実車プロフィール
EF65-1000は、EF65形の高速客貨両用タイプ(PF形)として昭和44年(1969)に登場し、ブルートレインから一般貨物列車まで、全国の直流平坦線電化区間で活躍する日本を代表する機関車です。
1103号機は、寝台特急牽引用として東京機関区に配属された。
模型プロフィール
メーカー : KATO
商品名 : EF65 1000 後期形
品番: 3061-1
車両番号: EF65 1103
発売日 : 2011年 5月 31日
入手日 : 2011年 7月 8 日 新品購入
定価 : \ 7,350.-
● 東海道・山陽本線を走破し、昭和50年代、空前の「ブルトレブーム」を巻き起こしたブルートレイン牽引機、東京機関区の高速客貨両用のEF65 1000 後期形を完全フルリニューアルで製品化。
● フライホイール・サスペンション機構搭載動力採用。
● 運転台を表現(操作盤・イス・室内シースルー化)
● ヘッドライト点灯
● PS22パンタグラフを採用
● カプラーの交換: アーノルドカプラーからカトーカプラーNに交換する。
● このEF65(3002-2 )は、KATOの電気機関車として、5代目モデルと思われる。 フライホイール・サスペンション機構搭載動力と銘打った新しいタイプの機構を採用している。
駆動系の機構
このシリーズの特徴は、モータの小型化、集電構造の変更、ウォームギヤ部と動力台車の構造の変更などであろう。
集電構造は「サスペンション機構」と宣伝している台車のローリング支持を兼ねており、フレームの底部両端に設けられた燐青銅の板ばねで、台車の集電子と接触させている。 ばねは柔らかく、車両のローリングにも良く対応している。これは、カント付き線路の出現に合わせて付与した機能ではないかと推察する。
次に注目するのは、台車のウォームギヤ構造である。 モータと連結するジョイントの接続点を、台車の旋回回転の中心に持ってきており、このためにウォームギヤ部は回転中心の外側に飛び出している。 先回までのモデルでは、ウォームギヤの噛み合いガタで、旋回回転を許容してきたが、このモデルではジョイントの接続点が旋回中心となっており、機構的には合理的である。 鉄コレ用の動力など、TOMIX等で既に採用されている構成でもある。
この台車の構造変更によって、動輪とウォームギヤ間が離れてしまい、ウォームホイールと動輪のギヤ間は、4個のアイドラギヤを並べている。 これらのギヤは、m = 0.3 で、動輪のギヤは、Z = 17 である。 このため、モータから動輪までの減速ギヤ比は、i = 17.0 であった。
フレームは、集電構造の変更に伴い、再び左右分割形となり、電気的な導電体の機能は持たせている。 モータへの通電部品も改良されてている。
この1103号機で新しく採用されたモータは、小型していると共に、強力な磁石の使用やスキューの設定などで、トルクの確保と電流の低減を実施している様子である。
このモータの新旧比較について、「KATO EF65の新旧比較」に記載している。
動力特性
【2014年12月】 改良した動力特性測定装置を使用して性能特性を再測定する。 この改良された測定装置では、従来の項目に加えて、走行中のモータ端子電圧とモータ回転数の測定を可能にしている。 2014/12/15 追記
******** 牽引力特性 *********
速度特性:
平坦路にて走行させ車速と電圧、および電流と電圧を測定し、走行性能を計測する。
測定日: 2014年12月14日
測定車の測定ユニット:モデル3
スケッチ: New_Keninryoku_test5
走行は安定した走りであったが、データを見ると、少しバラツイテいる。 新しいモデルなので、もう少しビシットしたデータを期待したのであったが・・・・・、やや不満の残るデータである。 また、5ボルトから6ボルトにかけて少し変化しているのも気になる点である。
電圧降下量については、およそ 0.5 ボルト前後で安定している様子である。 また、電圧値あるいは電流値にとは影響がなさそうである。
モータ回転数については、単品無負荷時のデータが無いので比較出来ていないが、端子電圧に対してモータ回転数がバラツイテいるのは摩擦抵抗がバラツイテいる影響だろうか。 最初の車速と電圧のグラフとモータ回転数とモータ端子電圧のグラフが殆ど同じパターンなので、このモデルの走行特性のバラツキは、動力機構のメカ的な抵抗の “ふらつき” ではないかと推定するするのであるが・・・・・・?
