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鉄道模型実験室 No.123  ドクターカーを作ろう

■ はじめに

 先回報告した「小型電気機関車の前照灯を工作する」にて、Bトレイン旅客列車のレイアウト運転状況を紹介したが、閉塞区間ごとに給電している状態にばらつきがあるように感じられた。 これは以前から気にしてたもので、特に駅の区間が問題であった。 そこで、この給電状態や線路の汚れ状態をチェック出来る線路の保守状態検査方法を考えることにした。

 この給電時の電圧降下をチェックするには、電流を流した状態で電圧を測定すれば良いのであるが、この様な機器としてコスミックから「負荷抵抗内蔵 デジタル電圧計 レールドクター」(コスミック.CP-V20)なるものが発売されている。 負荷抵抗2種(12V時0.5A及び1A)の切換式で広範囲で使用できま、デジタル表示用の電池は不要(レールから供給)とのことであるので、これにヒントを得てドクターカーなるものを考えてみた。

 走行中の車両に電圧計を搭載して、その電圧をチェックしようとするものであり、すでに実施済みのモータ端子電圧を測定する方法を簡略化させれば可能であるであるが、測定対象であるレイアウトにパソコンを持ち込むのは色々制約があるので、もっと簡単な方法を模索した。

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■ 電圧を表示する方法

 最初に考えたのは、小さなアナログの電圧計は無いのかネットで探した。 アナログならば計器のための電源が不要であるからである。 しかし、Nゲージの車体に搭載できるような小さな計器は無かった。 しかし、デジタル式の小さな電圧計を秋月のサイトで見つけたのである。 右の写真。

 超小型2線式LEDデジタル電圧計(パネルメータ)3桁表示 DC3〜15V(赤色)オートレンジ (DC Voltmeter-Red) でそのサイズは、 30×11×9mmであり、Nゲージの車体に充分搭載できる大きさであった。 さらに、メータの駆動電源は測定対象から供給を受ける(18mA以下)とのことであり、測定範囲もDC3V〜DC15Vであったので、充分使用できるスペックであった。 そして、すぐに注文したのである。

 

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■ 検討1) 鉄コレ動力車を使う

 最初にストック品であった鉄コレの動力 TM 05 R を使って電圧計を取り付けた。 まず、電圧計を厚さ 1mm のプラ板に小ネジで取り付け、そのプラ板を車体に括り付けた。 そしてリード線を集電子にハンダ付けした。 また、この動力車の台車間距離が74mm もあったので、ピンポイント測定を狙って細工した。 トラクション車輪と無しの車輪を集め、トラクション無し台車からのみ集電するようにした。 このため、トラクション付きの台車側の集電子は、上に曲げて接触しないようにしている。 組み替えた台車の状態を下に示す。

 さて、この状態でレイアウトでの走行チェックを行った。 その様子を下の動画に示す。 なお、ノイズによる測定データの影響を心配して 10μF のコンデンサを追加している。

 結果は、見事に失敗であった。 走行で不安定であり、電圧表示も点いたり消えたりである。 これでは使いものにならないと判断する。

■ 検討2) 別の動力車と重連させる

 走行が不安定であったので、別の動力車(S系のEH500-3号車)と重連させて走行させたが、停車することなく走行出来たものの、電圧データはやはり不安定であった。

■ 検討3) 鉄コレ台車のモータを空転させる

 重連走行がダメなら走行動力は牽引車にまかせることにし、電圧計を搭載している鉄コレ台車のモータを空転させて単なる測定回路の負荷となるようにした。 その細工としてはジョイントやウォームギヤを取外しのであるが、やはり結果は芳しくなかった。 モータはギャーギャーとうるさいし、測定用の車輪はすぐに汚れてしまう上に、データが不安定であった。

■ 検討4) 測定回路の負荷として50Ωの抵抗を使用する

 測定回路の負荷としてモータを使用しているのが良くないのかと判断して、50Ωのセメント抵抗を使用する。 その状態を下に示す。

 動画でご覧のごとく、何とか行けそうな気はするものの、やはり不安定な動作である。 0.00 の表示あり? 本当に電圧を測定しているのだろうかの不安あり。 車輪もすぐに汚れてしまうのも気がかりである。 

■ 検討5) 牽引動力車の電圧を直接測定する

 自分の車輪から集電する電圧測定車方式を中止して、滑らかに走行できる動力車のモータ端子電圧を測定する方法に変更する。 このために、単に電圧計を搭載しただけの車両を仕立てて、動力車、電圧表示車、重り車両の3両で構成する方法にした。 電圧表示車両は鉄コレ12m 級車両のシャシーを使用している。 リード線の先端にはリン青銅板をハンダ付けして、動力車の隙間に差し込むようにして接続した。

