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鉄道模型実験室 No.102  走行試験の実施

■ はじめに

 まだ、問題があるものの、測定装置側の準備が出来たので、実際に動力車を走らせて測定を実施し、問題点を洗い出すことにした。

 

■ EF510-510号機の測定

 以前に測定実績のあるモデルとして、EF510-510号機を選び、速度特性と牽引力特性を測定した。 このモデルは2015年3月15日に測定している。「EF510 500番台 カシオペア色」を参照。 まず速度特性を下に示す。

 まず、今回追加したグラフについて説明しておこう。

  1. 電圧差のグラフは、電圧測定点の変更による電圧計測量の差異を示す。 以前の測定点は、今回の測定点よりも上流にあるのであるが、この差は今回の工作によって生じたものと言える。 影響度合いは小さいものの、よりレール面に近い電圧を測定していると認識する。
  2. モータパルス数は、測定ゲートを通過中のモータパルスの数を示す。 動輪のスリップ状態が一定であれば、車速度が変化してもいて一定値であるはずであるが、それよりもパルス数が多いということは、車輪が滑っているか、あるいはパルスを余分にカウントするミスを犯している事になる。
  3. 一回当たりの測定回数は、ゲートインからゲートアウトの時間 tt を測定ループを何回廻したの回数 n で割ったもので、4ヶ所の電圧アナログ値と一ヶ所の電流アナログ値を測定する時間を計算したものである。 縦軸は測定されたデータ情報より番号を付与したもので、右旋回時のゲート1での測定を 1 、左旋回時のゲート1での測定を 1.5、右旋回時のゲート2での測定を 2 、左旋回時のゲート2での測定を 2.5、 と付与して tt/n の時間を表示したものである。

 まず、先回の測定データとほとんど同じであったので、まずは一安心である。

 しかし、スリップ率のデータには疑問が残っているし、今回修正した測定ゲートについて、ゲート1とゲート2では、違いがみられる点に注目している。 電圧降下とスリップ率、およびパルス数のカウントに於いては、ゲート1とゲート2では明らかに差が認められる。

 その原因を探るために一回当たりの測定回数を調べた結果、侵入方向での差はないものの、ゲート1とゲート2では、およそ 0.007msec の時間差が認められた。 しかしこの時間差が生じる理由が不明なのである。 先の報告でスケッチの内容を示しているが、出口スリットのタイミングをチェックしているピン番号の違いだけなのである。       while (slit2 == HIGH) {  ・・・・・・・・・・  slit2 = digitalRead(SLIT2_PIN);  }

  SLIT1_PIN や SLIT2_PIN に対して SLIT3_PIN や SLIT4_PIN は時間が余分に掛る?  としか考えられない。 そして、その結果としてスリップ率の値が異なってきているのである・・・・・・・・・・・・嘘だ! この屁理屈は成り立たないと考えるべきであろう。  疑問は未解決である。

 次に牽引力特性を見てみよう。

 こちらのデータは特に異常は見当たらない。 データのバラツキがやや大きいのは測定方法に由来するのか、あるいはモデルの不安定さなのか不明なので、さらに他のモデルも測定してみることにした。

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■ EF210-109号機の測定

 今度は、電圧降下量が安定しているTOMIX のEF210-109号機を使って測定してみることにした。 測定時のセンサの取り付け状態を、右と下に示す。

 最初に速度特性を示す。

 今回の測定では、スリップ率のデータが安定して来ているようである。 低速と高速ではパルス数が増えているの気がかりである。 次に牽引力特性を示す。

 正確なスリップ率を知りたい場合は摩擦係数を求めるためなので、高速領域での測定不良は許されるということにし、低速での測定精度をもう少し上げたいものである。

 

■ まとめ

 今回の走行実験により、今までと同様に使用可能であることが分かった。 即ち、無線通信や赤外線通信を使用しなくても、走行する動力モデルからデータを取り込むことが出来るようになった。 しかし、それによって今までよりも信頼性の高いデータが得られると期待していたが、少しあてが外れたようである。 よりよい改善をと思って実施した工作は、際立った成果を上げることが出来なかったと判断している。

 ここで、実用性の確認が出来たので、今回のプロジェクトは取りあえず完了と言うことにする。 そして、このプロジェクトによるメリットとデメリットを整理しておこう。

 と言う事で、今回のプロジェクトは、改善なのか、改悪なのかの判定は今後の活動具合で判断することにしよう。