このモータ回転数から計算したスリップ率は1%前後と納得に行く値を示している。
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牽引力特性:
次に牽引力特性を測定した。
測定日: 2014年12月14日
測定車の測定ユニット:モデル3
スケッチ: New_Keninryoku_test5
各グラフを簡単に説明しておこう。
まず、牽引力と車速グラフは従来の表示方法に加えて、モータ回転数から計算したスリップ率ゼロの場合の車速度を重ねてプロットしてみた。 M と表示したプロット点である。 牽引力と電流のグラフは従来通りである。
電圧降下のグラフは、レールに供給する電圧とモータ端子電圧の差を計算したもので、車輪とレール、車輪の軸受部、台車の集電子と車体との間、の接触抵抗による電圧降下量である。 当然、プラス側とマイナス側の合計値である。
この電圧降下量を電流との関係と牽引力の関係とでグラフ化している。
次に、モータの規定回転数をカウント完了する時間 tp と速度計測ゲートを通過する時間 tt との時間比率 tp/tt をグラフ化して、車速とモータ回転数の比率を見ている。 この比率が変化する事はとりもなおさず車輪が滑っている事を示している。 そしてこの値をもとにスリップ率を計算してグラフ化している。
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まず、牽引力と車速グラフより、牽引力側のスリップ領域では、スリップ限界のかなり前から車輪が滑り始めているのが分かる。 その様子はスリップ率のグラフでも明確に表示する事が出来るようになった。 注目していた制動領域での振る舞いは、いまいちはっきりしないが、今後のデータの蓄積を待つことにしよう。
また、この牽引力のグラフは特性がふらふらしており、データが大きくバラツイテいる。
牽引力と電流値のグラフにおいてもバラツイテいるので、摩擦損失などの力関係の要因が不安定である事を示しているのではないだろうか。
さらに、電圧降下も、その変化量が意外と大きいことに注目している。 電流との関係では何かの傾向が出るかと期待したが、団子状態で良く分からない。 他の要因が強そうである。
そこで牽引力との関係を見てみると、傘形のパターンに見える。 これだけ大きく変化すると、モータの回転数、即ち車速にも影響が出てくるので、牽引力と車速のグラフにも表れてくるのではないだろうか。
このモデルでは、台車の保持機構と駆動機構が大きく変更されているので、その影響が出ているのかも知れない。 今後注目しているポイントにしておこう。
一方、tp/tt のグラフは、ピタリと一致した安定的なグラフをしめしており、その結果、スリップ率のグラフも綺麗なパターンを示している。
これは、モータ回転数が安定して計測出来ている事を示していると判断している。
まとめ:
このEF65-1103号機は、台車の保持機構と駆動機構が変更された新しいモデルであるためか、動力性能に少し安定性が少し欠けているようにも思われる。
しかし、低速時の走行は安定した走りを見せており、静かな走りはさすがKATOの技術である。
( 以下の内容は、 2011.11.22 追加修正時の記述である。 )
速度特性:
動力車の速度特性を測定する。
車速・電圧特性に於いては従来の EF65より少し遅いようであるが、大きな違いは見られない。 使い勝手は変わらない様である。
スケールスピード 80Km/h で走らせるには、およそ 4 Volt 近辺の電圧で充分である。
電流・電圧特性を見てみると、 EF65-1103 の新動力は消費電流がぐっと小さくなっている。 ちなみに、取扱い説明書での記述では、“消費電流 DC12V時 : 0.36A” と記載されており、カシカマの時の様に、低消費電流の記述が無い。 編集ミスか、それとも自信が無かったのか。 せっかくの技術陣の努力が報われない様な気がする。
********** 追加測定 *************
改良した傾斜台で再測定を実施した。 その結果は、ほとんど同じと言えよう。
牽引力特性:
動力車の牽引力特性を測定する。電圧は 4.0 Volt で測定した。 消費電流が非常に少ない。
粘着領域での牽引力は、25グラム前後であり、一般的な値であろう。 牽引する客車など、より改良されて、その摩擦抵抗は少なくなってきており、通常時の牽引力としては充分な値と判断されているものと思う。 性能の重点は、低速走行時の滑らかな走行性などが重視されて来ているのではないか。
新型の1103号機では、制動領域でのS字特性の問題も無く、低電流ですっきりとして特性を示しており、素姓の良さが伺える。 このとが、低速での滑らかな走行を保障しているのだろうか。
********** 追加測定 *************
改良した傾斜台で再測定を実施した。 制動領域での特性のパターンが先回の測定時より異なって来ている。
速度が増加しているのは何故だろうか。 自分としては先回のデータの方が都合が良いのに、このパターンはまた疑問のデータとなってしまった。
車輪が滑っているのだろうか?