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鉄道模型実験室 No.188  モータドライバとPWM制御 観察方法

 先回の報告にて気になる或る事項を確認しましたが、実はもう一つあるのです。 それは、コアレスモータとPWM制御の関係です。 デューティ比と車速の関係がなぜ非線形になるのかと言う疑問から、どこでその非線形性が生じているのだろうかと言うことです。 こだわり屋の実験室長は、ショットキーバリヤーダイオードを持ち出して来て実験してみると、思惑とは違った結果となり混乱してしまった。

 

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■ いきさつ

 先回の「マイコン式の運転操作台を作ろう コアレスモータ搭載小型SL車のレンジ設定」(2021/5/7)のて、コアレスモータを搭載した動力車は、PWMパルスのデューティ比とは比例しなことを報告しました。 動力車はKATO

のC56や8620で、モータドライバは、BD6231です。

 一方で従来の鉄心のあるマグネットモータでは、綺麗に比例するのですが、その理由として、鉄心とコイルによって発生するフリーホール電流の影響の違いではと推測しています。 鉄心とコイルの組合せでは、あたかも電気に慣性が付いているように、電流は流れにくく、一端流れた電流は止め難いそうです。

 PWM制御の場合は、瞬間的にONし、瞬間的にOFFするパルス波形にて電力を供給しますので、鉄心のあるマグネットモータでは、このような素早い反応に追いつけず、ゆっくりと応答し動きが平滑化されます。 一方、コアレスモータは、鉄心がないので素早く対応でき、PWM制御独特の対応となるようです。

 「パワーユニットを知ろう PWM制御とコアレスモータ 波形観察」(2017/1/31)で報告したように、TOMIX製パワーユニットN-1001-CL を使ってコアレスモータ(KATO製 C56-149号機)との比較を調査した。  この時にまとめた通常のモータとコアレスモータの状態を下に再掲載する。

 この波形の違いが何故特性の非線形性になるのかが、前からの疑問点でした。 そして、「マイコン式の運転操作台を作ろう コアレスモータ搭載小型SL車のレンジ設定」(2021/5/7)で、モータドライバからの出力波形はまでは、線形的に出力されている事がはっきりしました。

 即ち、モータドライバとコアレスモータの間で、何か特殊な関係があるのでは無いかと考える様になったのです。

 

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■ 疑問の確認方法

 そこで思いついた付いた方法がショットキーバリアダイオードを使う方法です。 モータドライバとコアレスモータの間は、モータドライバからのPWM制御された電力が送られてきます。 そして、パルスがONの場合は何ら問題なく電流は流れるはずですが、OFFの場合はどうなるのでしょうか?

 モータからは、何らかの影響がある筈です。 モータが回転しているので逆起電圧がかかってくるはずですし、電流遮断時に発生するフリーホイール電流によって順方向に電流が流れようとするはずです。

 ここに、ショットキーバリアダイオードを挿入すると、順方向の電流は流れるものの、逆起電圧による電圧の逆転が生じた場合には、ダイオードで遮断されるはずです。 その様子を右上のイラストにしてみましたが、ダイオードの上流側と下流側の波形を観察して比較すると、イラストに示すような波形になるのではないだろうか想定しました。

 即ち、ダイオードの下流側、即ちモータの入口側で逆起電圧によって変形した波形になるものの、ダイオードの上流側は電圧の逆転は起こらず、綺麗な矩形波を呈するであろうと考えたのです。

 でも、この逆起電圧はモータが回転している限り発生してはずなので、やはりフリーホイール電流が影響しているものと考えるのですが・・・・・・・・・・。 よく解らないのでとにかく観察してみることにしました。

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■ PWM波形の観察方法

 波形観察回路として右のような回路をブレッドボード上に組立てました。 マイコンとしてコンパくトな Arduino Nano Every を使ってPWM信号を作り、テスト用のモータドライバからPWM出力を取り出しました。 ショットキーバリアダイオードはPANJIT製の1S4 を使用し、PWM信号のデューティ比はロータリスイッチの選択に合わせて、指定するようにしました。

  Every に書き込んだスケッチ ⇒ Every-PWMTEST-1.html

 

 実験の状態を下に示す。 曲線走行中の抵抗を小さくするため、大きめのミニレール(半径 177mm )を使って小型動力車を走らせることにしました。

 波形観察はショットキーバリアダイオードの前後の電圧をオシロに取り込み、波形の画面をハードコピーして後からも観察出来るようにしました。

 モータドライバとAeduinoの周辺拡大を下に示す。

 

■ 観察結果

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 今回は ROHM製のフルブリッジドライバ BD6231 を使って観察しました。 オシロで観察した結果は、動画で紹介するのが一番です。 選択ダイヤルの移動に従ってデューティ比が大きくなって行きますので、その時の波形の変化具合を観察してください。

 なお、有効なループ再生機能が無かったので同じ動画を5回ループ再生するように編集してあります。

 ダイオードの上流側の挙動が当初考えていた様子とは異なっており、何が起こっているのか何度も確認しました。 黄色が上流側で青色が下流側ですが、上流が何かおかしな動作をしています。

 

 どこが間違っているのかな? と言う不安を抱きながら、もう少し他の例も調べてみることにしました。 次回はTOMIX製コントローラ N-1001-CL や他のモータドライバの様子を紹介します。

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 2021/5/17 作成