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鉄道模型実験室 No.236  新しいテープ式室内灯 パルスを観察 その2

 パルス信号を使ってテープLEDのチラツキ状態を観察している。先回に引き続き、今回は電流値に注目してチラツキ状態を観察した。

 

■ 実験方法

 今回の実験目的が電流値の測定であるので回路を変更した。通常は回路中にシャント抵抗を挿入してその電圧降下を観察すのであるが、今回は電流制限部品の電圧降下を観察することにした。この部品の上流側と下流側にプローブを接続し、その差圧をオシロ上に表示させるようにした。

 CH1を上流側に、CH2を下流側に接続し、電源のGNDをオシロのGNDとした。このためテープLEDは一本のみにした。 実験の様子を下にしめす。

 電流制限部品として、510Ωの抵抗と18mAのCRDを使用した

 

■ チラツキパルスを観察する

 観察は、電流制限部品の上流側と下流側の電圧を観察しています。上流側をCH1(黄色)とし、下流側をCH2(青色)として電圧を計測した。そして、上流と下流の電圧差は、CH1とCH2の差を演算して表示させた。オシロ画面ではその演算結果を赤線で表示される。

 この赤線データをオシロ画面から読み取り、この値を使って電流値に換算した。抵抗の場合は抵抗値をもとに計算し、CRDの場合は、「新しいテープ式室内灯 チップコンデンサとCRDの特性調査」(2024/2/29)にて計測した特性グラフより電流値に換算した。

   ******************************************************

 最初は、チラツキの限界を探るためにパする幅を小さくして行きました。そして、そな時のパルス時間を確認するために、コンデンサ無しの状態にして測定しています。テスト1〜2です。パルス時間を少し長くしたが、チラツキの程度はあまり変わらなかった。

No 状態 オシロ画面 電流変化 備考
No.1

13.0 ms

100μF電解コンデンサ

510Ωの抵抗

わずかにチラツキ有り

17.9 mA

 ↓

14.6 mA

 

△3.3 mA

チラツキの限界をさぐる。

およそ15ms 程度が限界か?

No.2

13.0 ms

コンデンサなし

510Ωの抵抗

チラツキ有り

(X1X2= 13.0ms )

コンデンサ無しにしてパルス時間を確認する。
No.3

20.0 ms

100μF電解コンデンサ

510Ωの抵抗

わずかにチラツキ有り

17.9 mA

 ↓

12.5 mA

 

△5.4 mA

パルスOFF時間を変えても(13 ms → 20 ms)チラツキの程度はあまり変わらなかった。

 

 次に、パルス時間を 30ms に設定して、コンデンサと電流制限部品の組合せを変えて観察した。テスト4〜7である。

No 状態 オシロ画面 電流変化 備考
 30 msのパルス
No.4

30.0 ms

100μF電解コンデンサ

510Ωの抵抗

まあまあチラツく

17.9 mA

 ↓

10.5 mA

 

△7.4 mA

パルスOFF時間を30msに変えるとチラツキが気になるレベルとなった。

No.5

30.0 ms

94μFチップコンデンサ

510Ωの抵抗

バッチリとチラツく

17.9 mA

5.3mA

 

△12.6mA

電解コンデンサをチップコンデンサに変えると、チラツキはしっかりと見えるようになった。
No.6

30.0 ms

94μFチップコンデンサ

18mAのCRD

チラツキ有り

16 mA

8 mA

 

△8 mA

でも、抵抗をCRDに変えるとチラツキは少なくなった。
No.7

30.0 ms

100μF電解コンデンサ

18mAのCRD

殆どチラツキ無し

16 mA

15 mA

 

△1 mA

チップコンデンサを電解コンデンサに戻すと、チラツキは殆ど見えなくなった。

 

 さらに、チラツキ防止が認められる電解コンデンサを使用した場合について、パルス時間を延ばして抵抗とCRDの違いを観察した。

No 状態 オシロ画面 電流変化 備考
 40 msのパルス
No8

40.0 ms

100μF電解コンデンサ

18mAのCRD

わずかにチラツく

16 mA

14 mA

 

