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鉄道模型実験室   KATO D51シリーズのトラブル

 

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■ いきさつ

 蒸機の性能測定もいよいよ終盤になって来たので張り切っていたが、思わぬ伏兵に出くわしてしまった。 今回はささやかながらも、色々な不具合が噴出したので、忘備録としてここにまとめて記録に残しておこう。

■ ノートパソコンのダウン

 自動測定システムに使用していたノートパソコンがダウンしてしまった。 最初は、立ち上り時、エラーが出ましたと云って、自動的にチェックが入っていたが、ついにはWindowsが立ち上らなくなってしまった。 そして、何度か再起動を実施するも、最後はスイッチを入れてもカチカチと云っているだけになってしまった。 ハード故障と判断して、このパソコンの使用を放棄した。

 そして、当初使用していたように、常用しているデスクトップパソコンを使用することにした。 しかし、このパソコンはネットにも接続し、ホームページ作成やメールなどに使用しているのである。 このため、自動測定システムがEXCELのマクロを使用しているため、ウイルスに注意して使用することにしよう。

 その対策としてネット接続を切断して使用していたら、パソコンが勝手にネット接続を実施しようとしてエラーを表示する。 ウイルスソフトやcannonのアプリなどが裏側で実行している様である。 この時、Arduino と Excel の通信がエラーを起こすようで、マクロ実行中のEXCELはフリーズ(応答なし)してしまい、折角の測定データがパーになってしまうのである。

 そこで、特に必要のないアプリはせっせと削除するも、ウイルスソフトなどは停止出来ないので、EXCELを少し改良した。

 この対策は万全では無いが、一回ごとの動作が確認できるので、安心して測定を実施することが出来る。

 

■ D51-125号機の性能測定

 まず、KATO のD51標準形(品番:2006-1)であるD51-125号機の性能測定から始めることにした。  測定実施日: 2013/8/24。  何時ものように速度特性から実施したが、様子がおかしいのである。 測定実施日: 2013/8/24  

 

 電流値が 300mA を超えてしまい、測定限界に達していた。 Nゲージの動力車では、単機平坦路走行において多くても 200mA 以下と思っているが、この状態は異常と判断し、原因調査のためと、模型の破損を恐れて測定を中止した。 

 

■ D51-36号機の性能測定

 次に、同じシリーズのD51 なめくじ(品番:2009)であるD51-36号機の性能測定を実施する。  測定実施日: 2013/8/24。  

 

 走行状態は見た目には異常は無かったが、速度のバラツキはこんなものかと納得していたものも、電流には疑問があった。 この車両の電流値は100mA程度なので正常と判断するも、やけにバラツクなと思いつつ、次の牽引力測定を実施した。

 

 この牽引力特性を測定中に、データの異常に気が付いた。 上のグラフを参照。 見た目には速度変化が無いのに、異常データがたびたび発生しているのである。 観察を続けると、TOMIX の29608号機と同じ現象が発生していた。 モータのノイズで車速測定ユニットが誤動作していたのである。 そこで、やはり測定を中断することにした。

 もうひとつ気になる点は、牽引力ゼロの場合の速度が、上記の速度特性のデータと異なっているのである。 そこで、もう一度、速度特性を測定して見ることにした。

 

 再測定のデータが上のグラフである。 電圧 5.0Volt で 70Km/h 、 6.0Volt で 100Km/h と牽引力特性のデータとピッタリと合っているが、前記の速度特性とは少しズレている。 そして、電流値が大幅にアップしている!   なんで?

 上左の速度-電圧特性グラフの異常点は、モータノイズと見ている。 しかし、電流値が大幅にアップしている現象を理解出来ないまま、とりあえずノイズ対策をして、再度チャレンジすることにする。

 

 モータのノイズ対策としてコンデンサを追加することにした。 TOMIX の9600形蒸気機関車の場合と同じ現象なので参照下さい。 コンデンサは9600形の場合と同様に、KATO のチビ凸用動力ユニット(品番:11-103)に使用されていたもの( F 104.Z と表示されているので、 0.1μF らしい)を使用し、ボイラ部の後端で左右のフレームにセロテープで貼り付けることにした。 その状態を右の写真に示す。

 この状態で再度測定を実施することにしたが、 トラブル続きでカッカとした頭を冷やすことと、 測定システムの正常性を確認するため、C62シリーズを先に測定することにした。

    その結果は別途報告のとおりで、測定システムは正常であることに一安心した次第である。

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 気を取り直して再測定した結果を下に示す。 測定実施日: 2013/8/29。

 

 

 約5分程度の暖機運転の後、速度測定したデータを「初回」で示し、下に示す牽引力特性を測定した後で再度測定したデータを「2回目」として示す。

 

 まず、ノイズと思われるデータ異常は見られなかったので、その対策は有効であったと考えている。 次に、牽引力特性では、10グラム以下の低負荷状態では、駆動側と制動側の両方共データのバラツキが大きくなっていること、また、制動側のパターンが2段折れ状態になっているのも不思議である。 そして、最後に測定した7.0volt 時では電流のバラツキが大きく、無負荷時の値も大きいので、これまた再度、速度特性を測定することにした。 その結果は上記の通りである。

 2回目の測定(牽引力測定後)では、電流値が 50mA 以上も跳ね上がっている。 何故、増加しているのだろうか? モータの発熱が大きいのだろうか?

