HOME >> 鉄道模型実験室 > 回転数検出部のプリアンプ回路について
■ はじめに
どうしても、回転数検出部のプリアンプ回路が気になっているので、再検討を実施した。 最初にフォトリフレクタ素子の特性を調査し、それに対応する回路を検討した。
■ フォトリフレクタ素子の特性を調査
最初にGENIXTEK製の小型フォトリフレクタの特性を調査した。 品番はTPR-105F の赤外線LEDとフォトトランジスタの組み合わせである。
そのカタログより転記した仕様の一部を右に示す。 LED側に 220Ωの抵抗を介して5ボルト電源に繋ぐと、約 17mA のIF電流が流れるので、出力電流は、1.7mA 程度流れることになる。
また、センシングポイントとの関係もグラフ化されていた。 最初からこれらの仕様をしっかりと頭に入れておけばよかったのであるが、チラリと見ただけだったのである。
● プルダウン抵抗と出力電圧の関係
プルダウン抵抗を取り換えて、その時の出力電圧を測定してみた。 先回の「パルス波形の観察」の測定のように、抵抗Aの値をいろいろ変化させてロ点の出力波形を観察した。 ただし、トランジスタやBとC の抵抗は接続していない状態にしている。 車両はEF210-109号機を使用した。
A = 3.3K | A = 5.1K | A = 10K | A = 15.1K | A = 20K |
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この波形よりパルス波形の下の電圧と上の電圧を読み取りグラフ化したものを右に示す。 出力電圧は、プルダウン抵抗値と見事に比例していることが分かる。 このことは、プルダウン抵抗値にかかわらず一定の電流が流れていると判断出来る。 グラフの勾配が電流値を示しているすると、LOW状態では 0.11mA 、HIGH 状態では 0.3mA が流れている事になる。
この値を、カタログのグラフと比較するとかなり小さいことが分かる。 原因は、距離が離れているためと判断した。 そこで、センサと反射マークの距離をグーンと近づけてみた。 と言ってもEF210-109号機のセンサ取り付け部はフレームを削って窓を開けたので、限界ではあったが、2mm 程度までは近づけれた様子であった。
最接近させた場合 |
遠ざけた場合 |
横に傾けた場合 |
その時の波形を左に示す。 パルス波形は充分に振れており、このままダイレクトにArduino に入力できるレベルと思われる。 プルダウン抵抗は5.1KΩを使用したので、ピークの電圧値より、約 0.7mA の電流が流れていたものと判断される。 カタログ仕様からも想定できる範囲になっている。
結論: センサーはぎりぎりまで近付けろ!・・・・・・だってさ。
■ プリアンプ回路の検討
センサ単体の様子が分かって来たが、反射面にギリギリまで近付ける事が出来ない場合もあるであろう。 このような不充分な波形からでもセンシング出来るようにするため、適切なプリアンプ回路はないものかと調べてみた。 トランジスタ回路はすでに諦めているので、他の方法を探った。 バッファとかインバータとか、あるいはシュミットトリガーなどの言葉が並ぶロジック・ゲートを使うと、立派なプリアンプになるのではと考えるが、多くの場合が14本や16本足の複数回路入りのIC ばかりである。
● NAND素子を使用してみる
以前にチップ形のNAND 素子を使用したことを思い出して、この部品を使用してみた。 チップ部品をブレッドボードでも使えるように、基板に取り付けた。
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このNAND 素子は、「新しい測定車を作る その1」で使用したものの残り品で、東芝製の TC7S00F でCMOS の2 INPUT NAND GATE である。 CMOS のデジタル回路であるので、ある閾値を境にしてON/OFF 作動をすであろうと想定したのである。
そこで、この素子をブレッドボード上に設置し、右のような測定回路を構成した。 車両は EF210-109号機を使用して、イ点(オシロには下側)とロ点(オシロには上側)の波形を観察した。
その結果を下に示す。 この素子はCMOS であるので、閾値は電源電圧の半分とのことである。 ヒステリシスなどを考えると、上の電圧は3ボルト以上、下の電圧は2ボルト以下となる波形が必要であると考えられる。 右の回路のA部の抵抗を変えて、ロの電圧を変化させている。
A = 10K B = 5.1K |
A = 15.1K B = 5.1K |
A = 20K B = 5.1K |
A = 27K B = 5.1K |
出力がHIGH のままで NG |
合格だ! |
合格だ! |
出力のHIGH レベルが不足で NG |
A部の抵抗が10KΩの場合には、上の電圧が 3ボルトに届かないため、入力はLOWと判断し、NAND であるので出力はHIGH のままである。
15K〜20KΩでは、HIGHとLOWを認識して、矩形波を出力している。
27KΩになると、下の電圧が充分に下がらないので、出力の矩形波が歪んでいる。
このNANDは、プリアンプとして使用出来そうである。
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● オペアンプのコンパレータ回路