△2 mA

パルス幅を 40 msに広げると、わずかにチラツキが見られた
No.9

40.0 ms

100μF電解コンデンサ

510Ωの抵抗

チラツキ有り

17.9 mA

8.5 mA

 

△9.4 mA

さらに、CRDを抵抗を変えるとチラツキは多くなった。

 

 チップコンデンサよりも電解コンデンサの方が効果があることが分かる。そして、電流制限部品として、抵抗よりCRDの方が良いことが分かった。

 また、パルスの遮断時間幅と遮断時の電流の落込み量も概略確認できたのであるが、ここまで観察してきて、ハタと気が付いた。CRDを使用している場合には電圧降下具合を観察していても、電流の変化具合を見ることが出来ない灘という事である。 ・・・・・・・・・・ とろい!

 そこで回路を変更し、シャント抵抗を挿入して電流変化具合を観察することにした。

 

■ 電流の変化具合を観察する追加実験

 電流制限部品の下流に 51Ωの抵抗を挿入してシャント抵抗とした。抵抗値が小さいとノイズが乗って見にくくなったので、少し大きめの 51.0 Ωの抵抗を使用した。

 CH1を電流制限部品の上流に、CH2をその下流、 即ち、51.0Ωのシャント抵抗の上流に取り付け、オシロのGNDをシャント抵抗の下流に接続した。そしてコンデンサは電流制限部品の上流と、LEDの下流、即ち、電源のGND間に設置した。

 このためオシロ画面では、CH1(黄線)はコンデンサの電圧を示し、CH2(青線)はシャント抵抗の電圧降下量(即ち電流値)を示すことになる。新しい条件での実験には番号を新しく追加したが、上記と同じ状態の場合は A 付けの番号とした。また、電流値は最も落ち込んだ時のシャント抵抗の電圧(Y2)から電流値に換算した。

No 状態 オシロ画面 電流値 備考
 100μF電解コンデンサと18mAのCRDの組合せ
N0.10

20.0 ms

100μF電解コンデンサ

18mAのCRD

チラツキ無し

Y2 = 744 mv

= 14.6 mA

チラツキが認められなかった状態から始めた。
No.7A

30.0 ms

100μF電解コンデンサ

18mAのCRD

殆どチラツキ無し

Y2 = 668 mv

= 13.1 mA

パルス時間を長くしても、まだ、チラツキが感じられない。
No.8A

40.0 ms

100μF電解コンデンサ

18mAのCRD

わずかにチラツく

Y2 = 576 mv

= 11.3 mA

40ms になるとさすがにチラツキ始めた。
No.11

50.0 ms

100μF電解コンデンサ

18mAのCRD

チラツキ有り

Y2 = 488 mv

= 9.6 mA

もう、しっかりとチラツキが確認できる。
 94μFチップコンデンサと18mAのCRDの組合せ
No.12

10.0 ms

94μFチップコンデンサ

18mAのCRD

チラツキ無し

Y2 = 624 mv

= 12.2 mA

チラツキが認められなかった状態から始めた。
No.13

14.0 ms

94μFチップコンデンサ

18mAのCRD

わずかにチラツく

Y2 = 536 mv

= 10.6 mA

意外と早く、チラツキが認められる。
No.14

20.0 ms

94μFチップコンデンサ

18mAのCRD

チラツキ有り

Y2 = 444 mv

= 8.7 mA

チラツキあり。
No.6A

30.0 ms

94μFチップコンデンサ

18mAのCRD

バッチリとチラツく

Y2 = 296 mv

= 5.8 mA

チラツキあり。

 

■ 観察結果の考察

 いろいろな条件で波形を観察してきたが、だんだん迷路にはまりj込んでしまった。そこで、これらの観察により何が言えるのかを考えてみよう。

 まず、電流値が落ち込んだことにより、チラツキとして観察されたと仮定して、最も落ち込んだ時の電流をオシロ画面から読み出し、パルス時間ごとに整理してみた。 そしてこの時のチラツキの観察結果を、色分けしてみた。

