HOME >> 鉄道模型実験室 > 電気ノイズキャンセラーを調べる
こだわり屋が遂には、この部品の調査まで手を出してしまいました。 海外向け仕様のコンデンサ付きライトユニットを装着している車両には、電気ノイズキャンセラーを使用せよとの説明を見つけたので、何かのヒントになるかも知れないと考えて調べることにしたのでした。
■ 電気ノイズキャンセラーとは何ぞや?
ホームページの片隅で見つけた情報を頼りに、ネットで注文していた製品が届きました。 その機能を理解しようと、まずはその中を覗いて見ることにしました
やや重めのこの製品のメイン部品は太めの電線が巻かれたコイルでした。 基板の裏側(表側?)にはチップコンデンサとチップ抵抗のみの簡素な回路でした。
一番驚いたのは、白色の電線はインとアウトのコネクタ間を直結していた事です。 こちらはプラス側?マイナス側? と思ってパワーパックの裏側を見ると、白色の電線はFWDの場合はプラスで、REVの場合はマイナスになります。 これは当然ですね。
と言うことは、この製品は給電線の片側だけで機能するもので、給電時の供給往路か、または復路の一方で機能する製品である事が分りましたが・・・・・・、でも疑問だらけですね。
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基板の回路を追っていくと、コンデンサと抵抗が直列で、これらに並列してコイルが接続されている・・・・・・・・。 この製品の分解調査を実施していらっしゃったあるサイトによると、0.1uFっぽいコンデンサと24Ωの抵抗だそうですが、コイルの容量は未調査の様でした。 いわゆる、RLC並列共振回路とのことで、下手な定数を決めると、ノイズキャンセルどころか、発振してノイズを出しまくりのとんでもない回路だそうです。
もう一点気が付いた事があります。 製品の箱に記された英文名です。 Electronic Frequency Filter と書かれてありました。 これが日本語ではノイズキャンセラーとなるの? 周波数フィルターと言われる方がピッタリではないのか?
周波数フィルターには、ハイパスフィルターとローパスフィルターがあることぐらいは知っています。 コンデンサはハイパスで、コイルはローパス機能があると理解しているのですが、上記の回路はその両方の機能があるフィルタなのかな? 即ち、特定の周波数領域だけは通さないフィルターと理解出来るのですが・・・・・・・・よくわかりません!
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そして、この様な機能が、コンデンサ付きライトユニットの暴走をどれだけ防止するものかも、チンプンカンプンのど素人です。
■ 効果を確かめよう
とは言っても実験屋としては、理屈は別として、実際の状態でこの製品の効果を確かめる事にしました。 いままでの実験と同様に、小さなエンドレス線路を使って該当車両を走らせ、0.2Ωのシャント抵抗のある測定小道具から電圧と電流の情報をオシロで観察します。 動力車の車速はビースピVを使って測定し、パワーユニットのダイヤル目盛を横軸に、車速を縦軸にしたグラフ上に表示させます。
走行させた車両は、問題としたKATO製の「アルプスの氷河特急」基本セット3両 (品番:10-1145)の機関車単体で走らせました。 コンデンサ付きにするため、再度コンデンサをハンダ付けしました。 客車の走行抵抗は極めて小さかったので無視しています。 そして、先回の「ライトユニット3101のコンデンサの影響」(2021/6/13)のデータの上に重ねて比較しました。 その結果を下に示します。
コン有キャン無 などの表現は、コン は、ライトユニットのコンデンサの有無を示し、キャンは、電気ノイズキャンセラーを介して給電したかどうかを区別するものです。
結果は、完全ではないものの、それなりの効果が認められました。 コンデンサの有りの場合、キャンセラ無しでは暴走気味だった車両が、キャンセラーを介して給電すると、コアレスモータ搭載車程度の操作性におとなしくなりました。 これは、KATO製でもTOMIX製でも同じ傾向でした。
KATOさんの説明に誤りはないと判断致します。 コンデンサがない場合は、キャンセラーが有っても無かっても同じですね。
■ オシロ波形を観察しよう
効果はありそうですが、それは何故だろうとの観点でオシロ波形を比較してみました。 なにかのヒントを見つけるために!
◆ KATO スタンダードSXの場合
複雑で特殊な制御を実施しているようで、オシロ波形が安定せず、TONIXの場合の様に状況を読み取ることが出来ません。 ちなみに、車速がおよそ 100Km/h の時の波形を拾い出して並べてみました。
一番左のオシロ画面がコンデンサ有りで、キャンセラーは使用していません。 中央が、コンデンサ有りでキャンセラー使用した状態です。 右は、コンデンサ無しでキャンセラーを使用していない状態です。
どの様に読み解けばよいのかわかりませんので、お手上げです。
◆ TOMIX N-1001-CL の場合
そこで、波形観察が容易なTOMIX N-1001-CL の場合のオシロ波形を比較しましょう。 車速がおよそ 100Km/h の時の波形を拾い出して並べてみました。 一番左がコンデンサ有りで、キャンセラーは使用していません。 次の中央が、コンデンサ有りでキャンセラー使用した状態です。 右は、コンデンサ無しでキャンセラーを使用していない状態です。
それぞれの場合、パターンが劇的に変わっている事に注目しましょう。
注目するオシロ画面中の状態について、ダイヤル目盛による推移を動画にまとめました。 波形の変化具合が分ると思います。
さらに参考としてオシロ画面左の場合についても同じ様に動画にしました。
キャンセラーのコイルによって、低周波成分は通過していくものの、高周波成分はカットされるはずです。 これはPWM波形をならして平均化した電力をローパスとして流し、制御に必要な高周波成分はコンデンサと抵抗による回路によって通過できるようにしていると考えます。
ですが、何をカットしたかったのでしょうか? 回路のシミュレーションをすれば良いのでしょうが自分には解りません。 分解調査を実施していらっしゃったあるサイトによると、モータの逆起電力BEMFのデータをサウンドボックスに送るために、高周波成分を通過させるのだと解説されていますが・・・・・・・。
ともかくも、パルスON 時の急激な電流増大をカットしている のではないかと考えることにして、自分を納得させることにします。
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2021/6/18 作成