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鉄道模型実験室  新しい測定車を作る その2

■ はじめに

 新しい測定車が出来あがったので、実際に測定を実施することにした。 測定対象の車両はKATO のC57-195 号機で、品番が2023のC574次形である。 最新モデルであり、性能データも上々の車両なので期待して測定を開始した。

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■ 速度特性の測定

 ここでは、単機平坦路で供給電圧を変化させて車速特性を測定する。 測定時の状態を下に示す。

 C57-195 号機は、エンジン部が49.3 グラム、テンダー部が15.7 グラムである。 取り外したボディ部は4.5 グラムであり、正規の状態の車両重量は67.2 グラムであったので、センサー等の重さは2.3 グラムとなる。 センサ単品で測定すると2.0 グラムであったので、ほぼ合致している。 しかし、コネクタ部の重量は測定車にも分担されるので正確には車輪に掛る重量を測る必要があり、厳密には動輪部に掛る重量だけを測定すべきであるが、これがなかなか難しので、重量に関しては、極めていい加減である。 とはいっても、牽引力を測定するのは、傾斜角と測定車や重り車両を含めた全体の重さなので、総量に関してはしっかりと測定している。

 また、新測定車の走行抵抗、即ち摩擦抵抗は傾斜法で測定しており、0.90グラムと計測された。 これは先回の測定車よりもかなり改善されている。 また、新測定車の重量は77.0 グラムであった。

 測定されたデータを下のグラフに示す。

 昨年の7月に測定したデータ ( マイコレクション > 蒸気機関車リスト > C57 195 )と比較すると、少し油が切れた状態と想定するとピッタリと合致する。 今回は無負荷といえども測定車を牽引している状態で測定しているので、測定車の摩擦抵抗分の負荷が掛っている状態になっている。 このため、速度低下が有ってもおかしくはないであろうが、その影響は少ないと考えている。 また、スリップ率のデータを見ながら動輪直径の数値を変更している。 以前のノギスでの測定値では、φ11.4mm であったが、このデータはφ11.5mm として計算している。 でも、速度による変化具合が今までのデータと様子が異なる点に注目しておきたい。

■ 牽引力特性の測定

 次に、重り車両を連結して牽引力特性を測定した。 重り車両は、重量が85.1 グラムで、摩擦抵抗が0.85 グラムの車両である。

 測定データを下に示す。 しかし、どうも様子がおかしいのである。 以前の測定データと比較してもパターンが異なっているし、値もかなり違っている。 制動側の踏ん張りが効か無いのである。 この様な現象は始めてであり、以前のデータと異なる事は、今回の測定法に原因があると睨んだ。

 走行状態の観察などより、その原因がセンサーの配線にあると判断した。 長過ぎた、底し固めの配線により、後ろからエンジン部に変な力を掛けていると推定した。 この力は、牽引側では後ろに引っ張り、制動側では前に押すような力が働き、エンジン部のピッチング・モーメントとして作用する。 これによってトラクションタイヤを履いた第3動輪の軸荷重が変化してものと推定する。 さらに、このモデルは、第1動輪がバネで支持されているので、ピッチング・モーメントを受けるのは軸間距離が短い第2動輪と第3動輪で受ける事になるので、その影響は大きいはずである。

 そこで、センサー線による力の影響を減らすため、下記の様に測定車を後ろに下げて、センサ線をフレキシブルに保持するようにした。

 この状態で測定データを下に示す。 特性パターンは以前の測定データに近ずいてきたがトラブル発生である。 トラクション・タイヤが度々脱落するのである。 上記の測定時も発生したが、今回はよりひどくなった。

 トラクション・タイヤが脱落している状態は、直ぐには気が付かないのでデータの動きや車体の動き、あるいは覗き込まないと分からないので、状態をしっかりと観察する必要がある。 脱落を発見するたびに車両を停車させて取り出し、タイヤをはめ直してはセットし直す作業が必要で、結構面倒なのである。 車輪は右側であったり、左側であったりしました。 そして、ついには測定を中止しました。 その時の状態を下左に示す。

 昨年の測定ではこの様な事はなかったのにと思いながら、タイヤを取り外してまいました。 蒸気機関車の場合、タイヤを取るにはクランクピンを外す必要がありますので右上の写真のように菓子箱の蓋の中で作業をすることにしています。 小さなピンは、補給品もめったに入手出来ませんのでなくしてしまっては大事なのです。

