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鉄道模型実験室  ポイント駆動ユニットの電圧波形

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■ はじめに

 先回の報告で、苦労して作成したモータドライバICを使った回路では、二つのポイントを同時に駆動することが出来なかった。 ひとつのポイントに一つのドライバICを使うか、リレーを使ってコンデンサ方式の駆動回路にするかの選択が有ったが、迷わずコンデンサ方式を選び、部品をネットで注文した。 そして部品が届くまでに、作成した駆動ユニットの動作状態を観察することにした。

 今回は、その駆動ユニットの電圧状態を簡易オシロで観察したので報告する。 さらにTOMIXのポイントコントロールでの状態も調査した。

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■ モータドライバIC方式のポイント駆動ユニット

 まず測定した状態を紹介しておこう。

 簡易オシロ用のArduino とその特製シールドを持ち出し、ポイントNo.4のコネクタ部にクリップを使って電圧を取り出し、オシロのチャンネル1と2に接続する。 茶線はCH1 に、白線はCH2に接続した。 また、ポイント駆動ユニットのArduino には、0.2secの通電と1.0secの休憩を挟んで、直進と分岐を交互に作動し続けるスケッチを作成して、作動させるようにした。 さらに、オシロ用シールドは、入力電圧が10ボルト(ゲイン1/2を使用)までしか測定できないので、駆動用の電圧をDC12VからDC9Vに変更したばあいについても観察した。

電圧: 12V  ポイント: No.4  ポイント作動: 良好  左の状態で、時間軸を拡大して記録。
電圧: 12V  ポイント: No.4&2  ポイント作動: 作動せず、ピー音あり  左の状態で、時間軸を拡大して記録。
電圧: 9V  ポイント: No.4  ポイント作動: 数回作動して止まってしまう。 電圧: 9V  ポイント: No.4&2  ポイント作動: No.2は動くが、No.4ほ動かず。ピー音無し。

 ● 観察結果

 観察結果を順不同で列挙してみる。

  1. モータドライバICによる制御は、綺麗な矩形はを示しており、正常に作動していると判断出来る。
  2. しかし、駆動するポイントが一つの場合には正常に応答するが、ポイントを2個にすると作動不良が発生する。
  3. 作動不良の場合に、ピー音が発生する場合があり、その時の波形にはかなりの高周波で電気的に振動している。
  4. 駆動電圧を下げると、作動が不安定となり、止まってしまう場合もある。
  5. ポイントへ接続する端子において、プラス側で 1ボルト程度のマイナス、マイナス側で 1.5ボルト程度のプラス電圧となっているので、コイルに供給される有効な電圧が、、2.5ボルト程度減少していることを示している。 これはモータドライバIC内部のトランジスタ・ブリッジの電圧降下が影響していると思われる。 このことは、製品の説明書にも明記されている。
  6. ゼロ電圧付近の細かいノイズは、60Hzの周波数なので回路のどこかで電灯線の交流周波数を拾っているものと思われる。
  7. ポイント本体、ポイント駆動用のソレノイド、モータドライバICの出力端子などの組み合わせをいろいろ変えてチェックしたが、作動不良になるのは、ポイント4の本体が原因と推定された。 おそらく駆動抵抗が他の物よりすこし大きかったのであろう。 機械部品なので、当然ながらバラツキがあると思われる。

 このような状態から、モータドライバICによる制御は綺麗な矩形波による制御を実施しているにも関われず、電圧降下などの影響により電動ポイントを駆動するには充分なパワーを提供できないものと推定している。 昔、ソレノイドの磁力は、アンペア・ターンで決まると聞いたことがある。 これはコイルに流す電流とコイルの巻数の積がパワーとなると理解していた。 即ち、電圧では無くて電流を見てみる必要があるのであるが、さて・・・・・・・・・・・?

    電流の測定は難しいですよね。 まして瞬間的な現象では!