 そこで、モータの発熱による影響を見るため、一日置いてモータを充分に室温レベルまで下げた状態から暖機運転を実施してみることにした。

 走行条件は、電圧設定、7.0volt、傾斜勾配 sinθ= 0.0654、重り車両 126.5グラム、走行抵抗1.3グラムであり、この結果、駆動側の牽引力は 16.7グラム、制動側は -14.1グラムの負荷が掛っている事になる。 また、測定は、120個のデータを取り込んで終了する(「その1」のデータ)。 その後、5分間停車させ、Excel データの初期設定を更新し、そのまま測定を再開させたのが「その2」である。 従って、その1とその2は、負荷条件は全く一緒で、中間に5分間の停車時間を挟んで連続していると見ることが出来る。

    測定実施日: 2013/8/30。

 モータは室温まで充分に冷えていた状態で走行を開始した。 最初の3分を経過すると電流値などは落ち着いた状態で推移していたが、7分過ぎから電流値が徐々に上昇を始めた。 そして 200〜220mA 近辺をウロウロしている状態であった。 この値とバラツキ具合は、牽引力特性データとも合致している。

 やはり、モータの発熱の影響と見る事が出来そうであるが、それにしても時間が掛っている様である。 要注意車両である。

 

■ D51-125号機の性能測定

 つぎに、最初に問題を起した D51-125 号機について調べてみることにする。  試しに空走時 ( 車両を手で持ち上げている状態 ) のモータ電流は、4.0volt で250mA もあった。 そして、分解しながら動輪などの動きをチェックするも、異常は見当らなかった。 最後にモータ単品での空運転をしてみると、4.0volt で210mA もあった。 やはりモータが異常のようである。 通常、単品では 50〜100mA 程度であるからである。

 今までの経験で、ブラシが折損しているのではと考えて、ブラシ部分を取り出すも異常は無かった。 ただし片方のブラシが短くなっていたので、ジャンク品のモータからブラシを頂いて取り換えることにした。 また、整流子部分も黒く汚れていたので、綿棒とユニクリーナで掃除した。 組付け後、モータ単品状態では、4.0volt で50mA 程度であったため、治ったと喜んでしまったが・・・・・・・・・・。

 再組付けした状態で、D51-36号機で実施した暖機運転を行うことにした。 走行条件は、電圧設定、7.0volt、傾斜勾配 sinθ= 0.0654、重り車両 126.5グラム、走行抵抗1.3グラムであり、この結果、駆動側の牽引力は 16.7グラム、制動側は -14.1グラムの負荷が掛っている事になる。 また、測定は、120個のデータを取り込んで終了する(「その1」のデータ)。 その後、5分間停車させ、Excel データの初期設定を更新し、そのまま測定を再開させたのが「その2」である。 従って、その1とその2は、負荷条件は全く一緒で、中間に5分間の停車時間を挟んで連続していると見ることが出来る。 測定実施日: 2013/8/30。

 測定結果は上のグラフの通りである。 見ての如く、最初は順調に推移していたかのようであるが、3分を過ぎてから電流値が急激に上昇し始めた。 そして、5分すぎてからは緩やかになったものの、じわじわと上昇を続け、5分間の停止後は、これまた急激に上昇を始めた。 そして、この自動測定システムの電流測定限界である300mA を超えてしまった。 その後は、定電圧電源の電流表示を見ながら観察すると、その2での10分後では360mA と 460mA となり、12分後では 390mA と475mA までも達していた。 テスト終了後に車体各部の温度を放射温度計で測定した。 モータ端部で65℃、動輪下で39℃、ボイラ表面で34℃、テンダー車では27℃、室温はクーラーが効いているので27℃であった。 モーター焼損の一歩手前かと胸を撫で下ろした次第である。

 この状態では、他の特性を測定するのはとても危険と判断して中止すると共に、この車両をジャンク品として取り扱うことにする。

 

■ D51-125号機のモータ単体の特性

 ここで諦めないのが鉄道模型工学を目指すオタクである。 車両が冷えた頃を見計らって、モーターを取り出し、モータ単体での電流値を測定することにした。 電源とテスターを使って、下の写真のように、モータの空運転での電圧と電流を測定した。

 その結果をグラフにまとめたのが上のグラフである。 停止は指でウォームを押さえてモータの回転を止めた状態である。 停止1と停止2は、途中で持ち替えたので、軸の回転位置が異なった様である。 回転数を測定していないので厳密な事は言えないが、確かに回転していたのに、電流値が停止状態と同じ傾斜で直線的に増加している。 逆起電力が働いていないのかな? コイルがどこかでショートしている? 手で回しても滑らかに回っている。 右上に測定後のモータの写真を示すが、焼けたような跡は見当たらない。 何処が悪いのですかと聞いてみたが、涼しい顔をして鎮座しています!・・・・・・・・・・・・。

 モータの専門家なら、原因は想定されるでしょうが、素人には良く解りません。 とにかくジャンク品として保管し、機会があれば分解してみようと思っている。

 

■ まとめ

 今回測定しようとした D51-125号機とD51-36号機は、2007年4月と2007年6月に何時もの模型店で新品として購入したものである。 同梱されていた取説の印刷年も同じく2007年であったので、同時期の再生産品と判断している。 そして、無理な走行はした覚えは無いと思っている。

 その2台共が、この様なトラブルを起こしていると言うことは、なにか原因を内包しているのではないかと勘繰りたくなる・・・・・・・・・。 先日ブラーボーKATOと叫んでいたのに・・・・・・・・・・。

 この2台は、分解調査後、物置部屋のレイアウトにて重連させ、2軸貨車20台近くを牽引させて楽しんでいた。 その間は何のトラブルも無かったが、電流値が異常に高くなっていたのだろうか。 大事にしていた車両なのに、レッドカードとイエローカード付き車両となってしまった。

 分解調査が悪かったのだろうかと反省もするが、モータ自身はいじっていないのである。 後味の悪い性能測定となってしまった。