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鉄道模型実験室 No.198  テープLEDを使って4灯を点灯させる

 タイトルだけを見ると意味不明ですよね。 この様な実験を実施した理由は、「レーティッシュ鉄道 アレグラ号の室内灯工作」(2021/11/30)の工作に端を発します。 この報告では、その失敗の内容を詳しく説明していませんでした。 自分でも疑問な点がありましたので、実験を実施してその訳を納得することにしました。

 

■ 使用したテープLED

 今回使用してテープLEDは、2020/8/4に Amazonにて購入もので、Kaito Denshi ((海渡電子)製の「LEDテープライト 5m 300灯 12V 両端子 1チップ 薄型 非防水 単体 電球色」 です。 海外製の販売品は品名が長く、単語をズラズラと並べいるのが特徴ですね。 適切な名称は面倒なのでしょうか。 また、1チップと言うのは何を指しているのだろうか不明です。 

 

■ 1チップ状態と3連状態での特性を調べる

 肝心のチップLEDの情報がありません。 そこで、先回の工作で不要となっていたチップLEDを使って、その電流特性を調べてみることにしました。 最初に通電させるための配線を実施します。 まず、チップLEDの端部と通じているパターン部分の被覆をカッタナイフで削って被覆を剥がしました。 上右の写真参照。 多少被覆が残っていますがハンダの熱で剥がれるので心配ありません。 ここにポリウレタン線をハンダ付けして、電流を流して測定しました。

 電源は、愛用している安定化電源を使用しています。 チップLEDにダイレクトに電圧を掛けると、LEDを焼いてしまう危険がありますので、510Ωの抵抗を挟んで電圧を掛けて行きます。 この時、回路に流れる電流をテスターで測定すると共に、テープLEDの両端も電圧もテスターで読み取って行きます。

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 LED単品の特性測定が済むと、今度はテープASSYでの特性を測定しました。 このテープLEDは、3個のチップLEDと中間部に150Ωのチップ抵抗が直列に配置されている3連状態がセットになっており、このセットがいくつもつながっている状態なのです。

 従って、3連状態のセット毎に切断して使用する事ができますが、Nゲージの鉄道模型の場合は、丁度2セット分で 100mm の長さになり、客車や電車の室内灯にピッタリの長さなのです。

 

 Bトレの場合は、長さが半分なので、この1セット分の長さに切断して使用しています。

 右の回路図の様に、3連状態がBトレ用で、3連×2の場合が通常のNゲージ用として使用しています。

 そこで、この3連状態で測定した状態が上右の写真です。

 この測定値をグラフにまとめたのが左のグラフです。 LED単品では、2.5volt あたりから電流が流れ始めて光始めます。 その後は急激に電流が流れて電圧を掛け過ぎますと簡単に焼き切れます。 このため、電流を制限する何らかの方法が必須なのです。

 3連状態では、3個のLEDが直列に配置されているため、2.5×3 = 7.5 volt あたりから電流はやっと流れ始めます。 そして、150Ωの抵抗があるため、むやみに電流が流れ過ぎる事はありません。 定格の 12volt では、18mA 流れています。

 この、18mA は一つのセットでの値ですから、幾つかのセットが並列接続されているテープLED状態で使用する場合は、そのセット数に応じて倍増して行きます。

 右上の回路図に示したR1の抵抗は、この18mA の電流では明るすぎる場合に、電流を抑えるための電流制限抵抗なのです。 自分の今までの経験では、Nゲージの場合は3連×2の状態で使用して R1 = 1K Ωとし、Bトレの場合は、 3連状態ですので、半分の電流になるように R1 = 1.8K Ωを使用しています。 

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  ・・・・・・・・・・・何故、2KΩでなくて 1.8K Ωなのか?
         自分のストック品が無かったという単純な理由です・・・・・・・・・。

 

