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KAWAI製B6のモータを交換する

■ はじめに

 KAWAI 製B6は、外観が気に入っている小型蒸機であるが、ノロノロとした走りとジーと言う走行音が不満であった。 分解調査の時より、内歯車減速部を取り去るとギヤ比は小さくなって走りは良くなり、その上に、走行音も改善するのではないか思っていた。 そのための工夫はないだろうかと思案していた時、ジャンク箱の中のあるモータに目がとまった。 そこで、そのモータを使って載せ替えを実施してみる事にした。

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■ 組付け作業

 まずKAWAI 製B6の構造を復習しておこう。 マイコレクションのB6 機関車2120号機 にてその構造を詳細に説明しているので参照下さい。 そこに掲載した動力伝達機構のイラストを右に示す。 モータ軸とウォーム軸には内歯歯車による減速機構が構成されており、減速比は 1/2 である。 動輪のギヤは歯数が Z = 20 なので、ギヤ比は i = 40 となる。 この内歯歯車の減速機構を取り去ると i = 20 となり、スピードアップが出来ることになる。

 ここで、ウォームがモータ軸に直接取り付けられたモータを探してくれば、この課題を解決する事が出来るのである。 ジャンク箱の中のあるモータに目がとまったのは、KATO のチビ凸用動力ユニット(Bトレ用動力ユニット、品番: 11-103)である。 このタイプの動力は当初からその集電性能の不安定さに泣かされてきた。 分解掃除を実施してもすぐに作動不安定となってしまっていた。  “集電性向上剤 LOCO ” を塗布して走行させたると低速でもスムーズに走行し、見違える走行性能を発揮していたが、その効果は長く続かなかった。 このため、幾つかのユニットはこうして分解されてジャンク箱の中に眠っていたのである。

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 重要なウォーム寸法はモジュールが m = 0.3 で合致しており、直径もφ= 4.0 とほぼ同じであり、このウォームとホイールは問題なく噛合わせる事ができる。 更にモータの大きさは、14×9.5mm であり、ほぼ同じ大きさであったので、搭載可能であると判断した。 モータの大きさの比較を左の写真に示す。

 搭載させるモータが決まったので、本来ならば、ここで動力特性の見込みを計算して、チェックすべきであった。 B6 機関車とチビ凸用動力ユニットの動力特性は既に測定済みであるので推定できたのである。 しかし、先を急いで工作に取り掛かってしまたのである。

 まず、工作相手の車両は、深く考えずに2286号機を手にとってしまった。 そして分解してモータを当ててみると、なんとか搭載出来そうである。 まず、問題点を探してみると、

(1)モータの首の部分にはフレームのブリッジが邪魔しているので、大きく削り取らなければならない事が判明する。 この部分は、フレームのもっとも弱い部分に近く、フレームが折れてしまう危険がある。

 フレームが折れてしまったモデルを自分は持っているのである。 2010年に中古品として入手した2台の2120号の内の一台が、分解時にボロボロとフレームは分解してしまった車両である。 特に力を入れた訳ではないので、噂の製造不良品と判断して、そのままジャンク箱行きであった。 そのフレームの断片を下左の写真に示す。 この大きな断片と共に、幾つかの細かい破片が有ったと記憶しているが、それにしても無残な壊れ方であった。 この様な危険性があるので、干渉部分の削りは最小限に留めることと、最新の注意で削り工作を実施する必要がある。 

 

 削り足らない分はモータ側を削ることにして、ブリッジ部分を残しておくことにする。 この工作ポイントを右上の写真に示す。 

(2)モータのブラシホルダの頭がフレームとそっくり干渉するので、フレーム側を内側から削ることにする。 かなりの量を削る必要があったので、表側からφ2.5の穴をドリルであけて工作を容易にした。 この位置はモータを搭載する位置とも関係するので、(1)の問題と兼ね合わせながら位置決めした。 即ち、ウォームとホイールの噛合い具合と(1)の削り具合により、モータの位置を決めたのである。 結果的にはモータは少し傾いて載せることにした。 なお、モータ軸に圧入されているウォームは、少し先方にずらし、反対側のウォームは抜き取っている。 この工作は、「12m級のELをつくる」にて紹介した方法で実施した。 たたく側の工具は先のとがったポンチを使用。

(3)主な干渉部分は上の2ヶ所であるが、ウォームとも少し干渉しそうなのでウォーム回りも削ることにした。

 フレームを削った状態を下左に示す。 削りは主にルータを使用し、エンドミル型や丸形の工具を使って焦らず、慎重に実施する。 モータのブラシホルダの頭も丸く削ってフレーム側の削りを助けている。 

 モータ側は、丁度プラスチック製の部分が干渉していたので容易に削ることが出来た。 まずブリッジ部分に対応する部分には溝状に削りを入れ、上側は後からボイラ部との干渉逃げのために角部を削っている。 また、ブラシホルダにつながっているターミナルは、そのままでは角の部分がボイラ部と干渉するので、一度分解して角の部分を後ろ側になる様にひっくり返して組付けている。 さらに先端を折り曲げて、フレームとの隙間に差し込んでバネ作用でモータを固定出来るように、さらにコンデンサの足をハンダ付けして、モータのノイズ対策とした。 下の写真を参照下さい。

