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鉄道模型調査室   TOMIX製信号機を調べる その2

■ いきさつ

 TOMIX製信号機調査の第2弾として、信号機の信号線とLEDの点灯関係、およびベースからの出力具合を調べることにした。 さらに、そのものズバリの特許を見つけることが出来たので、この技術の内容を充分に理解するkとが出来た。

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■ 信号線とLEDの点灯具合の調査

 まず、どこに電気を流すと、どの信号が点灯するか調べてみることにした。 この調査は先々回の「通電表示灯(?)を作る」で調査したが、未調査であった信号についても追加して、まとめることにした。

 常識的に考えると、3灯のLEDをそれぞれ点灯させるには、電源のVs か、グランドのGND のどちらかを共通線(コモン)とし、LEDの片方の端子にそれぞれ接続する共に、もう一方の端子には、点灯させるための信号線を接続する。 即ち、LEDの数+コモン線 の数だけ信号線を必要とすると考えるのが一般的である。 このため、3灯式の信号機では4本の信号線が有るのは当然と考えるが、4灯式の信号機では、4本の信号線しか無いのである。

    あれー?  コモン線が無い!

と言うことは、4本の線の組合せで4個のLEDを点灯させていることになる。 どうやって?

 また、先回の報告で示したように、3種類の信号機の頭部の配線具合はそれぞれ異なっています。 このため、同じ信号を与えたとしても、それぞれの信号機によって点灯するLEDは異なってくると思われます。

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 この疑問に対しては、信号線の組合せを調べる必要があると考えた。 その調査方法は、いつも使っている手作りのLED点灯テスターを使ってチェックした。 電子部品の足の切れ端を使い、信号機の底のソケット穴に差し込み、そこに 15mA の電流を流して点灯状態を観察したのである。 そして、プラスとマイナスの電極方向も確認するのだ。 ここでは、一定の電流を流す方法で実施しているので、その時の電圧差は見ていないのである。

 この手作りのLED点灯テスターは単3乾電池を2本使い、15mA の CRD を直列につないで電流制限を掛けた簡単なものである。

 この道具は、電流制限を掛けているので安心してLEDに接触させ、点灯具合や電極の方向を確認しており、LED工作時には重宝している。

 調査方法は、ソケットの穴の位置を右のような番号を振ってき、二つの穴に電極を差し込んで、どのLEDが点灯するのかを観察した。 プラス電極とマイナス電極の組合せをリーグ戦のようにマトリックスを作って置き、その時に点灯するLEDをメモして行った。

 

■ 調査結果

 調査結果を下のテーブル方式にて示す。

 二つの信号線にプラスとマイナス極を接続すると、同時に点灯するようなLEDは無かった。 単独のLEDが点灯するか、あるいはどれも点灯しないかの場合だkであった。  NO の部分はどのLEDも点灯しなかった場合を示しています。 また、同時に3線以上に通電するとどうなるかはチェックしていません。

 また、先回の報告で示したように、3種類の信号機の頭部の配線具合はそれぞれ異なっています。 この違いによって、点灯するLEDも違ってきています。 その様子は色分けしているので、一目瞭然です。

3灯式
5564

プラス電極

4灯式
5561

プラス電極

4灯式
5562

プラス電極

マイナス

電極

- NO NO 赤点灯

マイナス

電極

- NO NO 赤点灯

マイナス

電極

- NO 橙2点灯 赤点灯
NO - NO 橙点灯 NO - NO 橙1点灯 NO - NO 橙1点灯
NO NO - 緑点灯 NO NO - 緑点灯 NO NO - 緑点灯
NO NO NO - 橙2点灯 NO NO - NO NO NO -

 3灯式信号機は、4番線をプラス・コモン線として、1番、2番、3番線をそれぞれマイナスにすると、赤、橙、緑のLEDが点灯します。 他の組合せでは、点灯するLEDはありません。 赤、橙、緑のLEDが点灯させる関係は、他の4灯式信号機でも同じである事が分かります。

 そして、4灯式信号機では、1番をプラスにし4番をマイナスにした場合や、3番をプラスにし1番をマイナスにした場合には第2の橙LEDが点灯します。 そこで、2灯が同時に点灯する状態に注目してみましょう。

