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鉄道模型調査室   KATOの動力機構の変遷 電気機関車編 その1

 

■ いきさつ

 先回、KATO製についてEF65の新旧比較を実施したが、これに刺激されて動力部の構造の変遷に興味を抱いた。 そこで、「Nゲージアーカイブス」や「鉄道模型考古学」を参考にすると共に、インターネットでも情報を整理して、KATO製の品番と発売年をまとめると共に、中古品を幾つか入手して実際に分解しながら、動力機構の構造を観察することにした。

 鉄道模型の歴史が浅い小生には、古い品番や発売時期、再生産情報などの情報は、これらの資料を参考にするしかないが、不確実な情報が多々あったため、正確とは言えないものの、それなりにまとめてみた。

      ⇒ KATO製電気機関車の発売履歴 (PDFファイル)

 この中で、手持ちの車両だけを発売年代順に並べてものを下のリストに示す。

 これらの車両を分解して観察した結果、このおよそ45年の間に、動力機構は4タイプに分類することが出来る様である。 そこで、これらの分類に合わせてその構造を見ていく事にしよう。

 なお、「Nゲージアーカイブス」や「鉄道模型考古学」では、何代目とかの表現があるが、それぞれのカウントの仕方が異なっており、混同しやすい。 ここでは元資料の記述を尊重しているが、資料が充分でないので混乱したままである。 あしからず。

 

第1期 上下分割型のモデル

 KATOの「Nゲージアーカイブス」によると、KATOが最初に電気機関車を発売したのは、1967年のEF70(品番 301) が最初との事である。 この時の動力機構が上下分割型のモデルであった。 この品番が 301のEF70 をオークションで探したが、2万円を超える落札者が居て、手も足も出なかった。 自分は、それ程のコレクション・マニアでないため、次のEF65 のモデルを観察することにした。


  

■ EF65 500番台
  EF70につづくカトーの電気機関車2作目に選ばれたのが1969年に発売されたEF65であった。  その後、何度も改良されて現在のモデルに引き継がれているEF65の原点と言えるモデルである。 自分が入手した車両(右の写真)は、その特徴から推定して、その中の初代製(1969年)と二代目製(1971年)の中間と判断している。 勿論「鉄道模型考古学」に記述を頼りに判断したものである。

 このモデルの特徴は、初代の動力ユニットの特徴であるダイカストフレームが上下に分割されたタイプである。 下側のフレームは薄くかつ左右に分割されており、上側のフレームとは紙製のプレートで絶縁されている。 4本の止めネジは、上側のフレームの穴を樹脂製のパイプで絶縁しながら、下側のフレームのネジ穴にネジ込まれる構造となっている。

 モータに圧入された平歯車は、ウォーム軸に圧入されている内歯車と噛み合い、減速されると共に、モータ軸とウォーム軸の高さを変更している。 これは、EF65 70 (品番3002-2) と同じ構成である。 モータは角型で、ブラシケースもネジ式の様子で、旧型のモータと思われる。

 また、台車枠とギヤボックスは、ネジ止め方式であるのもこのモデルの特徴である。 さらに、動輪はトラクションタイヤを履いていないため、車両重量が135.4 グラムもあるものの、車両重量に比べて牽引力は 20gf 程度でと小さい。 また、負荷による速度低下も大きいのは、モータにパワーが無いためと思われる。 そして、動輪の軸受はピボット軸受では無いので、摩擦抵抗が大きい。( 詳細はマイコレクションへ)

 

第2期 左右分割型のモデル

 EF70が登場してからおよそ10年後に、上下分割型から左右分割型に改良された。 この左右分割型は、「12m級のELをつくる」でおなじみの構造です。 EH10 専用の構造と思っていましたが、KATO製電気機関車の主要構造だったのだと初めて知りました。


 ■ EF70 四代目

 品番が 301 の EF70 をオークションで入手し、現物を見てびっくりしました。 動力機構が違っている! 初期製品の上下分割型と思っていたのに、みなれた左右分割型でした。 改めて鉄道模型考古学をよく読んでみると、ナンバーがボディーと一体成型で非選択、屋根は黒色の三代目ながら、動力は最終品(五代目)で採用された左右分割式と同じ構成であるので、過渡期の四代目の製品と推定する。

 マイナーチェンジとは言え、大幅な設計変更が実施されているので、品番は設計変更によるサフィックス付きか、新品番を付与すべきと思うが、このころの関水さんの品番管理は充分に確立されていなかったのであろう。

   ・品番 : 301
   ・車両番号 : EF70 27
   ・発売日 :  1979年

  ダイカスト製の左右分割式車体フレーム、ダイカスト製の台車フレーム、台車マウントのスカートとカプラーなどの特徴あり。フレームが左右分割式のもので、フライホイール無し、モータ軸とウォーム軸の間に内歯車を使った減速歯車が挿入されているタイプである。 ウォームギヤが珍しく樹脂製である。

 モータは角ばったフレームの古いタイプのマグネットモータである。 ウォーム軸受けには、含油メタルの球形軸受が樹脂製のホルダに埋め込まれている。 タイヤにはトラクションタイヤを履いており、牽引力の改善につながっているようだ。

  ヘッドライトは点灯するも麦球方式である。


 ■ EF65 一般色

 1980年に、EF65 500 四代目(鉄道模型考古学による)が発売されたが、そのバリエーションとして一般型も発売された。

 構造は前記の EF70 27 と同じ様でる。 モータ軸とウォーム軸の間に内歯車を使った減速歯車が挿入されているタイプであり、ウォームギヤも樹脂製である。 よく見ると、モータが新しくなっている。 モータフレームの形状やブラシホルダなど形状が異なっており、コンデンサも新しく設置されている。 モータ仕様が変更されている可能性があると思われる。

 内歯車は m = 0.3 の Z=26、モータ軸側の歯車は Z = 16 で、減速比は i = 1.625 である。 目的はモータ軸とウォーム軸をずらせるために採用したのではないだろうか。動輪につながるウォーム軸は下にさげたいし、一方のモータ軸はその格納位置を確保するため、上の方に持って来たいとの意図から採用されたものと推定する。
  ウォーム軸は、フレームに保持された両側の軸受けで軸支されており、台車フレームに保持されたホイールギヤとかみ合っている。 そして、アイドルギヤを介して動輪の歯車に伝達されている。 動輪の直径はφ= 7.6 mm 動輪の歯車の歯数は m = 0.4、Z = 11であるため、モータから動輪までの減速ギヤ比は、i = 17.875 であった。 車速 V とモータ回転数 Nm の比は、 V/Nm = πD/i = 1.34 である。

 車体重量は 132.9 グラムもあり、牽引力は約 30 グラム以上を有している。 駆動系の摩擦抵抗は 10gf 程度で大きい部類に入るが、動輪の支持方法によるものと推察する。 ピポット軸受方式に比べて抵抗が大きいようだ。