 次に、右上の回路図の右端に示したように電流制限抵抗による電圧降下量を E1 とし、テープLED による電圧降下量を E2 とすると、

       E1 + E2 = 12volt

です。 この電圧降下 E1の状態をグラフに示すと、右のグラフの緑の線で示すことができます。 ここでは R1 = 1KΩの場合を引いてみました。

 ただし、このグラフではLEDセットは一つだけの場合です。 この3連LEDの特性曲線と抵抗直線の交わる交点が、この場合の電圧と電流の状態を示しているのです。

 LEDと抵抗を流れる電流は、直線的につながっているので、全て同じ電流が流れていますし、電圧関係は上記の式が、この交点上だけで成立しているのです。 そして、右のグラフから読み取れるように、3mA の電流が流れている事が分かります。

 LEDのような非線形特性の場合には、このようなグラフと線図を使って解析すると、ビジュアルで理解出来ますので、ややこしい式を使う必要は無いのです。

 

● 必要な電流制限抵抗を求める

 このグラフを使うと、制限しようとする電流値から、必要な抵抗値を求めることが出来ます。 制限しようとする電流値 Io を決めたら、LEDの特性値からその時の電圧を求め、電源電圧からの電圧降下量 E1を求めます。 すると、オームの法則より必要な抵抗値 R1 は、R1 = 電圧降下量 E1/電流値 Io で計算できます。 ただし、電流値は mA の単位ですから、千分の一にすることを忘れずに。

 

■ 失敗例の解析

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 さて、ここから本論の失敗例の解析に入ります。 最初に示した報告書のように、取付け上の関係でLED を4灯にする必要がありました。 そこで、3連×2の最後の2個を取外し、少なくなったLEDの代わりとして 1KΩの抵抗 R2 を追加して対応しました。 左の回路図のLED4灯(イ)の状態です。

 この状態で点灯テストを実施し、均等に点灯したので、しめしめとばかりに工作を続けました。 この時にR1の抵抗( 1KΩ)を忘れていたのです。

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 しかし、工作を進めて車両に取り付けた状態で点灯テストを実施すると、第4灯目のLEDしか点灯しなかったのです。 他の3灯はダンマリなのです。

     なんで?

 これが今回の問題なのです。 何故、第4灯しか点灯しないのか・・・・・・・。

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 その理由は、右のグラフをから読み解く事が出来ます。 4灯目のLEDは単体ですのでA のグラフで表されます。 そして、R2 = 1KΩ の抵抗を直列に配置していますので、特性はD で表されます。

 この時、制限抵抗 R1 = 1KΩの直線Cとの交点ロの状態が、第4灯を流れる電流を示しており、その時の電圧値が Vd (≒7.3volt)であることを示しています。

 一方、この回路には3連LEDも接続されています。 そして、こちらの回路でも同じ電圧がかかっていますが、このVd の電圧ではLEDが邪魔して電流が流れないのです。 即ち、 3連 LEDは点灯しないのです。

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 このグラフを見ていると、解決策も示唆しています。 交点のロとイが重なるように抵抗R1とR2 を設定すれば、第4灯も他のLEDと同じ明るさで点灯するようになる事が分かります。

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■ 対応策の是非

 充分に解析せずに対応した対策が、上記の回路図に示した LED4灯(ロ)案でした。 上流のR1の抵抗を共有したことが問題の発端であることに気が付き、独立した二つの回路にしたのです。 そして、R1 = 1KΩ、R2 = 2KΩ として工作を進めました。

 …‥‥‥‥ 工作はチップ抵抗を使用したので2KΩが使えました。

 修正した回路で点灯テストを実施すると綺麗に点灯したので合格としましたが、今回、検証していると、いろいろなミスが見つかっています。

 まず、右のグラフに示すように、第4灯と他のLEDを流れている電流が違っているのですが、これは明るさが異なっている筈と思われます。

   3mAと4.5mAと、1.5mAも違っている・・・・・・・。 第4灯の方が明るいはずである。

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 そして、3連LEDの場合の電流制限抵抗は、Bトレの場合のように 1.8KΩ、否ここではチップ抵抗が使えたので 2KΩにすべきだったはずののですが・・・・・・・・・・・。 これは、非動力の先頭車や中間車が、3連LED×2+1KΩの設定で工作しているので、こちらの明るさと合わないはずなのです。

 でも、LEDは、電流値と明るさは比例しないとの情報もあるので、この程度の違いは、明るさとして殆んどわからないようです。 言い訳なのか、いい加減なのか・・・・・・!

