名鉄空港特急2200系 2401 号車

実車プロフィール

 中部国際空港の空港線の開業に合わせて運行を開始した特急型車両である。 車体は軽量鋼製19m級車体で、スタイルは2000系のミュースカイと似ているが、2000系が青と白の塗装に対して、本系列では赤と白をベースにしている。 赤色は従来からの名鉄特急のブランドイメージを引き継いだ色とのこと。 また、特急型車両ではあるが愛称は付与されていない。

 

模型プロフィール

● メーカー:  Green Max
● 発売年 : 2009年4月発売
● 購入日 : 基本セット 2009年8月 新品購入
          増結セット 2013年6月 新品購入
● 定価  : 基本セット \18,900.-
         増結セット \8,400.-

   

諸元と分解調査

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● この2401 号車は、名鉄2200系基本4両編成セット (4093)の動力車である。

2モータ式のモデルでトラクションタイヤを装着している。

● 主要諸元

連結面間距離
132mm
車体全重量
64.9 グラム
台車中心間距離
83mm
動輪直径
φ D = 5.9
台車軸距離
14.0mm
ギャ比
i = 16

 

● 車体を外した状態を下に示す。 後から撮影したので、床板カバーにはモータの観察穴が開けられた状態である。

● シャシー部分を下から見た状態である。 トラクションタイヤが見える。

● 動力ユニットの床板カバーを外した状態である。 グリーンマックス製動力車の特徴である2つのモータが鎮座しているのが分かる。

 集電シューとモータ端子との接続状態を観察するために、モータを別々に取り付けてみた。 ワンタッチで接合出来るように工夫されている。

● 全部品の一覧を下に示す。

● シャシーの表と裏を下に示す。 白い床下カバーは接着剤で接着されていた。 こんな方法は始めた見る。

● 床板カバーの表と裏を下に示す。 DD-185 の刻印が見える。 裏側には、集電シューの絶縁などのために、複雑な形状が形成されていた。

● 集電シューとモータカバーを示す。 集電シューは、材料の無駄が多そうな形状である。 モータカバーには、DD180/185 の刻印があった。 品番と思われるが車種は不明。

● モータは、やや小さめの密閉されたカンモータで、軸にはφ3.6mm の真鍮棒が圧入されていた。 そしてその先端にモジュールが m = 0.4 のウォームが形成されていた。 二つのモータのロッド番号は、二つとも 4489C のマーキングがあるので、同じロッドと思われる。 2モータ式の最低条件である同じロットのモータを使用するセオリーは守られいるようである。 

● 次に動力台車を分解した状態を右上に示す。 構造的には、KATOの古いモデルと類似している。 1980年代の左右分割型のモデルである。 「KATOの動力機構の変遷 電気機関車編 その1」参照。 

 ウォーム軸には、外径φ3.6mm でモジュールが m = 0.4 の1条ネジが切ってあった。 これに噛合うウォームギヤは、歯数が Z = 16 で、歯数 Z = 12で m = 0.3 の小歯車が一体で形成されていた。この小歯車は、アイドラギヤを介して動輪の Z = 12 のギヤに噛合っていた。 小歯車と動輪ギヤの歯数が同じなので、減速ギヤ比はウォームギヤの歯数分となるので、i = 16 である。

 動輪の直径は、φ= 5.9mm であった。

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■ 2モータ方式について

 このモデルの最大の特徴は、動力機構が2モータ方式と言える。 しかし、二つのモータの同期が取れずにギクシャク走行が発生し、大トラブルになったことは知られています。 その原因は安易な設計ポリシーにあったと推定しています。 それは、下記の特許を見つけた時に、そう判断しました。

【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【公開番号】特開2005-318967(P2005-318967A)
【発明の名称】鉄道模型車両の動力ユニット
【出願人】【氏名又は名称】株式会社グリーンマックス

【課題】 鉄道模型車両の動力ユニットの信頼性を高め低コスト化を図る。

【解決手段】一対の台車の各々により支持される前記車輪に対してそれぞれ独立して駆動力を伝達する一対の前記モータを、前記床板の長手方向中心に対して対称的に設置したことを特徴とする鉄道模型車両の動力ユニット。

 部品構成を減らしてコスト低減と信頼性向上を図ったのですが、これが裏目に出たのです。 さるサイトで 「最近GMが実施した対策はダイカストをメッキしたことと、2モーターの軸をつないだ(ばらしてないので構造はよく分かりません)ことだそうです。2011/2/27」 との記述を見たのですが、2モーターの軸をつないだことは正解ですね。 そう考える根拠は、我が持論の「鉄道模型工学概論」での重連特性の記述を参照ください。

 

動力特性

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■ モータ単品状態での測定

 回転数のセンシングのために、白黒のマーキングをペイントする場所を探したが、モータのφ3.6mm の真鍮棒しか無かった。 しかしその場所は外から見ることが出来ないので、ここでも床板に観察窓を開けることにした。 そして、そこにセンサーを取り付けた。

