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鉄道模型実験室  有線通信のための信号ユニットを作る

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■ はじめに

 先回は有線通信線の配線を支える支柱と竿の工作を報告した。 そして、当初の思惑どうりに機能することが確認できたので、その信号処理を実施する回路と配線工作を実施した。

 

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■ 信号処理回路

 走行する動力車から、そのモータ回転とモータ端子電圧の信号をメインの測定処理ユニットに送信するための、回路を検討した。

 今回のモータ回転数計測として、有線通信を使用しているため、パルス信号をArduino に直接入力させることが出来るため、測定ゲートを通過している時間内でのパルス数をカウントすることにした。

 パルスから回転数を計測する方法として、一定時間内のパルス数をカウントする方法と、一定の数のパルスをカウントしてその時間を計測する方法ある。 今までは後者の方法を採用してきたが、今回は前者の方式で実施してみることにした。

 パルスのカウントの方法として、以前に周波数計測が実施出来るArduino のライブラリーを使う方法がダメだったので、割り込み処理によってカウントするプログラムを組むことにした。 このため、割り込み処理が出来るデジタル端子D2 に入力させることにする。

 また、モータ回転の検出は、「SLのモータ回転数を測定しよう その1」などで使用した小型の反射型フォトセンサ GENIXTEK CORP.製のTOR-105F を今回も使用する。 今回はArduino からの5Volt 電源が使用できるので回路設計は問題なさそうである。 そして、回転のパルス信号をプルダウン回路を使って Arduino のデジタル端子D2 に入力させる。 右の回路図参照。

 モータからのパルスを確認するために、LEDを点灯させようとしたが、パルスが速すぎるために、点滅のサイクルを減少させる必要がある。 そのためには、やはりカウンタICが必要になってしまった。 LED電子工作で使ったICの中でストック品として残っていた14ステージバイナリカウンタ SN74HC4060N を使用したが、少し豪華過ぎる気もする。でも、一定の数のパルスをカウントしてその時間を計測する方法としても使用できるので、今回の方法がダメになった場合のバックアップとして入れておくことにした。

 また、今回も設定数を選択するDIPスイッチを使うことにしたが、間違えてスイッチを2ヶ所ONにするとICの出力ポート間を短絡させることになり、ICを破壊させる心配が有ったので、ICとDIPスイッチ間に抵抗を挿入して置く事にした。 幸い、チップ抵抗を持っていたのでそれぞの足の間に半田付けして、スペースを小さくすることにした。

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 モータ端子電圧の測定は、オペアンプの差動増幅回路を使用する。 これは、Arduino のGND は供給電源のGND、即ちレールのマイナス側とつながっているため、モータ端子電圧のマイナス側は、このGND電圧より浮かさなければならないからである。 レールとモータ端子間にはプラス側は勿論、マイナス側に電圧降下が生じているためである。

 さらに、モータ端子電圧の差圧はArduino に許された5ボルト以下(実際はオペアンプを使うので3.7volt以下)に分圧する必要がある。 オペアンプの+側と−側に用いる抵抗の値を同じにすると、出力電圧は、Vout =(V1-V2)* R2/R1 で計算されるので、R1=27K Ω、R2=10KΩと設定した。 これによって、モータ端子電圧は10ボルトまで測定できるはずである。 このモータ端子電圧の差圧値であるアナログ出力をA3ポートに入力させる。

 また、自動運転ユニットからのステージ信号を受け取るポートも設けておく。 そして、これらの回路は、サブシールドとして、測定ユニットのメインシールドの上に重ねる形にしている。 使用した基板は、汎用のプリント基板を使用する。 下側にシールドと接続するピンを裏側に設ける必要があったため、両面タイプの物を使用した。

 左に完成したシールドを示す。 その表と裏を下に示す。

 

 

■ 配線類の工作

 各ユニットを接続する配線類を工作する。 動力車に取り付けるモータの回転センサを取り付けているセンサ線、モータ端子電圧を測定する電圧測定線、それらをサブシールド基板に接続する長い信号線、および、自動運転ユニットとサブシールド基板とを結ぶステージ信号線を作った。 下左の写真。

 まず、センサ線と電圧測定線を右上の写真に示す。 センサ線には、小型の反射型フォトセンサを2mmピッチの基板の切れ端に取り付け、4本のポリウレタン線( 線径 0.2mm )でセンサの足に半田付けしている。 下左の写真。 線の長さは約30cm である。 ポリウレタン線の導線抵抗は0.8〜0.9Ωであった。 センサ線の他端には、4本のオスのピンヘッダを取り付けている。 電圧測定線は、厚さ0.3mmのリン青銅板の切れ端にポリウレタン線を半田付けし、2本のオスピンに接続させている。 半田付け部は、ポリウレタン線の保護と半田付け部の絶縁のために熱収縮テューブを使って保護している。

 上右に示す長い信号線は、センサ線と電圧測定線とをまとめて接続し、サブシールド基板と接続させるものであるが、今回の有線方式のメインパーツである。 軽くて柔軟である必要があると考え、電圧測定線と接続するラインはタミヤ製1.5A平行コード#360(0.08mm×30芯)を使い、センサ線と接続するラインは細くて3本構成のTOMIXのセンサ線を切り取って使用した。 これらは6個からなるメスのピンヘッダに接続している。 下左の写真。 なお、反射型フォトセンサからは4本の配線が来ているが、赤外線LED 用のプラス線は、220Ωの抵抗を挿入して、フォトカプラ用の電源線かば分離させているので、このヘッダ部分からは3本で良いのである。

 信号線の他端は、サブシールド基板に設けたメスのピンヘッダに挿入出来るように、2本と3本の別々のオスのピンヘッダを取り付けている。

 このように、信号線を構成したのは、測定車両に取り付けたセンサ類と長い信号線を分離させるために構成したのであるが、接続時に間違えないようにペイントで色分けしている。 この信号線の長さは、225cm あった。 TOMIXのセンサ線の両端間の導線抵抗は0.8Ωだったので問題無いと判断する。

 上右に示す導線は、ステージ信号線である。 他の線と混同しないように線を色分けしている。

 

■ 装置への取り付け

 テスト実施時のサブシールドと配線の取り付け状況を示す。 下左にそれぞれのユニットと配線状況を示す。 また下右にはサブシールドをメインシールドの上に重ねた状態である。 配線は、測定台に設けた穴を使って台の下側を通している。 なお、ステージ信号線は故あって、サブシールドでは無くてブレッドボードに設けてLEDに接続している。

 多くの配線がゴチャゴチャして来たので、誤配線を恐れて・・・・・(70を過ぎると天然ボケがだんだん強くなってきました)・・・・・・ 接続絵図を近くに張り付けています。

 動力車には、モータ回転センサと電圧測定端子を取り付け、それぞれのセンサ線を信号線に繋ぐ端子に接続させています。

 いよいよこのプロジェクトも大詰となって来ました。 次回は、各センサ類のテストと校正状況を報告することにします。