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8100型 小型蒸気機関車を組立てる

■ はじめに

 ワールド工芸社から発売された 「Nゲージ 国鉄 8100型 (北炭真谷地 5052 仕様) 蒸気機関車 組立キット 」 を組付けました。 ハンダ付けや塗装の腕は、今までの学習の甲斐があって少し上達したと自己判定しています。 いつも参考にさせてもらっている “ Nゲージ蒸気機関車 ” さんのレポートを今回も参考にさせていただきました。 仕様は少し異なっていましたが、大いに参考となりました。 キットの組立技術の腕はまだまだ未熟ですが、“ 鉄道模型はスムースに走って楽しからずや ”  のモットーに従って、今回も下手くそながらも、余分な工作を実施しています。 ここでは、自分なりに工夫した内容を主体に報告しよう。

 

■ ハンダ付けのための治具の工夫

 下左の写真に示す動力部のシャシー部分のハンダ付けに於いては、治具を使わないと無理であると直感しました。 A1-3 と A1-6 の部材を H1-1 にハンダ付けするものですが、組付け位置は突起と穴でカッチリと決まるのですが、手で持って保持するには不安定であり、水平状態なども怪しくなります。 そこで、下右のようなベークライトの棒に、部品をセロテープで固定して、ハンダ付けをする事にしました。

 一番困ったのは、高さ合わせです。 物差しやらノギスで測ってみるものの、部品が複雑な形状をしているため、正確に測れません。 部品の横を透かしながら、プラバンを削って高さを合わせましたが、組立説明図にこれらの寸法が書いてあれば作業は容易だったのですが・・・・・・。

 次に、スライドバーを組付けました。 シャシーは治具の上で固定されていますので、ハンダの熱で折角固定したシャシー側のハンダが溶けても安心です。

 スライドバーの固定には、シッカリとハンダを盛ったつもりでしたが、ロッド関係の調整や分解組付けを実施しているうちに、グラグラになってしまうトラブルが発生してしまいました。 この報告書を編集中に気が付いたのですが、“ Nゲージ蒸気機関車 ” さんのレポートのように、シリンダ側で直角に曲げておけばハンダ付け強度が有ったように思われます。 しかし、シリンダブロックを組付けようとした時に、この出っ張りが邪魔しますので、確認しておく必要があります。 自分の場合は、組み付けのために、出っ張りを切断してしまいました。 そして、グラグラになったスライドバーは、周りに部品が組付けられているため再ハンダ付けが不可能なため、接着剤で固定しました。 しかし、その効果の程は自信が有りません。

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■ 動力伝達機構の構成

 モータと動輪の間の動力伝達機構の調査を、組み付けの段階で調べておくことにしました。 右の写真を参照。

 ウォームは、モジュール m = 0.4 で、φ4.0×10 の大きさです。 ホイールは、歯数 Z = 19 で、Z = 10 の小ギヤと2段ギヤを構成し、アイドラギヤを介して動輪ギヤに噛合っています。 動輪ギヤは、 Z = 10 でしたので、ウォームホイールと動輪とは、1対1の関係になります。 そして、減速ギヤ比は、 i = 19 となります。

 なお、第1動輪はC13 型の様なギヤ駆動していませんので、ロッド駆動だけとなります。 動輪直径は、φ = 7.6 mm でした。 トラクションタイヤは有りません。

 

■ ロッド類の組付け調整

 今回も、ロッド類の調整に苦労しました。 そこで、頭を冷やし、自己流の調整方法を考えたので、記録に残しておきます。

 左のイラストを参考にしながら説明します。 ここで、第1動輪はロッド駆動のみで、第2動輪と第3動輪はロッド駆動とギヤ駆動の併用とします。

 サイドロッドの穴とピンとの嵌合具合をチェックすると、第2動輪用の穴が一番しっくりしており、第1と第3動輪用の穴は少しガタがあるようでしたので、第2動輪を基準として調整することにしました。

 まず、第3動輪の左右のピンを取り外した(組付け前の)状態にします。 そして、公式側のサイドロットのピン位置を一番下の位置になるように動輪を回転させます。 左のイラスト参照。 こうすると、第2動輪と第1動輪の公式側のピン位置の位相が正確に(ガタの範囲内で)一致するはずです。

 次に、この状態で、非公式側を見ると、第2動輪のピン位置はおよそ90度進んだ位置に来ますが、第1動輪のピン位置もここにきているはずです。 もしここで第1動輪と第2動輪のピン位置が狂っていると、その結果として、非公式側のサイドロッドが傾いてしまうはずです。 第1動輪の外側にはスライドバーがあり、観察しずらいので、第3動輪の中心軸の位置を参考にしながら、水平がどうかを判断します。 そして、第2動輪のピン位置は正しいものとして、第1動輪のピン位置を輪芯を回転させ、サイドロッドが水平になるように調整します。 調整出来たら動輪を回転させ、第1動輪と第2動輪のリンク駆動の調整具合を確認しましょう。 滑らかに回転すれば調整OKです。

 次に、第3動輪のピン位置を調整します。 第3動輪は、ギヤでも駆動されますので、ギヤのガタを考慮しながら調整する必要があります。 このため、ウォームを組付けた状態の方がやり易いのです。 その説明のために、右のようなイラストを作ってみました。

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 ウォームとホイールと動輪ギヤだけの簡単な構成ですが、動輪に掛ける力の方向と、各ギヤのガタの方向に注目してください。