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 この動力ユニットは二つのモータが組み込んであり、それぞれ独立に回転するので観察穴も二か所開ける必要があった。 幸いにセンサは2個作ってあったので、それぞれを取り付けて、モータ無負荷回転数測定用のシールドを使用して、二つのモータをそれぞれ測定した。

 二つのモータをそれぞれ、Front と Rear として測定した結果をしてに示す。

 幸いにも二つも速度特性はほとんど合致しているようである。 ここで、無負荷時の回転特性だけで判断しても本当に良いのかと心配されるかも知れないが、この特性だけで2モータの相性を判断できるのです。

 

 2モータ時の相性は重連時の場合と全く同じであり、駆動領域と制動領域が一致することがポイントなのです。 そしてそれを判断する材料がこの無負荷時の速度特性なのである。 モータに掛かる電圧が同じ時に、同じ回転数であること。 この条件を満たせば、お互いのモータが内部喧嘩をしない、即ち、引張やっこや押しやっこをしないのです。

 このとき、電流値も測定していたが、データを整理して時に間違いに気が付いた。 電流値は二つのモータ分の合計を測定しているのだ。 一方を取外して停止させるべきであった

 

■ 動力特性の測定

 有線式の動力特性測定装置を使用して動力特性を測定する。 この測定装置では、走行中のモータ端子電圧とモータ回転数の測定を可能にしている。

● 測定実施日: 2016/6/23 連結した重り車両: 106.2 グラム、摩擦抵抗 1.0 グラム。 尚、回転センサは一つしか接続出来なので Rear 用のみとする。 また、モータ端子電圧測定用はポリウレタン線に取り換えている。

1)速度特性:

 動力車の速度特性として、速度・電圧特性と電流・電圧特性を下に示す。

 今回も、モータの無負荷回転特性の測定データと比較のために、グラフ上にプロットした。 車両での走行時とモータ単品、 Rear 用のみしか測定していないが、それでも少しダウンしている。 消費電流については、単独でのモータを表示されるはずであったが、無負荷回転での測定ミスにより出来ないのである。 再実験が必要であるが面倒なのでパスする。

 電圧降下量がバラツイているが、構造的な不安定さのか、2モータのせいなのかは不明である。 これによって、車両速度のバラツキとモータ回転数のバラツキをおおきくなっていいる。 そして、スリップ率がこれだけバラバラしているのは珍しい。 こうなると、2モータが原因なのかどうかを調査するために、モータを1個にして、ワンモータ状態で測定したくなるのであるが・・・・・・・・・・。 面倒なのでヤメにしておきます。

2)牽引力特性

 スケール速度が100Km/h 前後になるような電圧値を設定して牽引力を測定してみた。

 単にモータを二つにしたからと言って牽引力が2倍になるわけではない。 スリップ領域での牽引力は動輪に掛かる荷重と摩擦係数で決まるので、この種のモデルでは、20グラム強のあ値は妥当な値と言えよう。 モータが一つでも達成で切る値である。 その違いは負荷がかかった場合の速度の落ち込みが少ないと言うだけである。 左上の最初のグラフでいえば、特性の傾きが立ってくると言うだけである。 体格の小さなモータであればその効果もあるが、この程度の体格のモータであれば一つでも充分なのである。 そして、特許で述べていた低コスト化は一般には疑問である。 おそらくモータメーカーの言う標準品を使うか、特注品を使うかの問題であったのだろう。

 次に注目するのは、牽引力と消費電流のグラフである。 二つのモータが干渉しあっている場合には、牽引力が小さい領域で消費電流がアップするはずである。 速度差が小さいので顕著には表れていないが、少しその傾向がみられる。 牽引力ゼロ付近で右側に膨らんでいるのだ。

 電圧降下量の傾向も珍しい V型の傾向を示している。 また、牽引力が小さい領域でスリップ率のバラツキも大きくなっているのも特徴だろうか。

 

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● 出力と効率

 上記の牽引力測定データを基にして、右に示す様に、出力と効率のグラフを追加する。 2016/11/28 追記

 

● 車体をブルブルさせる異常状態

 この牽引力特性を測定中に、車体をブルブルさせる異常状態が発生していた。 その様子を動画で紹介しよう。

 

 一番坂の急な直線部分は確実に登るのに、なぜか曲線部分になると停止したり、ブルブルするのである。  停止した場合には後ろからそっと押しているのであるが、二つのモータが何か悪さをしているのであろうか。 原因はよくわからないが何度も発生しているので再現性はありそうだ。

3)考察

 この動力ユニットは、幸いにも通常走行には異状ないようであった。 しかし、ほとんど走行させていないので注意して様子を見ていくことにしよう。