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鉄道模型工学概論 

§2.4 定置実験装置の製作

 いろいろ試行錯誤を続けてきたが、なんとか有効なデータを得られ装置になってきたので紹介する。

 基本構成として、

  1. レールは鉄道模型で使われているレールを使用し、円形のエンドレスとする。
  2. レールを固定する円盤をモータで回転駆動させ、牽引力と共に制動力も連続して測定出来るようにする。
  3. 牽引力計は一定の負荷を掛ることが出来る 「やじろべい方式」 とする。

の構想をもとに、製作を進めた。

 また、本装置は、模型車両の性能の良しあしや合格・不合格を判定するための「試験」をするつもりは無いので、あえて、「実験装置」と呼ぶことにする。

 まずはじめに、装置全体を下の写真に示す。 また、斜め前から見た写真を右下に示す。 畳半畳程度の大きさで、ほとんどが手作りである。 中心部に円盤を置き、手前には操作機器と計測装置を配置している。

  装置のベースは、772×912×49 mm の木製で、ベニヤ板と角材で製作した。 回転させる円盤は、厚さ 3.5mm のベニヤ板を円形に切り抜き、その上に KATO 製のユニトラック曲線線路R348-45°を8本連結して円形レールを構成させた。 レールの半径は 348mm であり、連結部分は通電性を確保するため半田付けしている。 円盤の回転中心部は、M12のナットつき金属片をねじで固定し、軸受の代用としている。

 レールへの通電は、レールの右と左の線を180°反対側から取り出し、中央部裏側に設けた集電シューに結線している。 この結線を利用し、供給電圧測定用の端子も引き出している。

 この円盤の支持方法を、下の写真に示す。 左の写真は、円盤を取り去った状態である。ベースの中心に中央の写真に示すごとく、M10 のボルトを立てている。 他のレイアウトを作成した時に残っていた木片を組み合わせながら(廃物利用!)、木ねじと接着剤を使用してしっかりと固定している。 特にベースとの固定は、木ねじを使って裏から固定している。 そして、円盤からの集電シューに接触する円形の導電部を2段構造で工作し、電源ユニットに接続できるよう配線ている。 また、円盤を支えるコロとして、右の写真に示すようなコロをハの字形に4ヶ所設け、円盤が水平に回転するよう支えている。 

 次に、円盤の駆動部を説明する。  何度も失敗して、やっと使えるようになった。 左の写真に示すように、減速機付きモータ、円盤を駆動するゴムタイヤ、速度を計測するセンサー部、その表示回路部、およびモータを駆動する制御回路を配置している。 四角い黒い板は厚さ 5mm のゴムの板で、防音用の制振材のつもりである。 モータの音はベースのベニヤ板に共鳴し、意外と大きな音となり、少しでも静かに実験が出来るように配慮した。

 モータは、タミヤギヤードモータ 3633K75 で減速比 75 である。 その出力軸にタミヤ製の外形 54mm のタイヤとホイールを取り付けた。  拡大部を下の左の写真に示す。 このホイールの外側に、タミヤ製のプーリーセットを取り付け、ゴム輪でセンサー用プーりを駆動するようにした。 センサー用プーりには、Φ5の穴を2個所あけ、ネオジウム磁石Φ5×1.5 をそれぞれ埋め込んである。 そして磁気検知センサーを取り付け、デジタル回転計に取りこんでいる。 下の右の写真の回転計は、飯塚氏の工作室売店(ネット通販)よりキットで購入し組む付けた。

 モータドライバについては、タミヤの強力なモータを駆動出来る様に、 平均 3A の電流でも制御出来るワンダーキットのDCモータコントローラ2キットを入手し(ネット通販)、回転計と一緒に手作りの制御ボックスに組み込んだ。

 右の写真は円盤の裏側と集電シューの拡大写真を示す。 円盤の直径は740mmで、ゴムタイヤの跡が付いている。中心部の集電シューはリン青銅板から手作りしたものである。