 

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■ お遊び

 ここからは少し遊んでみたいと思います。

● 新たに電流制限抵抗を追加した場合の特性計算

 最初に求めた特性値のデータがあれば、電流制限抵抗を新たに追加した場合の特性を簡単に計算出来る事に気が付きました。 それは、電流は同じで、電圧降下量がプラスされるという原理を利用します。

 測定データの電圧値に対して、測定された電流値と設定した抵抗値から電圧降下量をEXCELで計算し、電圧値に加算すれば、求める特性の電圧値が求められます。 その結果をグラフに示せば、電流制限抵抗付の場合のLED特性が求められます。

 こうして計算された値と、実際の測定値を比べたデータを右のグラフに示します。 測定誤差などを勘案して、計算値と測定値がピッタリであること、即ちこの計算方法で良い事が分かります。

● 最適な抵抗の組合せは?

 前記の失敗時の場合、R1とR2 の最適な抵抗値は? の疑問に対しての回答を検討してみましょう。

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 左のグラフは、この検討のために作成したイラストですが、制限抵抗が1KΩのままです。(間違いに気が付く前に作成したのです・・・・・・・)

 まず、1KΩの制限抵抗付の3連LEDの明るさを基準にします。 即ち、その時(点イ)の電流値 Io と電圧 Vb を求め、この電流値のLED単品時の電圧 Va を点ハより求めます。

 そして、ふたつの回路の電流と電圧を同じにすると、第4灯と他のLEDの明るさが揃うはずです。 この様にするために、制限抵抗 R2 を R2 = (Vb-Va)/Io より求めれば良いはずです。

 こうすると、二つの回路はイ点で重なるのですが、電流はそれぞれの回路に同じだけ流れるので、その上流である R1 では2倍の電流を流す必要があります。 この点ニと電源電圧の関係より、 R1 の抵抗値を計算すれば良い事になります。

 計算結果: Vb = 8.9volt  Io = 3mA  Va = 2.8volt より、
             R2 = (8.9-2.8)/0.003 = 2.0 KΩ
             R1 = (12.0-8.9)/(0.003*2) = 517Ω

となります。

 実際に、 R2 の抵抗を 1KΩでなくて 2KΩで工作していたら、この様な問題を起こさなかったのではないかと思われます。 でも、失敗したことによって、改めて勉強になりました。

● 使用時の状態の把握

 実際に使用した時の状態を確認しておきましょう。 実験は、テープLEDの端子に抵抗を取り付けて測定しました。

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 測定結果を右に示します。 何故だか510Ωの抵抗の場合も測定しています。

 電流制限抵抗を 1KΩにし、供給電圧が12volt とすると、3.4mA の電流が流れています。

 そして、Bトレなどで使用した3連LEDが1セットの場合は、上記の計算値と実測値の比較で用いてグラフに示していますが、この場合は、1.8mAです。 LED の数が半分ですので、全体に流れる電流も半分となっています。

 

■ 考察

 簡単な測定や実験で、楽しむことができました。 頭の体操にもなりました。 しかし、更なる課題も湧いてきましたね。 例えば、

  1. LEDの電流と明るさの関係は? 
  2. どうやって測るの? 
  3. 照度と輝度のどちらが良いのか?
  4. 反射の具合によって違って見えるので、そんな事調べても意味が無いのでは?
  5. ダイオードブリッジで電圧降下しているので、その影響は?
  6. LED特性の近似式は求められないのか?

等々ですが、如何でしょうか。

 

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 2021/12/10 作成