 動力車としては、鉄コレ動力の最新ユニットである電気機関車用Bの TM - ED01 のユニットを使用する。 動きがスムースで低速が効くこと、台車間距離が38mm と短いので、よりピンポイント測定が出来ると考えてからである。

 オォー! 行けるではないか! 再生速度を 0.25 に設定して観察すると、電圧計の表示はバッチリと読み取れるのだ。 今度は内回り線で走らせた。

 動画でも映っていたように、途中で脱線してしまった。 これはリード線が太くて線路の状態に対応できなかったのである。 もっと柔軟なリード線にする必要がある。 これまでの状態と比較しても安定的に走行し、パネルの表示も安定している。 線路のクリーニングなどは一切していないのに何が違うのだろうか? 何度も走行させたので線路が綺麗になったとも考え難いので、車両の違いが大きいものと判断している。

 再生速度を 0.25 に設定して観察するが、思った程の電圧降下は無いようである。 これは動力車の消費電力が小さいからであろうか? オットーッ この動力ユニットの動力特性は未測定であったのだ。

■ 検討6) 電流消費の大きな動力車を使用する

 電圧降下量がより大きく出るだろうと考えて、電流消費の大きな動力車を使用してみた。 S系車両の EH210-10 号機を使用してみた。 シャシーから電圧を取るのでボディーは外している。 また、リード線はφ0.2mm のポリウレタン線を使用し、車両安定化のために水草の重りで加重した。 電圧計を取り付けていない状態で、 11.6 グラムから28.8 グラムまで重くしている。

 この時の編成を下に示す。 リード線の端部は動力車のフレームにセロテープで止めている。

 これならば、充分にドクターカーと言えるのではないだろうか。 そして、駅構内の給電状態が他の区間に比べて1ボルト近くも低い事が分かった。

 

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■ 電圧計の特性を測定する

 使用した超小型2線式LEDデジタル電圧計の特性を測定しておくことにする。 走行中の表示では、0.00 の表示がたびたび見受けられたのであるが、電圧がゼロでもなんで表示されるのだろうと疑問になったからである。 電圧計の表示がゼロであっても、パネルの電源はゼロでない?

 測定状態を右上の写真に示す。 何時もの安定化電源を使用して、電圧と電流を読み取った。 そのデータをグラフ化したものを上に示す。 約 2.5 ボルトからうっすらと表示を始めるが、表示されるのはその数値であり、0.00 の表示は出現しなかった。

 この安定化電源は本当の平らな直流であるので、当然と言えば当然な結果であるが、走行中に見かけた、0.00 の表示は何だったのか?

     そうだパルスだ!

 そこで、TOMIX のパワーユニット N - 100 - CL を持ち出して測定してみた。 下の写真。

 電圧の低い場合には、見事に、0.00 と表示するのである。 そこで同様に供給電圧と表示電圧を測定した。 供給電圧はテスターを使用した。

 その結果を上のグラウに示す。 立ち上がり部分を拡大したグラフを右に示す。 パネルは 0.1 過ぎから光だすが、0.00 と表示する状態続き、0.4 ボルトを過ぎてからその電圧を表示するのである。 即ち、パネルの表示と測定開始の電圧が異なるのである。 いったんパネルが作動を始めると電圧が下がるのも、もっともらしいのである。

 なお、PWM制御された場合の電圧測定が、この様な方法で測定可能であるのかは不明である。 本来ならばオシロ等で波形観察等が必要と思うのであるが、簡便なこのような方法で測定しても、それらしきデータが取得できているので良しとしておこう!

 

■ まとめ

 なんとか、保守状態の検査法とし有効な手段にすることが出来たと思っている。 走行中のパネルを直接観察するのは難しいが、デジカメやスマホで動画として撮影し、その画像をゆっくりと再生しながらチェック出来るのである。 画面には場所も映っているので、問題個所の特定も可能なのである。

 しかし、トンネルの中は撮影できないし、データとして、あるいは電圧降下量のグラウとして表示出来ないので、観察処理が面倒なのだ・・・・・・・・・。 無線通信モジュール XBee を使用してモータ端子電圧のデータをパソコンに飛ばし、 パソコンで処理する方法がある。 これは既に経験済みであるが、レイアウトに近くにパソコンを持ってくるのが困難であるし・・・・・・・ノートパソコンが欲しい!・・・・・・・・・・、線路の位置データをどうやって取得するのかも問題なのである。 今後の課題としよう。

 また、駅構内の給電についてはポイント部での電圧降下の影響と判断しており、両サイドから給電するように配線を追加しようと考えている。

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 2016/12/8 作成