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モータ特性の測定とモデル化 モータのモデル化と摩擦損失の検証

 我が実験室では無謀にも鉄道模型の動力車のモデル化に挑戦しています。 いつの間にか、模型のコレクションや走らせて楽しむ事以上に、特性を測定したり、解析したりすることに夢中となってしまいました。 知的興味を楽しんでいると共に、なにしろお金が掛からないので、お財布にとっては有難い事です。 最近では念願であったモータ単体の特性が測定出来るようになったので、手当たり次第に実施しているのが現状です。

 そして、その測定データを使って、トルク定数とか逆起電力定数などを推定し、モデル毎の特徴を見出そうと工夫しています。 その方法は、モータの外部から測定出来る特性を使用し、モータの機能を発揮している各定数を推定する方法を行っています。 モータの研究をする訳では無いので、原理的な厳密性を追求するものではありませんが、モータに供給された電圧と電流値および回転数から、モータの出力トルクを計算出来れば良いと言う立場です。

 モータのモデル化については、既に、第1章の「動力特性の異本式 電気系」で実施しています。 ここでは、それを再掲載すると共に、モータ軸損失についての式の検証をしてみたいと思います。

 

■ モータの関係式

 モータの関係式を再掲載する。

 ここでは、モータなどの慣性を考えていない静特性を考えている。 また、モータのトルクについては、モータの内部回転抵抗を考慮するため、電磁気的に回転子に発生したトルクをモータトルク Tm とし、モータの出力軸から取り出せれるトルクを 出力トルク Tm' と呼ぶことにする。 これはモータ軸周りの損失トルクを考慮したのである。

 

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 基本特性として、モータトルクを Tm 、コイル電流を I 、トルク定数を Kt とすると、
    (11)
で示される。 即ち、モータのトルクはコイル電流に比例し、直接的には外部電圧には依存しないのである。

 次に、逆起電力を e 、回転数を Nm 、逆起電力定数を Ke とすると、
     (12)
となる。 トルク定数 Kt と逆起電力定数 Ke は、同じ性質の係数で、Si単位で表示すると同じ値になるとのこと。
 また、外部電圧を E 、巻線抵抗を Ra 、ブラシ接触部の電圧降下を Eb とすると、
     (13)

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 ここで、モータの内部回転抵抗、即ちモータ軸損失を速度比例項と一定項で表わすとすると

    (18)

で表現でき、その値は、モータトルクと出力トルクの差として現れる。

 式(11)、(12)、(13)は、学術的に認められた理論に基づいている有名な式であるが、式(18)は小生の考えが入った仮説の式なのである。 本当ですかと言われれば返事のしようもありません。 そこで、今までの測定データから、この仮説を納得してもらうしかありません。

 

■ モータ軸損失について

 今までのデータの中から、モータ軸損失を示すグラフを作成しました。 このモータ軸損失の値は直接測定出来ないため、電流値 I とトルク Tm’に加え、推定した定数 Kt をもとに計算した値、 Kt ・ I ー Tm’ をグラフ化しました。

 いくつかの代表的なモータについて下に示します。 横軸を回転数 Nm にしたものと、出力トルク Tm’にした二つのグラフを表示しました。

 C56-148 と C59-123 のモータはコアレスモーターで、他のモータの摩擦トルクよりも一桁小さい事が分かります。 そして、回転数と出力トルクに対する摩擦トルクの影響は、回転数に対して比例していることも読み取れます。 一方の出力トルクは一定値の傾向を示しています。 しかし、回転数と出力トルクに対して両方にも関与している様にも見えますので、分析方法を工夫すれば解明できるかもしれません。

 でも、ここでは学術研究をしている訳ではありません。 摩擦トルクの状態を簡単な式で表現したいだけなのです。 出来たら1次直線で近似したい、との考えで仮定した式が上記の(18)式なのです。 左側のグラフにおいて、即ち、横軸が回転数のグラフで直線近似式を求めれば、勾配がλm を、Y 切片が Rm を示していることになり、簡単にこれらの定数を推定できることになるのです。

 ただ、コアレスモータの場合は、すこし飛び出すデータが増えるようですが、それはこの仮定の限界として納得しておけば良いだけです。

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     【 結論 】  式(18)の仮定は、おおむね正しい。

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