 ギヤのガタを詰めるために動輪を回転させますが、ウォームを組付けていない場合は、動輪同士で力を保持する必要があります。 この時に、動輪に掛ける力は、片方が駆動状態の前向きの力の場合には、他方の動輪は、必然的に制動状態の後ろ向きの力が掛り、ギヤのガタもこれに合わせて詰まっていきます。 でも実際の走行時には、この様な駆動状態と制動状態が混在した現象は絶対に発生しません。 この状態で、ピンの位相を合わせてしまうと、コジレが発生したり、片方の動輪がロッド駆動の状態のみになり、無理が生じる恐れがあります。

 次にウォームを組み込んだ状態でガタ詰めを実施すると、ウォームの歯の部分で力を受けるため、両方の動輪を同じ状態にしてガタ詰めを実施することが出来るのです。 制動状態にしても同様です。 こうして、第2と第3動輪の間のギヤのガタ詰めを実施した状態が実際の走行状態を再現しているので、この状態で、サイドロットのピン位置の位相を調整すると、スムースな駆動伝達が出来るはずです。

 実際の状態を下の写真に示す。 左の写真が公式側で、右の写真が非公式側です。

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■ 試験走行

 組付けが完了したので、試験走行を実施しました。 線路は、右の写真のように C280 の曲線路と S280 の直線路の簡単なエンドレスで実施しました。 

 走り出しは順調でしたが、カーブで先輪が脱線してしまいました。 また、C13でも発生したパワーユニットの赤色点灯も発生しました。 原因は先輪と判断して接触具合をチェックしました。 やはり、シリンダブロックと先輪が接触していたので、シリンダブロックを後方にズラしました。 組付け時に、スライドバーとの干渉のために前の方に組付けていたが、これば悪かった。 そこで、マイナスドライバを使ってこじりながら1mm近く移動させる事が出来たが、先輪との隙間は確保出来たものも、あちこちが歪んでしまったようである。

 左回りでも赤色点灯が発生したので調べてみると、今度はシャシーフレームと接触していた。 線路に乗せて眺めると、先頭部分のランボード(?)が、上下と左右に曲がっており、さらにねじれも発生していた。 このため、車輪とフレームが接触したようであり、これらのひずみを強引に力任せに修正した。 このため、スライドバーも当然歪んでしまったので修正している。 これらの調整でも、干渉を避けることが出来なかったので、フレームの一部を部分的に削る事にした。 さらに、カプラーとも干渉していたので、カプラーも同時に削った。

 こうしてようやく、右回りと左回り共に走行可能とすることが出来たので、C13を持ち出し、重連走行を試してみる事にした。 C13の牽引力不足を重連させる事で、すこでも解消しようとするものである。 この時の動画を下に示す。

 動力機構が類似しているので、多少の速度違いは対応出来ると判断した。 重連させてもスムースに走行可能であった。

■ ヘッドライトの点灯工作

 今回も C13 と同様な加工を検討したが、LEDの足を通すために煙室扉に小さくて長い穴をあける必要があった。 しかし、真鍮製の分厚い扉なので、穴あけ加工は困難と判断して中止することにした。 樹脂製なら迷わず実施したのであるが・・・・・・・・!。

■ テンダー台車の集電化工作

 試験走行では、やはり少しぎこちない走りを見せたので、テンダー台車の集電化工作を実施することにした。 台車はC13の場合と同様に、Bトレ動力の台車を使用した。 テンダーの底には、高さ調整のために、1mm 厚さのプラ板を貼り、カラーを介してネジ止めするようにしている。 下左の写真。 また、固定配線にするため、機関部とテンダー部を連結するドローバーピン部は、上側に 0.1mm の燐青銅板を貼りつけて抜止めとし、板バネのバネ作用で脱着可能とする細工を実施した。 下右の写真。

 導線は、0.2mm のポリウレタン線を使用している。 テンダーの第1輪の軸保持部材には、2mm 程度の切り込みを付け、被覆線の被覆部分を切り取って絶縁導管としている。 これによって、第1輪の軸の上側を通過させると共に、ポリウレタン線の緩やかな保持と絶縁も可能となっている。 上左の写真。

 また、Bトレ動力の台車レリーフは違和感があったので、無理の無い程度に削り取って、組立キットの台車枠側面を貼りつけている。 上右の写真。

■ 塗装と最終組付け

 部品を分解して塗装を実施した状態にて、下の写真のように分解部品の撮影をした。 今回の塗装は意外と上手くいった。

 組付けた状態を下に示す。 なお、重りについては、ボイラーの内側に水草の重りをいっぱい詰め込みましたので、提供されていた重りは使用しませんでした。

 また、レイアウト上での走行の様子を動画撮影した。

 走行速度は、まだまだ低速にさせる事が出来るが、我がレイアウトの登り坂を登りきる事が出来なかったので、ぎりぎりの電圧で走らせています。 牽引する車両を減らすともっと低速走行が可能であろう。 また、動画撮影後、ロッド類の調整を再実施したが、もう調整手順書があるので安心して手順どうりに実施できた。 第1動輪の位相が少しズレており、さらに動輪のピンがスライドバーと当っているようであった。 再組付け時、クロスロッドの組付けに難儀したので、歪んでしまったのであろう。 再調整後はスムースに走行していた。

■ 最後に

 今回の工作も四苦八苦したものの、楽しみながら実施することが出来た。 配管のハンダ付け少しずつコツが分かって来たようである。 さらに大型のSLキットに手を出そうかと思っていた矢先に、名古屋栄の鉄道模型展で、KATOの C12 の実物を見てしまった。 配管などのディテールもしっかり作りこまれており、これが \7,500.- 程度で入手できると思うと、金属キットに手を出すのが躊躇される。

 大枚3万以上を出して下手くそなハンダ付け工作を楽しむのか、1万程度で走りの良い上に、見栄えも良い車両を揃えるか・・・・・・・・・?

 鉄道模型に出せる 「毎月のお小遣いは、5千円程度 」 と決めている年金暮らしの小生には、重大問題なのである。