HOME >> 鉄道模型実験室 > モータ特性を測定しよう その10 ボールベアリングを使う

鉄道模型実験室 No.121  モータ特性を測定しよう その10 ボールベアリングを使う

■ はじめに

 先回の「モータ特性を測定しよう その9 反力を利用しよう」では新たな方法に挑戦したが、やはり摩擦抵抗の壁に阻まれてしまった。 やっと本命としていたボールベアリングが届いたので、早速その工作を実施したのでその効果を報告する。

 

■ ボールベアリングの組み込み

 注文していたボールベアリングは、内径が4mm の標準型のボールベアリングである。 これはタミヤのテクニクラフトシリーズに使用されているシャフトに合わせたもので、摩擦を嫌って解放型を選定した。 内径が4mm 物にはいろいろなサイズがあるが、ミニチュア玉軸受・小径玉軸受 (開放形) の品番が634の物を選定した。 内径が 4mm、外径が 16mm 、幅が 5mm で、NTN製である。 注文個数は予備品も入れて4個注文している。

 取り付け方法を下に示す。 フラットと思われる木片を使って L 字型の棚を作り、ここにベアリングを押し当てて簡単にかつ確実な芯出し方法を採用した。 ベアリングは取り付け時の芯出しが重要と判断している。 そして、厚さ 1mm のアルミ板でベアリング押さえを作り木ネジで固定した。 スイング軸の端にワッシャとナットでシャフトの抜け防止を図っている。

 シャフトの回転は非常に軽く、期待が持てそうであった。

 今回の測定台の全体を下に示す。 ベースとなる台は日曜大工で工作した棚材の切れ端を活用している。 ずっしりとして重みがあり、測定台としては前回の工作品よりも風格が向上した。 モータ取り付け台などは共通使用しており、電気回路関係も同様である。 何時でも先回の測定装置を組み立てられるようにしている。

 モータとブレーキ装置は、模型で使用しているジョイントをそのまま使用して連結している。 下左の写真。 取り付けているテスト用のモータは、ジャンク品2のモータであり、フライホイール内のジョイント部は6角穴になっているので電気機関車のジョイントを借用し、ASSY部品で手に入れている 4071 中間ジョイント(品番:Z04-0866)とセロテープで連結し使用している。

 スイング軸と荷重計は上右の写真に示す様に糸で連結しているが、スイング軸の釣り合いのために取り付けた重りはあえて取り去ってアンバランスの状態で連結し、拡大レバーが軽く荷重計を押し付ける状態にして初期状態のガタを消し去るように配慮した。 ジョイントを取り付けていない状態でスイング軸を少し捻じると、軽く左右に回転した後にほぼ定置に停止するので、ベアリングの摩擦抵抗は非常に小さいと感じた。 なかなかいい感じである。

 斜め上から見た装置の全体像を下に紹介しよう。

 

■ トルク計の校正

 まずは、トルク計としての校正を実施しておこう。 方法は前回と同じである。

  

  .

 測定結果を右のグラフに示す。 10枚の一円玉を順番に載せて行き、その操作を2往復させた結果であるが、読み取られた値はきれいに一直線に並び、そのバラツキも少ない。 これは、スイング軸のヒステリシス、即ち回転摩擦抵抗が少ない事を示していると判断する。 これによって、この測定装置としてのデータの再現性やリニアリティは申し分ないと判断出来る。

 それでも、データには少しのヒステリシスが見られるが、この校正方法は静的な状態で測定しているので、その影響が出ているものと判断している。 一方、実際の測定に当たっては、ブレーキ装置の回転軸のビビりなどで小さな振動状態となっているので、その振動状態の影響でこの程度のヒステリシスは問題無いレベルまで小さくなってくるものと想定するのである。

 このグラフと先回のグラフを比較して、ボールベアリングの効果を実感しているのだ。

 

■ 実際のモータの測定

 次に、以前測定した ジャンク品2 のモータを使用して、測定データを比較してみよう。

 測定状態を下の写真に示す。 何時もの様に安定化電源を使用し、Arduino からの通信データを古いパソコンに取り込んで測定を実施した。 今回は、丁度よいアクリル板を安全カバーとして使用出来たので活用している。 安全第一である。

 なお、測定装置での違いを明確にするために、フレイホイールに糸を巻き付けて負荷を与えた先回の測定装置をフライホイール方式と呼ぶことにし、今回の測定装置をブレーキ方式と呼ぶことにしよう。

 

◆ 回転数特性の測定

 最初に無負荷状態での回転数と電圧や電流・電圧特性を測定しておく。 これは以前のデータと比較し、モータが同じ状態であったかどうかを検証するためである。

 測定結果を上のグラフに示す。 このグラフより、フライホイール方式(F方式)とブレーキ方式(B方式)とは全く同じ結果であると言えよう。 無負荷なので負荷状態は関係ないはずであるので、モータの状態が同じと言うことが出来る。

◆ トルク特性の測定

 次にモータに負荷を与えた状態で、トルク特性を測定した。 最初に、トルクと回転数のグラフを示す。 左のグラフはブレーキ方式で今回測定した測定したデータであるが、フライホイール方式と同様に綺麗なデータを取得することが出来ている。

 しかし、プロット点の並びはバラバラとなってしまった。 これは小ねじによるブレーキ力の調整が意外と困難であったからである。 一か所に固まったり、飛び過ぎるたりしたためである。 さらに、5gf-mm 以下の小さなトルクの設定が出来なかった。 ブレーキ装置の回転摩擦が影響しているもとと考えるが、負荷がゼロの状態は、上記の無負荷時の回転数特性で多数取得しているので、モータの解析には問題無いと思っている。

  

 上右のグラフには、フライホイール方式で測定したデータを重ねた見た。

 うれしい事に、見事に一致しているではないか!                      

 次に、トルクと電流のデータについても同様に表示する。 ただし、電圧のパラメータによる違いはほとんどないため、プロット点が重なってしまう。 このため、フライホイール方式とブレーキ方式とでの違いを表示する右のグラフでは、3ボルトと6ボルトのみを表示した。

  

 この電流値のデータに関しても、見事に一致している。 

 これらのグラフより、色々な事が言える様になった。 フライホイール方式とブレーキ方式とで測定したデータが一致すると言うことより、

  1. まず初めに、フライホイール方式とブレーキ方式とはどちらも信用できる測定法であると言えよう。
  2. フライホイール方式にて危惧していたラジアル力による摩擦抵抗の増加は影響がほとんどないと考えてよい、即ち測定したデータは信用できると言える。
  3. フライホイール方式とブレーキ方式では、測定するモータに合わせて使いやすい方法で測定すれば良い。
  4. スイング軸にボールベアリングを採用したのは正解であった。 回転摩擦抵抗はこの方式での測定において影響を与えていないレベルである。

■ まとめ

 ボールベアリングを使用することによって、目的とする測定が可能となった。 そしてフライホイール方式でも、またブレーキ方式でも同じ測定結果を得ることが出来たことにより、ホビーと言えども、我が測定法は意外と信用できるのだという自信にも繋がった事は、大きな成果である。

 いよいよ、コアレスモータの測定に挑戦しよう!

ページトップへ戻る  .


 2016/11/7 作成