 次に、試験車両の設置状態を説明する。 下の写真は線路上にKATOのD51をセットした状態である。 機関車の後方のカプラーには、カトーカプラーN を括りつけたロッドを連結させている。 カプラー上面をプラ板で覆っているため、ロッドが脱落することは無い。 ロッドの反対側は、鍵形状になっており、牽引力計と連結出来るようになっている。

 なお、機関車の手前には、三角形状の異様なベニヤ板が立っているが、これは測定時に機関車の位置を観察する定置位置の目印としている。

 次に、四苦八苦した牽引力計を説明する。 詳細は工作室の方で説明するが、基本構成は重り付きの「やじろべい」であり、重りの位置を左右に移動させてロッドに掛る荷重を変化させるものである。

 機関車のカプラーと連結したロッドを「やじろべい」を構成する 1mm のプラ板で作ったレバーAの先端のピンと連結する。 作用点のアーム長さは 150mm である。 また、レバーAは 2mm の真鍮棒を中心軸として揺動出来るようになっており、その上部に長さ 150mm の M3 のねじ棒(タミヤ製楽しい工作シリーズNo.171 3mmネジシャフトセット)が固定されている。

 移動する重りとして、減速機付きモータを 1mm のプラ板に接着し、レバーAの表面を左右にスライドさせる構造とした。そして、減速機の出力回転部にナットをはめ込み、M3 のねじ棒が貫通するように構成し、ナットの回転によって、減速機本体が左右に移動するようにした。 減速機付きモータは、タミヤの3速クランクギヤーボックスセット(楽しい工作シリーズNo.93)を改造したもので、単2乾電池2個で駆動し、正逆転とストップ付きの簡単なレバーがついた乾電池ボックスを使用している。

 この移動重りは、左右に約55mm移動させることが出来、その移動量を目盛りで読み取ることが出来る。 減速機付きモータは、重さは 33gr であったが、この重量では不足するので、あり合わせの鉄片と鉛片を括りつけて 40gr の追加用重りとして、 牽引力の測定範囲を拡大させることが出来た。

 この「やじろべい」式の負荷装置では、レバーが小さな範囲で揺動しても、先端に掛る荷重はほとんど一定である。 このため、模型の機関車や円盤のやや不安定な動きがあっても、一定の負荷をかけることが出来る。

 次に揺動レバーの構造を説明する。 レバーAの内側にはもう一つのレバーBを同軸状に設け、レバーAと同様に揺動出来るように設定している。 このレバーBはL字型の形状をしており、その右端には重り代わりのボルトとナットが取り付けれ、さらにコンパクトな荷重計に当接させている。 その作用点の距離は 150mm である。 またレバーBのL字型の下端には、3mm のピンを立て、レバーAに設けた溝穴を通して、レバーAとレバーBの間の揺動角度を規制している。 そのストッパ部にはスポンジをはり付けて当接時の衝撃を緩和させる。 揺動角度の規制値は、およそプラスマイナス8°である。 また、その下方にはレバーAとレバーBを固定連結する2mmのピン穴を設け、必要に応じてレバーAとレバーBを一体回転するようにセットできる。 重り代わりのボルトとナットは荷重計のゼロ点を移動させるものであり、セット状態でゼロ点を設定すれば、レバーBに掛る力をプラスマイナスで表示してくれる。 また、レバーの中心部は安定的な揺動を確保するため、両持支持の構造を持たせているが、このため複雑で不細工な形状となっている。 機能優先の工作である。 

 模型車両を走行させる電源ユニットは、KATO 製でも TOMIX 製でも使用できるように配線されている。 写真ではTOMIX の TCSパワーユニット N-1001-CL を使用している。 その出力部を電圧・電流測定装置に配線させ、円盤中心軸に設けた導電部へと接続している。 模型車両の走行方向は、電圧・電流測定装置の出力部に設けた正逆転スイッチで操作する。 円盤の駆動操作は、モータドライバを組み込んだ制御ボックスのON/OFFスイッチ、前進・逆転ボタン、および速度調整ボリュームで実施しする。

 次に使用している測定機器とその校正を説明する。 ⇒ 次ページへ