 トラクション・タイヤのリペア部品は入手済みですので、新しいタイヤに取り換えてみる事にしましたが、装着新と新品を比較して驚きました。 ASSY表で品番を確認しましたが、間違いありません。 装着品の外形は 11.0mm で新品の外形は 9.5mm でした。

 円形定規の数値は鉛筆の芯が 0.5mm を使用する場合に、表示すしている円が表示されています。 従って実際の内径は、0.5mm 大きいのです。

 タイヤの厚さは、装着品が、0.25〜3.0mm、新品が0.2〜0.25mm で装着品の方がやや厚いようでした。 このモデルは昨年発売された新品を購入したもので、それほど走行させていません。 ゴム部品ですから使用中にへたって来たのでしょうか?  そんなバカな!

 この様な事は、C62-36号機でもありましたね。 部品も同じ Z02-0503 です。 これは何かの間違いと思いますが如何でしょうか。 

 動輪の溝底径は、10.8mm でしたので、装着品をはめた場合には、 10.8−(11.0 - 0.25 or 0.3×2) = 0.3〜0.4mm ゴムを広げる必要があります。 これがゴムを保持する緊迫力になるのですが、この程度径では緊迫力を期待出来ないのではと考えます。 新品のタイヤでは、10.8−(9.5 - 0.20 or 0.25×2) = 1.7〜1.8mm もあるのです。 ゴムは柔らかいので、これでも容易にはめ込む事が出来ます。 そして緊迫力も充分そうなのでこれで行くことにしました。 タイヤをはめた状態の動輪の外径は、φ11.2mm でしたので変更前より0.2mm小さくなっていました。

 

■ トラクション・ゴム交換後の特性

 車両を再組み付け後、再び性能測定を実施しました。 速度特性を測定しようとした時にハタと気が付きました。 重り車両を中間に持ってきたため、外せないです。 仕方なくそのままで測定しましたが、無負荷状態と言っても、1.75グラムの負荷が掛った状態で測定することになってしまいました。 その分、速度が少し減少してしまうのも止むをえないのです。

 また、スリップ率のデータについて、動輪直径をφ11.1mm に修正しており、特性は何時もの様なパターンを示しています。

 つぎに牽引力特性を測定してみました。 最初に測定した6.0ボルトでの特性を見て、昨年のデータと似ていると安心していたのですが、次に測定した8.0ボルトでの特性では、スリップ限界が 15 グラム強に落ちてきましたので実験を一時中断して車両を観察してみました。 特に異常は認められなかったので、続けて4.0ボルトで測定を再開した。 傾向は8.0ボルトと同じ様であったので、もう一度8.0ボルトでの測定を追加した。 この時の特性グラフを下に示す。

   

 昨年測定した時のデータのように、綺麗に揃ったデータが再現出来なかった上に、駆動側の牽引力が大きく落ち込んでしまっていた。 最初に測定した6.0ボルト時のデータはスリップ率の値を見ても様子が変である。 原因としてトラクション・タイヤが均一に装着されていなかったので、負荷が掛った時に座りなおしたのではないかと考えており、もう一度測定し直しておけば良かったと反省している。 負荷をかけての馴らし運転が必要だったようである。 それにしても、なぜ牽引力が落ちてしまったのか不明である。

 

■ まとめ

 新しい測定車は、機能している事が確認出来た。 しかし、蒸気機関車は非常にデリケートであるため、もっと注意して測定する必要があると感じた。

  1. 測定のためのリード線は、もっとフレキシブルにして置く必要があり、今回使用した外径が0.8mmの7芯の細い電線でも不十分である。 このため、0.2mm のポリウレタン線を使ってみることにしよう。
  2. トラクションタイヤを取り換えた時は、充分な馴らし運転をしておこう。
  3. モータ端子電圧の校正は未実施であるので、正確を期すために実施しておく必要がある。

 電気機関車の場合は、前後の動輪のスパンが長いのでピッチング運動には有利である。 蒸気機関車の場合、サスペンション機構は斬新なアイディアであるが、出来ればこのピッチング対策を考慮して欲しいものである。 第1動輪と第3動輪でしっかりと車体を支え、サスペンション機構は第2動輪だけで充分ではないでしょうか。 今回の測定も、“おじぎ機関車” の特徴が影響したように感じました。