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鉄道模型工学概論 

§2.6 定置実験装置の測定方法

 次に、この定置実験装置を使用して、鉄道模型車両の動力特性を測定する手順を説明する。 この装置の特徴として、線路を形成する円盤をモータで駆動していることである。 このために、測定がやや面倒とはなるが、 §2.3 定置試験装置の検討で述べた様に、、「測定X」と「測定Y」の二つの方法で測定出来る。 そして、駆動状態と制動状態を連続して測定出来ることも、特徴の一つと言えよう。

 

 

1)前準備

 まず、定置実験装置の各部を点検し、異常の無いことを確認する。 そして、レールクリーナー等を使用してレールをきれいに掃除する。 また、測定する鉄道車両も点検し、車輪をクリーニングする。

2)測定の準備

 計測機器類をセットし、異常が無いか確認する。 車両をレールに乗せて試運転を実施する。 暖機運転として、5〜10Volt程度で約2分間、走行させる。 このとき、円盤駆動モータの試運転のために、円盤も適当に回転させる。 作動の異常が無いか確認する。

3)無負荷での測定

 平坦路・単機走行時の状態を測定するために、牽引力計を使用せず、動力車をフリーの状態で走行させる。

  1. 円盤を最低回転状態にセットする。 止めておいても良いが自分の実験装置はスロースタートが出来ないので回転させたままにしている。
  2. 電圧をゼロからスタートして少しずつ上げていく。 そのたびに、電圧、電流、を読んで記録していく。
  3. 車両が走り出したら、装置のベースと車両の相対速度がゼロになるように電圧を調整する。 このときの電圧、電流、回転数を記録する。
  4. 円盤の回転数を上げ、同様に電圧を調整して、電圧、電流、回転数を記録していく。
  5. ゼロースタート ⇒ 加速 ⇒ 最高速度(円盤の最高回転) ⇒ 減速 ⇒ 停止
  6. 電圧と円盤の回転方向を逆にして、バック運転にて測定する。 省略も可。
  7. 記録したデータをパソコンで整理してグラフにする。 Excelを使用する。

 この結果、図11の「車速・電圧特性図」と図12の「電流・電圧特性図」が得られる。 なお、車両が動き出すまでは、モータは、いわゆる“電熱器”となっているので、手早く測定を実施しよう。

 

4)負荷状態での測定

 車両の後部のカプラーにロッドのカプラーをつなげ、牽引力計を連結させた状態で運転させる。 ここでは、コントローラの電圧を一定に保ち、負荷を変化させた時の速度の変化を読み取っていく。 電圧の設定値は任意でも良いが、その設定の仕方を決めておく方が良い。 ここでは、制動側のデータもある程度欲しいので、装置の最高回転数を勘案し、上記の実験で得られたデータより、 単機走行時に、時速80Km/h 近辺となる電圧を 0.5volt 単位で設定することにした。

  1. 牽引力計の負荷をゼロ点近くに設定しておく。 カプラーはまだ連結させない。
  2. 車両を走らせ、電圧を設定値のセットする。
  3. 円盤を回転させ、車両を正面に来るように調整する。
  4. カプラーを連結する。
  5. 電圧が設定値がどうか確認する。 設定値の±0.05volt 以内になるように調整する。
  6. 牽引力計の傾きがほぼ水平になるように円盤の速度を調整する。 レバーAとレバーBの揺動角度を規制するストッパーに当たってない範囲ならOKとする。 この状態では、速度と牽引力がバランスしている点となる。 即ち「測定X」の方法で計測する。
  7. 電圧をチェックしてOKなら、電流、回転数、牽引力計の目盛りを読み記録する。
  8. 重りの位置を移動させて、同様の作業を繰り返す。
  9. 重りの位置が、0点 ⇒ 左へ(牽引側) ⇒ 0点 ⇒ 右へ(制動側) ⇒ 0点 と移動させて測定を終了する。
  10. スリップ状態の場合には、円盤の回転数を設定したのち、牽引力計の傾きがほぼ水平になるように、重りを左右に移動させ、速度と牽引力をバランスさせる。 即ち「測定Y」の方法で計測する。
  11. 記録したデータをパソコンで整理してグラフにする。 Excelを使用する。

 

5)測定における注意点

 測定値は振れやバラつきが大きく、かつ、不安定な状態が多い。 なにしろ素人による手作りの実験装置であるため安定性に乏しいことと、車両の特性からくる不安定さもあり、データが読み取れない場合もある。 このようなときは、ホビーと割り切って、エイヤーと読み取るしかない。 特性の傾向が掴めれば良しとしている。

 測定中に車両の動きに注意をすること、少しでもおかしい様であったら、測定を中止すること。 特にゴム輪のはずれには注意をしよう。