組合せ 10ms 13/14ms 20ms 30ms 40ms 50ms
100μFの電解コンデンサと510Ωの抵抗   14.6mA 12.5mA 10.5mA 8.5mA  
100μFの電解コンデンサと18mAのCRD     14.6mA 13.1mA 11.3mA 9.6mA
94μFのチップコンデンサと510Ωの抵抗       5.3mA    
94μFのチップコンデンサと18mAのCRD 12.2mA 10.5mA 8.7mA 5.8mA    
 
色分け
認められない わずかにチラツク まあまあチラツク ぱっちりとチラツク  

 ここで、電流値がおよそ 10mA 以下まで落込むと、しっかりとチラツク事がわかる。しかし、そのチラツキのパルス幅の限界を探ろうとしても、あいまいとなってしまうのである。

 そしてオシロ波形を眺めていると、

  1. 落込んだ時の電流値なのか?
  2. ある電流値の閾値を超えた時の保持時間なのか?

との疑問が湧いてくる。即ち、電流値の推移波形が関係してくるように思えて来るのだ。 これは、視覚に対する人間工学? いや医学の分野?の問題の様な気がしてきたのだ。 ・・・・・・・・・・・・即ち、お手上げの領域なのである。 そこで、ネットで調べてみた。

   **************  ヴィキペディアより *******************
残像効果(ざんぞうこうか)は、主に人の視覚で光を見たとき、その光が消えた後も、それまで見ていた光や映像が残って見えるような現象のこと。
人の目の時間分解能は約50msから100ms程度であり、この時間よりも短い光の点滅は、連続点灯しているように知覚される。
テレビ放送や映画は、一連の静止画を高速に切り替え表示(映画では1秒間に24枚、NTSC方式のテレビ放送では1秒間に30枚)することによって動画の知覚を起こさせている。現行の方式では、一つの静止画から次の静止画への切り替えは上描きによっておこなわれる。ただし、それがまるで動いているように見えるのは、仮現運動とよばれる別の現象である。

 今までの自分の認識ではこのようであったので、約15msがチラツキの限界との観察結果と矛盾しているように考えていた。しかし、以下の様な情報を見つけて、納得したのである。

   **************  大塚商会 LED電球・LED照明のちらつき・フリッカーの原因 *******************
フリッカーとは、照明器具やディスプレイのような発光装置で発生する細かい“ちらつき”現象のことです。およそ50Hz(ヘルツ)以下の周波数(1秒間に50回以下の点滅)になると、人の目にフリッカー・ちらつきが認識できるようになり、40Hz程度になると点滅しているのがハッキリと確認できます。

  .

 50Hzという事は、パルス間隔では20msec、点滅時間をそれぞれ半分つすると、消灯時間は 10msec となる。 また、はっきりと認識できると言われている 40Hz の場合では、消灯時間は 12.5msec となる。

   なんと! 我が実験結果とピッタリではないか! ・・・・・

 もっと自信を持って実験を進めて行こう。

 

■ CRDの電流波形の考察

 別の観点から検討してみた。100μF電解コンデンサと18mAのCRDの組合せの場合の、No.7A、No.8A、No.11 の三つのオシロ波形を重ねてみた。その図を右に示す。

 この図の電流曲線に注目すると、13mAまで落込んでから、10ms後に 11mAになるとチラツキを認識出来るようにあり、20ms後になるとしっかりとチラツク様になることがわかる。

 上記のフリッカー現象の解説からも、理解できる現象であることに納得したのである。

 そして、定常時の 16mA から13mA 以上を保持できれば、チラツキとは認識されないぞ! とも言えそうである。

 これは、510Ωの抵抗を使った場合、約13mAを維持していたNo.3の場合の結果とも合致してくるのである。

    **********************************************

 ここで、テープLEDのチラツキ防止には、13mA 以上確保すれば良いと言う訳では無い。テープの特性や使用条件によって異なってくるので、その環境に合わせた対応が必要である。さらに実際に発生するチラツキの瞬断時間の発生頻度も問題となるのだ。

 今回は、ひとつの手掛かりを得たが、次の攻めどころは、まだ模索中である。

 

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 2024/3/12