の順で点灯していくのであるが、4灯式の点灯具合を見ると、単純な頭では理解出来ないのである。 単に順番にどれかの線にON/OFF信号を流している様子ではなさそうであるし、まして、ベースから出力される信号は同じはずなので、3種類の信号機を点灯させるロジックが掴めないのである。

 特に、5561の4灯式信号機の場合、橙2と緑を同時点灯させるためには、1番線と4番線をプラス/マイナスの関係にして、さらに4番線とと3番線をプラス/マイナスの関係にしなければならないのである。 4番線は、プラス側とマイナス側を同時に発生させる必要がある・・・・・・・・・・。 そうだ、中間電圧になっているのだ!

 LEDの電圧さは2ボルト程度あれば良い物もあるので、5バルト電圧のシステムでは、これが出来るのではないか!

 こうなると、ベースから出力信号の状態を見なければ、手掛かりは掴めないと判断して、ベースの出力状態を見てみることにする。

 

■ ベースの出力信号を調べる

 まず最初に、信号をチェックするための道具を工夫する必要がある。 信号を取り出す部分は、ベースの小さな穴の中に狭く並んだ4本のピンから信号を取り出さなくてはならないのである。 このピンのピッチ間隔は通常の2.54mm ピッチの半分なのである。 下左の写真。 そこで思いついたのが、分解してしまった信号機の残り部品であるソケット部分を利用することにした。 下右の写真の黄丸で囲んだ部品。

 この部品を導線に接続するために、補強を兼ねてユニバーサル基板の切れ端にハンダ付けすることにした。

 小さな部品の細い導線なので、たっぷりとハンダ付けしている (ハンダ付けがへたくそだけではないのか? (´;ω;`)  そして、ジャンパーコードを継ぎ足してセンシング道具とした。 下右の写真。

 ジャンパーコードを使用した目的は、この端子を Arduino のアナログ端子に接続して、シーケンス時の電圧推移を観察しようと目論んだからである。

 まず手始めに、どれくらいの電圧が出力されているか、テスターで出力電圧の様子を観察することにした。  Arduino のアナログ入力端子は、直接には、0〜5ボルトの範囲しか測定出来ないからである。

 実際の線路に取り付けて、電圧を測定してみた。 電圧測定の基準点は、TCS配線の反対側に出ている端子を使い、白線側をGNDとした。 ついでに茶線側の電圧を測ってみると、12.2Volt であった。

 各線の出力電圧をみていると、0〜4.99 Volt の範囲であり、1.41、 2.51 、2.93 、3.88 、4.99 などの色々なレベルの電圧が観察された。 また、電源投入入後、そのままにしておいても、時間が経つと電圧が低下する現象が見られた。 これは、初期設定状態なのか、モード設定の為なのかは分かりませんが、電源ONから10秒以上開けてから運転してくださいとの説明と合っているいるようです。

 また、電圧測定中に本当に信号機が点灯するのか、同時に確認する方が望ましいと判断して、信号機も同時に接続できるように工夫しまいた。 先回の報告のようにリン青銅線を使用しても良いのですが、分解した部品の中に基板からはがしたソケットが残っていることに気が付き、そのソケットを活用することにしました。 下の写真。

 この部品を前記で工作したソケットに接続し、ベースの出力電圧検出道具とします。

 この道具を Arduino のアナログ入力端子に接続し、電圧制御のシーケンスを観察するべく、 Arduino 用スケッチの記述を考え出しました。 この時、ふと気が付いたのですが、これほどのシステムについて、トミックさんは特許を出願しているのではないかと・・・・・・・・・・。

 

■ トミックさんの特許出願

 早速、特許検索サイトから、「 鉄道模型 信号機 」のキーワード検索を実施しました。  有りましたね! さすがです。

 特開2005-237508 と 特開2005-304825 2件がまず目に入りました。 前者はセンサの検出間隔によって点灯パターンの切替える時間を変化させるという内容でしたが、後者の特許は、ずばり今回の信号機の制御内容でした。