 また、コイルにはインタクタンスなどと言う難しい現象が関連してくるそうなので、この瞬間的な現象を観察するのは容易ではなさそうである。 そこで、この程度の観察で諦めることにした。

 

■ TONIXのポイントコントローラをチェックする

 比較のために、TOMIXの純正品を使った場合の電圧波形を観察してみることにする。

● ポイントコントロールボックスの場合

 パワーユニットは N-1001-CL とポイントコントロールボックス N-W (品番:5532)を使って同じポイントを駆動してみた。

 簡易オシロの測定は、前記と同じ方法を使ったが、電圧測定の基準となるGNDをどこにするか困惑した。 そしてパワーユニットの裏側を見ている時に、TCS用コネクタ端子を見つけ、そこにマイナス側が明記されていたので、これが利用できることに気が付いた。 道具箱をあさるとTCS用信号線のコネクタ付き切れ端があったので、このコネクタを使ってGND基準とした。 上右の写真。

電圧: 12V  ポイント: No.4&2  ポイント作動: 良好 電圧: 9V  ポイント: No.4&2  ポイント作動: ポイント2良好、ポイント4作動せず。
電圧: 9V  ポイント: No.4  ポイント作動:スイッチ途中で少し止める。 作動は良好 電圧: 12V  ポイント: No.4  ポイント作動:スイッチ途中で少し止める。 作動は良好

 まず、この波形を見て驚いてしまった。 自分が想像していたパターンと様子が全然異なっていた。 自分は、次に示すパワーユニットN-401の場合のような波形を想像していたのである。

 また、このパワーユニットはDC12Vのアダプタを使用していたので、手持ちのDC9Vアダプタに変えて観察してみた。 このユニットの内部構成は分解していないので不明であるが、ポイントコントロールボックスには、DC電源から直接供給されているものと想定して実験してみた。 結果は予想道理におよそ8.5ボルトの電圧を出力している事がわかり、電圧の飽和状態も観察することが出来た。

 ポイントが直進では、茶線と白線の両方ともHIGHの状態(高圧状態)であり、分岐状態になると両方ともLOWの状態(低圧、即ちGND状態)になっている。 その途中に3ボルト程度の電圧差が有る状態がある。 そして、その途中状態も、HIGHからLOWへと移行する場合と、LOWからHIGHに移行する場合では、当然ながらパターンが異なっている。

 ポイントが作動するのは、CH1 の波形において、ピンと跳ね上がった時とドスンとゼロに落ち込んだ時である。 その中間の時やゆるゆると立ち上った時は作動済みの状態であった。 このゆるゆると立ち上る状態は、前記のドライバICの場合には見られなかったパターンである。 回路の負荷は同じソレノイドであるので、あたかもコンデンサのような作用をする部品がコントロールボックス側のどこかに接続されているように思えてしまう。

 何故このようなパターンになるか、あるいはこのようなパターンにするのか疑問が湧いてきます。 解りません・・・・・・・・・・!

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 そこで、ポイントコントロールボックスを分解して調べることにした。 分解した状態を下に示す。 基板の上には簡単な電極のパターンが構成されており、その上をスライドする部材が2個スライドするようになっていた。 スライド部品の電極の足は同じであるが、上側の角の部分の広さが異なっている。 また、パターン電極は、左から電源のプラス極に、次はマイナス極に、そしてソレノイドの茶線、一番右は白線に繋がっていた。 コンデンサらしき物は有りませんでした。

 レバーが上にある状態(ポイントが直進状態)と、下にある状態(ポイントは分岐状態)を下に示す。

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 作動はスナップが利いた状態で、パチンパチンと動くが、その途中の動きを基板のパターンと合わせて解析した。

 その結果を右のイラストに示す。 電源のプラス極とマイナス極、そしてソレノイドの茶線、と白線をそれぞれポイントで示し、その通電状態を線で結んでみた。 ここで、茶線と白線の間にソレノイドが接続せれているのでその間の電極状態に注視してみよう。

