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鉄道模型工学  測定項目の追加 走行中のモータ回転数と端子電圧を測ろう.

 Nゲージ鉄道模型の動力車について、測定装置の開発によってその動力特性の一端を測定出来るようになった。 しかし、その動力特性の要素については測定項目が不足しているため把握できない項目がまだまだ多数存在している。 先回提示した特性ブロック図の内容は、ブラックボック状態なのである。

 そのブロック図を下に再提示する。 ここで、赤丸で示した変数は現在測定可能な変数である。 もし、青丸で示した二つの変数が測定出来れば、他の変数も計算等によって算出出来るようになり、各特性ブロックの入出力変数を全て求める事が出来るため、システムを構成する要素の定数が算出可能となるのである。

 例えば、動輪回転数はモータ回転数からギヤ比を使って計算出来るし、モータ電流は個別に求めた照明回路の定数を用いてモータ端子電圧から算出可能である。 そして動輪トルクは牽引力から動輪径を使って計算できるが、問題はモータトルクなのである。 しかし、モータ単品状態での電圧と電流、および回転数とトルクを測定して、モータを構成する定数をあらかじめ求めておけば、動力車に組み込まれた状態でも、モータ端子電圧と電流、およびモータ回転数よりモータトルクを算出可能とである。

 

 即ち、走行中の動力車のモータ端子電圧とモータ回転数の二つの変数が測定出来れば、各ブロックの変数が算出可能となり、それによって各要素の定数が推定できるようになるのである。 このことに注目して新たな測定装置を開発する。

 モータの端子電圧と回転数の計測は容易であるものの、測定対象が移動中であり、さらに外部から力の影響を排除した状態で測定出来る事が条件となるのである。 そして、走行条件の変化の影響を少しでも回避するため、移動サイドでの測定と固定サイドの測定項目とはほぼ同時に測定する必要もある。 このような場合には、無線通信を使う方法が一般的である。

      そうだ! 無線を使って走行中の車両からデータを飛ばそう!

 この様にして始めた新しい測定方法の開発ではあったが、およそ1年もかけて改善を進めたものの、未熟な技術力が故に最終的には 60 点の完成度であったと評価している。  その後、有線方式の測定方法に変更して 80 点レベルまで完成度を上げたものの、まだ未完の状態である。 今回の再編集にあたっては、成功した内容や失敗した内容など、その工作の要点をまとめることにして開発の足跡を整理することにした。

 しかし、この開発した測定装置でも、動輪のスリップ率や、集電回路の電圧降下の実態など、多くの知見を得る事が出来ことので、有意義であった自己評価している。

 

■ 無線を使った測定装置のアイディア

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 測定方法について、頭に描いたイメージを右に示す。 無線装置としては、Nゲージサイズの鉄道模型にも応用できる大きさであったXBeeの通信モジュールを使うことにしたが、注目したのがその大きさとアナログ値が通信出来る事である。 モジュールは、その幅が25mm程度であり、やや大きいもののNゲージに搭載可能である。

 測定対象の動力車と重り車両の間に、計測機器を搭載した測定車両を連結し、そこにXBeeモジュールを取り付けてデータを送信する。 動力車のモータ端子間の電圧は、端子部に差し込んだ電極をウレタン線で引っ張って処理回路に導き、その電圧(アナログ量)をXBeeモジュールのA/D変換を介してデータを送信すれば良さそうである。 モータ回転数は、反射式センサーでも可能であるがサイズが大きいので、モータの鉄心に反応する磁気センサー、即ちホールICを使用するとコンパクトになりそうである。

 

 XBeeの無線モジュールを下に示す。 送信側(下左の写真)は測定車に取り付け、受信側の親機(下右に写真)はArduino

 

■ 測定装置の概要

 なにしろ初めての事ばかりであったので、何度も壁にぶつかりながらもどうにか目的とするデータを測定することが出来た。 新しく追加したのは測定データを処理して信号を無線と赤外線を発信する測定車と、その無線を受取る無線通信用シールドと、赤外線の受光部となるサテライトユニットである。 この装置全体を下に示す。

 

 開発の中心は、測定車の構成であるが、無線通信のXBeeモジュールや データ処理を実施するArduino の制約により、

 測定車の構成は、幾度も改良を重ねてきた。 センサの小型化や回路の変更など、初期の状態からその改善の様子を下の写真にて紹介しよう。

 そして、多くの改善を実施してきた後の全体の回路構成を下に示す。

 また、測定時の様子を動画で紹介します。

 

 

■ 測定データについて

 新しく測定可能となった変数を使って、集電回路の電圧降下量、動輪のスリップ率、および摩擦係数をグラフ化した。 綺麗に測定出来た場合もあれば、?と思われるクシャクシャノの場合も多々遭遇した。 これは車両自信が不安定なのか、測定方法が悪いのか区別がつかなったが、比較的綺麗に取れた幾つかの例を下に紹介する。

 グラフの表示スケールがバラバラなので、相互の比較は一概に言えないが、想定していた傾向をグラウに表示することが出来たと判断している。

 例えば、スリップ率のグラフより駆動力を発揮している場合には僅かと言えども必ずスリップが発生していることが確認できた。 また、電圧降下量については、ピポット式軸受けの場合には想定外の傘型のパターンを示す傾向があり、構造的な特徴ではないかと推定しているのだ。

 また、これらの特性を把握することが出来るようになったので、時間経過による電圧降下の変化なども観察して、メンテナンス作業の参考にならないだろうかと追及するのも面白いテーマである。 また、動輪の摩擦係数に注目してトラクションタイヤの効果などを検証する事が可能となったと言える。

 

■ 課題

 しかし、文頭に述べたようにこの無線通信を使用した方法では、ノイズによる影響や測定の信頼性などの問題が散見されており、我が未熟な技術では多くの改善が必要と判断している。 特に、信号線が無いと言うことがこれ程大変であるがを思い知らせており、次なるアイディアを進める事にした。

 

************  動力車のモータ端子電圧と回転数の測定方法を模索 (2014/10/20)から             

新しい測定車を作る その2 (2015/9/25)までの多数の報告を要約して再編集 ********