 特開2005-304825の内容
出願日: 2004年4月22日、公開日: 2,005年11月4日、登録日:2009年12月11日、登録番号: 特許 第4421366号

です。 出願当初は8個の請求項が有りましたが、登録時には3個に絞られていました。 自分は、この様な信号機を製造・販売する気は毛頭ないので、その請求内容には関心が有りません。 この発明の目的や技術的内容を知りたいだけなので、要点だけ紹介しましょう。 詳しく知りたい方は、この公報は公開されていますので詳細をご覧ください。

 この発明の目的として、2灯式から6灯式までを含めた各種のタイプの信号機について、低価格で製品化することであるとのことです。

 そして、複数の種類の中から選択される信号機本体と、信号灯の一連の点灯パターンを順次切り替える制御装置において、制御信号は、信号機本体の種類に依存しない共通の制御信号である。 また、信号灯の一連の点灯パターンは、信号機本体の種類毎に変えることによって、信号機本体の種類毎に個別に設定されている。

とのこてである。

      これはまさに、自分が推定していたとおりである !

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 この公報を読んでいると、構成や作動が詳しく説明されている。 それは特許公報でもあるので、当然とはいえば当然である。 そして、既に特許として確立(登録)されているだ。

 一番関心したのは、中間電圧と踏んでいた件は見事に外れであった。 中間電圧の代わりに、プラスマイナスの電圧を交互に掛けていたのである。 早く変化させれば目に見えないので、両方とも点灯しているように見えるとの事。

     うまい! グッドアイディアだ!

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 それでは、特許公報から無断で説明図を拝借して、一部加工したものを紹介しよう。 まず、信号機の種類であるが、驚いたことに最初から右の図のように5種類の信号機を企画していたのだ。

 次に、これらの信号機の配線図を下にしめすが、この図より信号パターンによってさらに分類されていたのだ。 3灯式以外は、それぞれ2種類ずつ用意されており、合計9種類の信号パターンを用意した信号機を企画している。 さらに、自分が諦めていた信号機の基板頭部の配線具合も読み取れるのである。

 そして、脚の部分は、たったの4本で処理しているのである。  4番ピンのPl4 ラインはコモン線のようである。 そして信号線を公報では、Pl1、Pl2、Pl3、Pl4 と呼んでおり、その点灯具合を表にしているのが、下左の表である。 縦の欄のフェーズは、表示パターンのフェーズを示しており、どのようなタイミングでどのフェーズの表示をさせるかをコントロールしているのである。 ちなみにフェース1は、4番ピンにプラス信号を、1番ピンにマイナス信号とすれば、赤色LEDが点灯するので、赤信号を点灯させるフェースである事が分かる。 プラスマイナスで示された部分は、交互に極性を変化させているこの発明の肝となる部分である。

 このフェースに沿って、5灯式の信号機を例にして点灯具合を上右の図にて説明していた。 プラスマイナス付加の状態が理解できると思います。 そうして、最後には各種タイプの信号機の点灯シーケンスを示した下の様な図表が説明されていた。

 なお、公報の図に、理解し易い様にと色付けなどの追加加工しています。

 ◆ 理解出来た事を整理します。

  1. 信号機のベースの部分は1種類しか設定していない。 これによって、プログラム開発や基板制作などの手間などが合理化できたので、コストを低く抑える事が出来ているそうです。
  2. 信号機は、色々の種類があるが、どのベースに取り付けても、取り付けたその信号機に設定されたパターンで点灯していきます。
  3. 二つのLEDを」同時に点灯させるには、共通する電極の極性を交互に素早く変化させて点灯させている。

■ まとめ

 この特許公報を見つけたことにより、今までの疑問がいっぺんに解決しました。 この様なステム製品に強いトミックさんの、秘められた 技術力の一端を垣間見た気がします。 それにしても、折角、出力電圧測定用の道具を作ったのですが、無駄になったようです・・・・・・。

 いやいや、本当にその通りだろうか、アナログ的に測定した電圧がいろいろなレベルであったのはなぜか? など、まだ確認すべきことがあるようですよ。

 

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  2018/2/7