HOME >> 鉄道模型工作室 > 小型のターンテーブル式実験装置を作ろう 疑問点の検討
先回の報告にて気になっていた2点の疑問点について、実験を実施して内容を検討しました。その結果、前照灯の回路が影響しているものと判断しましたが、さらに新たな課題も見つかってしまいました。
■ 疑問点について
先回の報告の中で、二つの疑問点が湧いてきましたが、それは下記の2点です。
この件を検討するために、実験を追加して実施しました。
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■ 給電回路の抵抗を測定する
今回の実験装置を使って、電圧・電流測定部からの給電回路の抵抗を測定しました。簡単にはテスターで測定すればよいのですが、この回路には固定部と円盤の間には集電のためのスリップリングが構成されていますので、回転状態での抵抗を測定しておく必要があるのです。
このため、実験装置の線路の上に、室内灯などの工作に用いた燐青銅板の切れ端をセロテープで張り付けて、線路を短絡させました。右の写真。線路上の6ヶ所に貼り付けました。
そして、円盤を回転させながら、安定化電源を使って、その時の給電電圧と電流を測定時と同じ要領で実施しました。その結果を下のグラフにしまします。
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回路の電圧降下量を下左のグラフに、円盤の回転数を変えた時の電流値の変化具合を下中央のグラフに、この時の電圧降下量を下右のグラフ示します。
まず、円盤の回転数は影響しないことがはっきりと断定できます。一安心です。そして、回路の抵抗は、グラフの勾配より、0.73Ωと分かります。
回路に 200mA を流しても電圧降下量は 0.14volt なので、測定値には影響しないと判定できます。これも一安心ですね。
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■ 前照灯の消費電流を測定する
つぎに、車体に組み込んだ前照灯の消費電流を測定しました。持ち出した車両はEF58-150号機です。この車体を動力ユニットから外し、ユニットに差し込んでいた端子を線路にに貼り付けてました。この時、給電をONすると、右の写真に示すように、前照灯が点灯することを確認しています。
なお、この工作内容は、「Bトレ電気機関車の前照灯の工作」(2021/6/23)にて報告しています。この時に同時に工作していました。
測定は、上記と同様な方法で実施しました。
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電圧に対する電流値を下左のグラフに、円盤の回転数を変えた時の電流値の変化具合を下中央のグラフに、この時の電圧値を下右のグラフ示します。照明ユニットは、高輝度サイドビュー白色LED NSCW008AT 600mcd/20mAで、1KΩの電流制限抵抗を用いています。
電流は、チップLEDのVFは 3.6volt 程度なので、4volt近辺から立ち上げっています。そして、6voltでは2mA、8voltでは4mA程度消費していることが分かります。この値は、影響度合とピッタリ一致しますので、疑問点1については照明回路が影響していたことが分かります。
また、上記の結果と同様に、円盤の回転速度は影響しないこともはっきりしました。
■ チビロコセットの動力車を再測定する
以前、モアレスモータを使用した同じタイプの動力車を測定して事があるので、検証のために再度測定して見ることにしました。それは、「たのしい街のSL列車 ※動力ユニット改良品」(2020/8/26)です。その狙いは次の2点を考えています。
測定の様子を下の写真に示します。KATOのポケットライン、たのしい街のSL列車 チビロコセットの中の動力車である中央の客車を走らせました。
■ 測定結果と疑問点1の検証
測定結果を下に示します。グラフのスケールは、先回の「チビ凸用動力ユニット搭載車を測定」(2023/10/12)と同じにしていますので比較してみましょう。
先回測定した4台と比べると、車速・電圧特性は少し速めに推移していますし、電流。電圧特性を見ると 8mA 以下で最も小さい値を示しています。一番よくは知らせたので当たりがでてきたのかも知れません。
次に牽引力特性をみると、粘着限界は8グラム程度なので他の個体と同等です。しかし、ウォームギヤのかみ合い状態が変わる遷移点は2グラム程度で、この値も最も小さくなっています。
そして、一番注目した牽引力特性の電流値のグラフは、想定した通りのパターンとなっています。この個体には照明機器を搭載していませんので、モータ単体だけの特性を示しています、供給電圧が高くなっても電流の消費量は大きくか変化しません。
このことより、疑問点1については照明回路が影響していたことをはっきりと証明しています。、
■ 以前の実験装置との差異について
次に、実験装置の違いについて、「たのしい街のSL列車 ※動力ユニット改良品」(2020/8/26)とのデータと比較してみましょう。ただ、この時とのグラフのスケールが異なっていましたので、スケールを合わせて表示させました。
この時、実験を実施した2020年8月23日に使用した装置は、「新しい測定方法を検討する」(2015/12/19)、あるいは再編集版の「有線方式による測定装置の開発」(2019/5/7)で工作を始めた8字走行式の実験装置である。
まず、速度特性について見てみよう。左側のグラフが以前の装置でのデータで、右側のグラフが今回得られたデータである。
データから見ると、速度・電圧特性は同じ結果が得られていると言えるが、電流・電圧特性は以前の装置の方が優れている。これは、単機走行状態、即ち無負荷状態を再現させる方法の違いが表れていると判断している。今回の装置では、無負荷状態を設定する方法として、回転テーブルの回転と動力車の速度を牽引力がゼロ近くになるように微量調整しながら実施しているので、結果としてその時の消費電流値がばらついてしまうのである。コアレスモータ搭載車のような、消費電流の小さい動力車の場合、測定条件の調整が難しいのである。値としての数値は同じと言えるが、バラツキが大きくなってしまう事が欠点となっているのだ。
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次に、牽引力特性について見てみよう。パターンと値を比較すると、細かいところで違いはあるものの、ほぼ同じと言えそうです。データのバラツキ具合もプロット点の大きさで誤魔化していますが、ほぼ同じようです。
牽引力と車速の関係は、右上のグラフはモデルの特徴がはっきりと分かります。期待していたスリップ領域でのデータは、やはりバラツキが大きくなって少し期待外れですし、特に駆動領域ではやはり無理ですね。テーブルの回転機構を改善する必要があります。また、牽引力と電流の関係は綺麗に測定されています。制動力が8グラム以上では車輪が滑ってしまっている状態ですが、消費電流値は一定となっているのも、なんだかうなずけるデータとなっています。
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ひとつの実験例でしたが、以前との実験装置の差異は無い様だと判断します。そして、新たな機能としてスリップ領域での現象把握が不完全であるため、改善が必要です。
■ 新たな課題
さて、実験を進める中で、新たな課題を見つけてしまいました。それは、以下のような自問自答なのです。
まだ、考えが整理できていません。
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でも、今回制作した実験装置では、TOMIXやKATOのパワーユニットを使った実験も出来ますので、実際に測定を実施して比較検討すれば、このような疑問に対して答えが得られでしょうが・・・・・・・・・・実験は面倒だし、はたしてこの疑問(?)は解決すべき課題だろうか?
どうでも良いような気もするので、今後の気分次第という事にしてお茶を濁すことにします。
2023/10/18