あるサイトで、オペアンプを使用している例を見つけた。 参照電圧を調整すると閾値も変更出来るとのことで、コンパレータ回路の説明資料を参考にして実験してみた。 参照電圧を調整できるようにした回路を右に示す。 オペアンプはフェアチャイルド製のLM358N である。 既にモータ端子電圧の差圧を測定する回路に1チャネル分を使用しているが、もう1チャネルが空いているので、それを利用することが出来る。
今回は、ブレッドボード上に回路を形成して実験を行った。 また、上記の実験より少し時間が経過してるので、車両は EF15-79号機に変更されている。 さらの、先回の経験より、センサーをターゲットに近づけてセットしたので、センサーの感度は向上している。
まず、オペアンプを接続しない状態で、プルダウン抵抗Aの値を変えながらロ点の電圧波形を観察した。
プルダウン抵抗 A = 1.8KΩ |
プルダウン抵抗 A = 3.3KΩ |
プルダウン抵抗 A = 10KΩ |
センサーをターゲットに近づけたので、高低両方とも充分な電圧を示している。 この波形であればプリアンプは必要ないのであるが、ここは実験なので、半固定抵抗の値を変えながら出力波形をイ点で観察した。 さらに参照電圧のハ点の電圧 E をテスタで読み取っている。
A = 1.8K E = 0.7 volt | A = 1.8K E = 1.5 volt | A = 10K E = 0.34 volt | A = 10K E = 2.01volt |
実験状態を上に示す。 車両は次に性能測定を予定している車両で、シャシーを支持する部分が無かったので横にゴロンと寝かせている。 また、車体部分の重量を修正するために重りを追加している。 今回の実験は、この車両に取り付けtセンサの機能チェックも兼ねているのである。
実験結果を左に示す。 出力としてのパルス波形は綺麗な矩形波を出力しており、プリアンプとしては充分に合格である。 最高電圧が3.7ボルトなのは、オペアンプの特性によるものと判断する。
さて、プルダウン抵抗が 1.8KΩの小さな波形の場合、参照電圧が1.5ボルトでは限界となっており、これ以上の電圧に設定すると、すべてHIGHレベルを出力する。下側は、0.1ボルト程度まで正常に反応していた。
また、10KΩの場合は、参照電圧を0.34ボルト以下にすると、すべてHIGH 入力と判断して LOWレベルを出力している。 参照電圧をそれ以上に設定して置くと、入力波形が多少崩れていたとしても、綺麗な矩形波パルスを出力している。
このように、オペアンプをコンパレータとして利用すると、綺麗なパルス波形に整形出来ることが理解できた。
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● 再びトランジスタ回路を検討する
我がサイトを見てくださっているユーザーの方から貴重なアドバイスを頂いた。 それは、目から鱗の状態であり、さっそく実験を実施した。
アドバイスは 「 トランジスタをエミッタフォロアで使用すると、ゲインは1倍です。 コレクタから出力を取れば改善されると思います。」との内容でした。 そうなんだ、トランジスタ回路でもプルダウン方式をなんとなく使っていたので、気にも留めていなかったが、ベースからエミッタに電流が流れるとコレクタ電流と合わさってエミッタ出口の電圧は上がってしまう。 そして電流の上流であるベース側も当然ながら電圧は上がってしまうと言う事に気が付き、今までの現象を理解する事が出来た。 アドバイスを頂いたMJ さんに感謝、感謝である。 そしてエミッタフォロアなる用語も始めて教わった。 お恥ずかしい限りである・・・・・!
A = 10KΩ B = 10K Ω |
A = 3.3KΩ B = 10K Ω |
A = 1.8KΩ B = 10K Ω |
A = 1.0KΩ B = 10K Ω |
さっそくブレッドボードに右上に示した回路を構成して実験を行った。 何のことは無い、抵抗の位置を変えただけである。
その結果を左に示す。
結果は、今までのどれよりもハッキリしており、僅か1ボルト以下の小さな入力波形でも充分に対応している。 そして、出力パルスも、0ボルトから5ボルトと目一杯に振れており、大満足である。
抵抗の設置位置を変えるだけで、これほど劇的に変化するとは、まさに目から鱗 とはこのことなのだと感激している。
そして、トランジスタの増幅回路とは、このような効果を得ることが出来るだと実感するのである・・・!
A =5.1KΩ B = 5.1K Ω |
プルダウン回路の場合 |
さて、最初の画面のパルス波形には、HIGH側に何だか気になるノイズが出ていたので、少し抵抗値をいじってみた。
AおよびBの抵抗を半分に落としてみると、右に示す様にくっきりとした波形が得られたので、この仕様にすることを簡単に決めてしまった。 さらに、同じ抵抗値を使って従来のプルダウン方式にした場合も蛇足として観察した。 ひとつの抵抗の位置が異なるだけでこれだけ様子が異なるのだ。
今回は、奥の深いトランジスタの勉強をさせて頂きました。
MJ さん本当にありがとうございました。
● 結論
いろいろ苦労したプリアンプ回路ですが、もっとも簡単な方法で、最良の効果を得る方策を見つけることが出来ました。 トランジスタ周りの回路を少し修正して、対応する事にします。