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  無事に削り工作の完了したフレームを上の写真に示す。 軽くドライバで叩いてヒビが入っていない事を確認して安心しました。

 右の写真は、フレームにモータを当ててみた状態です。 ウォームはもう少し前に出した方が良さそうですが、軸から外れそうだったのでこれで良しとしています。 また、歯の噛合い具合は、モータの傾きを替えれば調整できるので、組付け時に実施することにしました。

 前部品を並べた写真を下に示す。 意外と部品は少ないですね。

 

 モータをフレームの間に組み込み、フレームをネジ止めしました。 ウォームギヤの歯の噛合いを見ながらモータの傾き決め、さらにモータの下に、厚さ 1mm のプラ板を枕として差し込み、位置決めとしました。 この状態でネジを締めると、モータの本体が固くなり、固定されている事が分かります。 

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 そして、両側のフレームから通電して、モータが軽やかに回転することを確認した時は、思わず ”ヤッタゼ ベビー !” とガッツポーズをしていました。

 この後は、動輪や従輪を組付け、動力ユニットの状態で、レイアウト上で試運転を実施しました。 静かに走り出した時は今までの苦労が報われたと感激ものでした。 そして、最後の仕上げとしてボイラー部を組付けましたが、どうもしっくり行かないので、何処かが干渉しているようでした。 原因はモータのブラシ部分の樹脂部分がボイラーに当たっていたのでボイラーとモータの両方を削りました。

 また、モータの後ろ側の軸端も干渉していたので、これも双方を削りました。

 

 完成した動力ユニットとボディを左の写真に示す。 最終的な組付け状態は、以前の姿と変わりませんでした。 当然ですね。 良く見るとキャビンの中の様子が少し違っているだけですからね。 走りはスムースで低速でも粘りを発揮しています。

          満足!  満足!

 

 

 

■ 動力特性の測定

 改造後の動力特性を測定した。 いつものように安定化電源を使用した自動測定システムにて実施する。 速度特性については、改造前と後を比較出来るように表示してみた。 およそ4Volt でスケール速度の80Km/h を出す事が出来ており、一般的なNゲージの特性になっていることが判る。

 また、牽引力特性についても同様に測定した。 車両の重さは41.5グラムから38.6グラムと軽くなっているが、粘着領域での牽引力は、6グラムから8グラムとアップしている。 車輪の回転数が上がったせいだろうか。 また、通常の駆動力勾配がかなり寝ていることは注目しておきたい。 牽引力ゼロの場合から最大牽引力になると、速度が半分以下に低下しているのである。 これは登り坂になるとグーとスピードが落ちることであるので不利なようであるが、見た目には粘り強い機関車に見える。 さらに、重連させる場合にも、相手と協調しやすい事でもあるので、内心 “ しめしめ ” と思っている。

 実際に、トーマのB6 2272号機と重連させ、ミニレイアウト上で小型客車をゆるゆると牽引する様子を見ていると、何時までも飽きないのである。

■ あとがき

 後から気が付いた件ですが、動力特性を測定したデータがあるので改造による特性変化を計算してみることにしました。 まず、ネタ車両のB6 2286号機と使用するモータと同じモータを使用している動力ユニットとしてEF58 150号機 の測定データを活用することにします。

 まず、チビ凸用動力ユニット/EF58 150号機の速度特性より、4 ボルトと7ボルトの時の速度を計算します。 そしてギヤ比と動輪直径よりモータの回転数を求めます。 ここで、モータの回転数Nm は、車輪とレールとの間のスリップ率は考慮していない場合として、「鉄道模型工学概論/動力特性の基本式 減速機」の(10)式

を使用して計算する。 次にこのモータ回転数を使って、B6 2286改造車の車速を計算します。 速度はスケール速度として計算していますので、モデルの縮尺は1/150 で計算しています。 計算結果を下の表に示します。

車両 ギヤ比 動輪直径 4V速度 7V速度 4Vモータ回転数 7Vモータ回転数
B6 2286 40 8.4 mm 26.7 Km/h 64.5 Km/h 4,690 rpm 11,322 rpm
チビ凸用動力ユニット 12 6.5 mm 109.2 Km/h 235.4 Km/h 7,430 rpm 16,022 rpm
B6 2286改造 推定 20 8.4 mm 88.2 Km/h 190.3 Km/h
B6 2286改造 実際 20 8.4 mm 71.4 Km/h 170.8 Km/h 6,268 rpm 14,990 rpm

 さて、実際のB6 2286改造車の車速はどうだったのでしょうか?

 前記の測定データより、4 ボルト時では、71Km/h、7ボルト時では171Km/hと読み取れる。 推定計算の結果とは差があり、その割合はおよそ81%と90%であった。 これは集電回路の電気抵抗の違いにより、線路への供給電圧が同じでもモータ端子電圧が異なって来るためと考えています。

 このように、工作前でも推定計算が出来たが、河合とカトーのモータとはその特性の違いが有るのは当然であるので、単品でも測定しておくともう少し正確に予想できたであろう。