 レバー操作の途中で二つの状態があり、最初のステージでは白線と茶線を同一電極に接続し、後半のステージではプラス極とマイナス極と通電するようになっている。 そしてレバーが上側で待機している時は、ソレノイドにはプラス側と、下側で待機している時はマイナス側と接続されている状態が理解できた。

 レバー操作時にはこのような動作をするので、オシロの画面から観察された波形がやっと理解出来るようになった。 後半のステージで、ソレノイドの両端に電圧差を生じさせ、ポイントを切り替えているようである。 しかし、なぞこのような作動をさせるのであろうかとの疑問は、やはり解決できなかった。 TOMIX技術陣のノウハウなのだろうか。

 

● 内蔵式の場合

 上記のように予想とは異なった結果であったので、コンデンサを使った方式を採用している 「ポイントの切替駆動の制御方法」で報告したパワーユニット N-401の場合の電圧波形も観察した。

 測定方法は同じである。 上右に装具として使用した配線類を示す。

ポイント: No.4  ポイント作動: 良好 左の状態で、時間軸を拡大して記録。

 こちらに波形は、推定通りの波形であった。 直進と分岐の操作に応じて、鋭いピークが交互に現れれている。 このピークの電圧は、簡易オシロの精度もあるのであてにしない方が良いと思っている。 また、60Hzのノイズもしっかりと現れている。

 

■ KATOのポイントスイッチ

 こうなると、KATO製の場合はどうなのか興味が湧いたので、ポイントスイッチ (品番:24-840)分解してみた。 

 構造はすこぶるシンプルである。 操作レバー、それに連動する “やじろべえ” の様な部品がばね兼配線部材を挟んでいた。 可動部品はこれだけである。

 操作レバーとやじろべえはコロを挟んで接触しており、ここでスナップ作用を発生している。 分解した時、このコロがポロリと落ちてきたが、どこにはまっていたのか解らずにうろうろした。 やっとその場所をみつけたしだいであるが、大切な部品であったのでやれやれである。 このやじろべえの細い足はケースの溝にはまっているため動きが規制されている。 するとやじろべえは中心のピンで止められているので回転も出来ないので、どうやって作動するのか不思議であった。

 少しいじっているとやっとその疑問が解けた。 この細い足がたわむのである。 やじろべえの回転は、この細い足のバネ作用によって、右に左に傾くのである。 傾むかせる力は頭の部分にあるコロと接触するレバーの三角形状の回転によって生じている。 そして、このやじろべえの傾きによって、バネ線がプラスとマイナスの電極に接することによって、コネクタ部から電気を通電させるのである。 うまく考えてある構造ですね。 興味ある方は、ご自分のスイッチを分解してみては如何ですか。

 このKATO製のポイントスイッチは、構造は簡単であり質実剛健の構造である。 そして、コネクタ部に分岐コネクタをつなげば、3台のポイントを同時に制御出来るパワーも持っているのである。

 TOMIX製との違いは、操作レバーが上か下の位置にあるときは、即ち待機状態では通電が切れている事である。 切替に必要な時だけ通電しているのである。 この違いによってどんな効果あるのかと考えてたが、特に思い付かなかった。 TOMIX製の場合、レバーが上にあるときは、ソレノイドは電源のプラス側に常に接続されている事を知っておいても損はなさそうだと言うことなのかな・・・・・・・・?

 

■まとめ

 波形を観察しても結局は良く分からなった。 製品のバラツキもあるので、とにかく、ソレノイドは勢い良く動かせ との結論にしておこう。 

 また、KATO製のポイントスイッチを使って、オシロで波形を見てみようとも考えたが、接触時に電圧がピンと跳ね上がるだけの状態であろうと想定して、面倒なので止めにした。 それよりも注文していた部品が届いたので、さっそく工作することにした。