も低下する特性に変化していた。

 変だなーと思いつつ慣らし運転の影響かと勝手に判断して、ギヤ付きの測定に入った。 この時、ギヤの軸受け部には少しオイルを注しておいた。 測定を開始すると、電流値はさらに低下していた。 そして、動輪とロッド類を取り付けた状態では、これまたさらに低下しているのである。 勿論、動輪の軸受け部にも少しのオイルを差しているのだが、どうやらこのオイルが原因ではないかと推察する。

 最初の大幅な電流低下は、ウォーム軸の組み付け時のミスかも知れない。 組付後、手で回して軽く回る事を確認したが、これだけでは不十分だったようである。 そして次の様な事を学んだ。

  1. KATO製モデルは精巧に出来ているので、再組付け時には細心の注意を払ってコジレない様に組付けよ。
  2. KATO製モデルのロッド類は、精巧に、かつ、巧妙に出来ているので、気楽に組付けたとしても、コジレなどの抵抗も無く、全くスムースに作動する。 どこかのメ−カーのように、動輪間の位相合わせに四苦八苦することもないのだ。 素晴らしい!
  3. 僅かのオイルを注油するだけで、当然ながら摩擦抵抗はグーと低下するのだ。

 ところが、ロッドや動輪の摩擦抵抗を調査する目的が、パーになってしまった。 マイナスの摩擦ですとは、とても宣言出来なないのだ。 ウォーム軸だけの最初の状態に戻して測定すべきかどうか迷ったが、ギヤを外す作業と再組付けするために、さらに2回も分解組付けしなければなならないので、面倒なのと安全安心のために、このままにすることにした。 データとしては、最も低い値を示した状態をウォーム軸の摩擦抵抗とすることにする。 いい加減だね。

 また、6〜7ボルトのあたり、回転数では 1,300rpm 辺りに変曲点が見受けられるが、回転軸の共振点だろうか。

 

■ 動力特性の測定

 いつもの様に、下に示す測定装置で動力特性を測定した。 今回は、今年入手したノートパソコンを使用している。 Windows10 を使っている。

 測定車両は、フライホイールに付けた回転マークを検出する回転センサと、両側のフレームの電圧を測定する端子をセロテープで貼り付けいる。 このためボイラなどの部品を取り付けられないが、重りで重さは調整している。 ライトユニットは取り外している。 連結している車両は、重り車両である。

 

◆ 速度特性の測定

 最初に、測定台を水平に保ち、機関車単体で走行させて、電圧変化による車速などを測定した。 一連の測定データを下に示す。

     

 以前測定したC59-123号機のデータと比較して、電流値のバラツキが大きくなっているが、全体的な値は小さいのである。 そして、速度の2乗に比例する傾向がみれないのだ。 リニアに上昇しているのある。 また、モータ端子電圧の測定値は10ボルトでサチレートしてしまっている。 測定回路上の問題のようである。 このため、電圧降下の値が異常に飛び出している。 これは明らかに測定ミスである。

 次の、負荷をかけた状態での速度特性を始めた測定してみた。 後から測定データを解析して求めた負荷の値は、登り坂で 6.8グラム、 降り坂で 6.0グラム であった。 測定結果を上記のデータと重ねてフラフに示す。

     

 ムーーン ?!  単純に平行移動しているだけではないのだ! 速度が上がると抵抗が増えるし、力が掛かると抵抗が増えるのは当然としても、お互いの相互作用があることになるのだ。 単に、それぞれの影響を足し算するだけではダメであるという事を、このグラフは示しているのである。

 数式化する場合には、速度項と抗力項に加えて相互作用項が必要となってくるのである。 また、式は立ったとしてもその係数をどうやって推定していくのだろうか。 多くの測定条件の設定とその測定データが必要となってきてしまうだ。 これは大変な作業になりそうである。

 そこで、この現象は目をつぶることにしよう!  測定データは平行移動しているよね!  近似線の引き方が悪いのだ。 その差異は測定誤差の中に含めることにして誤魔化すのだ!

 

◆ 牽引力特性の測定

 次に、牽引力特性を測定した。 装置の不具合などでかなり手間取ったが何とか下記の様なデータを取得することが出来た。

     

 この電圧降下のデータは、微妙な様相を呈している。 傾向があるような気配があるものの、何とも言えないのである。 集電はテンダー車からメインに集電している筈なので、牽引力とは関係しないはずなのに・・・・・、とか、車速が 80Km/h 辺りで山になっている理由は? とか、

 スリップ率に関するデータは綺麗に取れており、問題無いものと判断する。

■ まとめ

 昔のように動力特性の測定が再開できる見通しが立ったので、装置の改善を実施しながら次のモデルの測定を実施して、SLに関するデータを蓄積して行こう。 データ解析はその後に実施しよう。

 

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  2018/6/2