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鉄道模型実験室 No.246  新しいテープ式室内灯 集電瞬断の解析3

 室内灯チラツキの原因である集電回路の遮断状況について、データの収集方法とその解析方法を模索していいる。今回は観測時間の差異について検討した。

 

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■ 気なるポイント

 先回の報告「集電瞬断の解析2」(2024/4/15)にて、オシロの観察設定を、測定の区切りとして円盤の1回転毎とすることに変更した。これによって線路の状態をもれなく観測できるだろうと考えているが、逆に失ってしまったものが無いだろうかと気になっていた。観測間隔が荒くなることによるデメリットは無いだろうか

 そこで、波形の推移を重視した観測間隔と、全体把握を優先した場合の比較を実施してみた。チラツキ発生の原因となる集電回路の瞬断現象は、線路の状態だけでなく、車軸と集電子との間や集電板などの接触部でも発生するので、この考えは的外れかも知れない。でも、気になる点は、ひとつづつ確認しておく事にしよう。

項目 50ms/div 250ms/div
Memory Length 4000 4000
Source CH2 CH2
Probe 1X 1X
Vertical Units V V
Vertical Scale 2.00E-01 2.00E-01
Horizontal Units s s
Horizontal Scale 5.00E-02 2.500E-01
Sampling Period 2.00E-04 1.00E-03
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 今回実施しようとする条件は、オシロの時間軸の設定を、円盤の1回転毎のデータが取り込める 250ms/div の場合と、波形がより細かく観測できる 50ms/div にて実施して、その結果を比較することにした。

 保存されたCSVデータのヘッダー分の一部を右に示す。 データの総数は 4000 個で両者とも同じである。また、縦軸の設定も同じであるが、時間軸の設定が異なっている。

 Sampling Period として 2.00E-04 即ち、0.2msec で実行している場合、0.2msec ×4000個、即ち 0.8秒間のデータを保存していることになる。一方 1.00E-03 即ち、1.0msec で実行している場合、1.0msec×4000個、即ち 4秒間のデータを保存している。 時間軸が5倍異なるのだ。

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 測定は、先回と同様にBTF-LIGHTING 社製の 5ボルト仕様のFCOB テープライト 10cm を使用し、電流制限抵抗は510Ωを使用、コンデンサは無しの回路状態とした。 このため、LEDのチラツキはバッチリと確認できる状態であった。

 

■ 両者の比較

 測定されたデータを元に、両者を比較してみよう。上段が 50ms の場合(A0032)で、下段が 250ms の場合(A0034)である。 左側の画像はオシロ画面のハードコピーを示す。黄線はCH1を示し、ブリッジダイオードの入口の電圧を示す。青線のCH2は、LEDを流れた電流を計測するシャント抵抗( 51.5Ω )の電圧降下量を示す。

 オシロ画面に表示されているデータは、画面の右端より前の 10div 、即ち、50ms×10 = 500ms と 2500ms である。しかし、時間軸の場合、データのサンプリング時間はさらに細かく実施されており、Sampling Period で設定されているタイミング観測された 4000 個のデータとして保存されている。 即ち、、0.2ms×4000 = 800ms と 4000ms であり、0.8秒間と4秒間のデータであることが判る。これはオシロ画面に表示されている波形より多くのデータが保存されていることを示す。

● オシロ画面より

 オシロ画面を左端に示す。この画面より、 チラツキ発生の原因となる集電回路の瞬断現象は、ヒゲ状の瞬間的な遮断であることが分かる。そして当然ながら、250ms の場合の方がヒゲの数は多いのだ。測定時間が長いので当然ですね。

● ヒゲの状態は?

 保存データをExcelに取り込み、グラフに表示させたのが中央のグラフです。但し、波形の形状を観察するため、ヒゲの多そうな部分の時間を拡大して示しています。さらに、CH1(電圧)とCH2(電流)のデータも同時に表示させている。形状を比較するために、高さがほぼ同じになるようなスケールに設定して表示しています。

 このグラフから判るように、CH1の電圧とCH2の電流について、その挙動、即ち波形の形がピタリト一致していることが分かります。そして、50ms の場合には、時々、谷の幅が広くなっているものが見受けられますが、殆どの谷がV字谷であることが分かります。

● 電圧と電流の関係は?

 電圧と電流の波形があまりにもぴたりと一致するので、その関係をグラフに示したのが右端のグラフです。上の方で固まってプロットされているのが通常の通電状態時を表していると思います。電圧と電流がバラバラに変化しています。

 しかし、傾斜部は回路の瞬断時の様子を示しており、これはオームの法則に従って比例関係にあるようです。一番底の水平部はLEDの特性で、一定電圧以上にならないと電流が流れないことを示しています。

 時々、特性線図から飛出しているプロット点が有りますが、その前後の状態を追ってみると異常ないので、ノイズか異常データでは無いかと判断しています。

 

■ データを解析してみる

 ここで、先回思いついた ”瞬断の頻度図” を使って比較してみることにした。まず、50ms の場合(A0032)と、 250ms の場合(A0034)の電流値(CH2)の元データをグラフに示す。

 

 このデータをPython を使って処理した結果を下に示す。

      

 グラフを見ると、測定時間の違いがハッキリと出ている。50ms の場合(A0032、左のグラフ)は谷の幅が 1ms 前後のものが多く集まっており、赤線の限界線を超えた点も一点のみであった。しかし、測定時間が5倍も長い250ms の場合(A0034、右のグラフ)、谷幅も広くなり、かつ限界線を超えている点も増加している。

 屁理屈で考えるのであれば、谷の幅が測定時間の長さによって広がるのは納得のいかない現象なのだ。しかし、サンプリング時間も5倍も長くなっているので測定精度の問題となっているのだ。これに、波形データの整理方法も絡んでくるので、何とも言えなくなってくるである。

 また、50ms の場合はターンテーブルの1/5の状態しか測定していないので、線路状態にムラを考えると比例するとはいえのいのだ。場所を狙ってそれぞれ測定を追加する必要が生じる。 一方、250ms の場合はターンテーブルの一周分をカバーしているので1回の測定でOKなのだ。

 もともと、あいまいな現象を目で見えるように表現しようとしているので、厳密なことは言わない事にしよう。そして、より現実的な測定・解析方法として250ms の場合を標準設定とすることにしよう。あくまでホビーなのだ。

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 と考えて報告書をまとめていたら、先回のデータとの違いに気が付いた。それを上右に追加する。測定条件は同じで、測定日だけが異なるのである。今回の測定では限界線近くや線外に飛び出したデータが増加しているのである。

 1回の測定だけでなく、何回もの測定データを重ねて、そのプロット点の数ではなく、広がり具合を判断すべきではないかと思うようになった。・・・・・・・・まだ結論は出していないが。

 

■ まとめ

 内容をまとめておこう。

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 次回は、上記の観点でいろいろな組合せの場合の様子を観察見てみよう。

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 2024/4/22