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鉄道模型工学概論 

§2.5 定置実験装置の計測機器

■ はじめに

 使用している計測機器について説明する。 この装置はあくまでホビーでの範疇であるため、費用とサイズを勘案し、そこそこの精度で良しとしているが、出来たら信頼性を高めるように工夫することにしている。

 とは言っても、簡易でやや不安定な装置で測定しているため、 このサイトで記載されている内容について、

測定されたデータの値について、
その精度や信頼性はなんら保障されているものではない。

 小さな鉄道模型における性能については、個々の製品毎のバラつきは大きいし、使い込まれた経緯やメンテナンスの状態は千差万別である。 チョットした組付け具合や調整によって、その走行性能や集電性能が大きく変わってくることは、鉄道模型の愛好家であれば、おおいに経験されていることと思われる。 また、測定方法についても、まだまだ問題を含んでおり、果たしてその測定データは信用できるのかといった疑問も含んだままである。

 このため、データとしての疑問な点があった場合には、 測定した模型車両側の問題かもしれないし、測定装置や測定方法の問題かも知れない。 今後のデータの積み重ねと、第3者による同様な実験実績によって、確立されて行くものと考えている。

 

 

1)ストップウオッチ

 速度を測定する場合に欠かせないのはストップウオッチである。 MAOW Sports Timer を使用している。

2)電圧計

 KAISE のデジタルマルチメータ Model KU-1188 を使用している。レンジは20.00 volt を使用する。 電圧は配線途中の電圧降下を少しでも避けるため、線路により近い場所に設置している。 計測ユニットに組み込んでいるもう一つの電圧計(DEREE 15V DC)は、電源電圧の大まかな設定用として使用している。

3)電流計

 回路に流れる電流はどこで測っても同じであるとの認識のもとに、電源ユニットの出力側に接続した計測ユニット部で計測している。 電流計は DER E E の 300mA DC と 2A DC を使用、CLASS2.5 の精度のものである。 300mA と 2A を切り替えて使用するが、殆どは 300mA で間に合っている。

 

4) 速度計の校正

 速度計の校正は、円盤をモータで駆動させながら、円盤上のしるしをもとに、1回転または半回転する時間をストップウォッチで計測する一方、その時の回転計の指示値をを読み取る。 そして、測定された時間を Excel で計算してスケールスピードを求め、その時の指示値との対応をグラフにし、係数を求めて校正値とした。 円盤の回転調整は、制御ボックスの速度調整ボリュームで実施している。 速度計の表示は10 〜 20 程度はふらついており、有効桁数は2ケタ程度と考えている。 また、低速側は円盤の回転が不安定になると共に、表示も計測限界となっている。 最大スピードは円盤の駆動モータの限界となり、本定置実験装置での計測車速範囲は、およそ 20Km/h 〜 140Km/h である。

 スケールスピードの計算は、スケールスピード V (Km/h) 、測定距離 L (mm) 、通過時間 t (sec) 、とし、Nゲージの縮尺サイズは 1/150 、 秒を時間に、 mm を Km に換算すると、

      V = L × 150 × 60 × 60 /( t × 1000 × 1000 )

    すなわち、    V = 0.54 × L / t    〔Km/h〕

で計算している。 

 この結果を下のグラフに示す。  指示値とスケール速度の関係は、直線的であり、かつ、バラつきも少ないと見ることが出来るため、 充分に速度計測として使用出来ると判断する。

 

5)牽引力計の校正

 牽引力計のレバーBをフリーの状態にし、荷重計に当接させてゼロ点を再設定する。 ちなみに、ゼロ点を再設定する前は 61.8gr を表示していた。 この荷重計は、エー・アンド・デイ社製のコンパクトスケール HJ-150 で、測定範囲は 0.2g 〜 150g まて± 0.1g の精度で測定できる。 次に、レバーAとレバーBを固定連結するピン穴に固定ピンを差し込み、 レバーAとレバーBを一体回転するようにセットする。 そして、減速機付きモータを回転させ、レバーAの表面を左右にスライドさせる。 このときの停止位置を上部の目盛りで読み、重りの停止位置とする。 そして、その時の荷重計の指示値も読み取る。 重りが右側にあるときは荷重計の指示値はマイナスで表示されるので、目盛りもマイナスとし読み取る。 レバーAのロッドの作用点と、レバーBの荷重計の作用点は同じ 150mm に設計しているため、荷重計の荷重がそのまま、牽引力として換算されることになる。

 この重りの停止位置目盛りと荷重計の指示値の測定結果をグラフに示す。 40gr の追加用重りを付けた場合も校正を実施した。 測定結果は直線性やバラつきなど、充分満足するものであり、牽引力と制動力との連続性も問題ないと判断する。 このグラフより求めた直線の近似式を牽引力の校正値として使用する。

 なお、簡易な計測装置であるため、これらの校正はたびたび実施する必要があり、装置の改良時期や、時間の経過とともに、なんどか実施している。