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鉄道模型調査室   KATOの動力機構の変遷 電気機関車編 その2

 

 ここでは、KATOの動力機構の変遷 電気機関車編 の第3期を説明する。

 

第3期 フライホイール型のモデル

  

 KATOの電気機関車の動力は、EF70が登場してからおよそ20年後に、左右分割型からフライホイール型に進化した。 これによって、走行性能の改善がうたわれ、スムースな低速走行性能がセールスポイントとされた。


 ■ EF81 一般色

  KATO製電気機関車の新シリーズの第1弾となったモデルで、フライホイール付き動力やボディマウントスカートを始めて採用するなどの特徴を有する。

 フライホイール搭載の第1弾モデルで、モータ、フライホイール、ジョイント、ウォーム軸が一直線に配置されている。 この構造と部品は、その後の電気機関車の動力ユニットの標準となった。 そして、品番 3010 を刻印された構成部品は、多くのモデルに水平展開されている。 LEDライトユニットや、緑色のジョイント・カプラーなどは、他の機種でも多く目にする事が出来る。

 ホイールギヤは、ウォームと噛み合う歯が、m = 0.4、Z = 19、アイドルギヤと噛み合う歯は、m = 0.3、Z = 17 の2段になっている。 動輪の直径はφ= 7.4 mm 動輪の歯車は m = 0.3、Z = 17であるため、モータから動輪までの減速ギヤ比は、i = 19.0 であった。  車速 V とモータ回転数 Nm の比は、 V/Nm = πD/i = 1.22 であり、EF65 70 号機とは少し小さくなっている。

 集電子を使った集電構造の採用により、一体的に作られダイカストフレームは電気的な導電体の機能を持たせていない。

 緑色のジョイント・カプラーを使用した構成を「フライホイール標準型」と呼ぶことにするが、車体長さの短い車種では、この部分を色々工夫して部品の共通化を図っている。

 


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 ■ EF65  JR貨物色

 「Nゲージアーカイブ」によると、この品番が3017のシリーズは、EF65の3代目モデルとのこと。 EF81が発売されて3年遅れで、伝統のEF65シリーズに初めてフライホイールが搭載されたモデルである。

  カトーの方針として、伝統のEF65シリーズでの新機構の採用は、常に2番手とし、少し様子を見てから採用しているように見える。 それだけEF65シリーズに人気がある証拠ではないかと思われる。

 ・品番: 3017-3
 ・車両番号: EF65 511
 ・ 発売日 : 1992年
 フライホイール搭載モデルであるが、先行したEF81のフライホイール型標準タイプとは少し異なる構造となっている。 これは、車体の長さが、他の電気機関車シリーズより短いため、モータとウォーム軸を連結するジョイント部を短くすることによって、モータなどの共通化を図ったものと推察する。

 変更している部分は、ジョイント部の形状変更である。 ジョイントのモータ側は6角形を形成し、フライホイールの6角穴に挿入されて回転を伝達する。 他端はお椀形になっており、スリットも形成されている。 そして、ウォームに圧入された球形の樹脂に角が出ており、スリットと噛み合って回転を伝達する。 ウォーム軸の軸受けは樹脂製で、含油軸受けは使用していない。

 このEFシリーズとしては、下に示す EF65 1124号機 ( 3035-1 )と全く同じ構造である。 この二つのモデルの間の10年間では、動力機構での改良は無いようである。

  そして、運転台のシースルー化や、クイックヘッドマークの採用は、この時点ではまだ採用されていない。 


 ■ EF65 1000 一般色

 「Nゲージアーカイブ」によると、 KATOの電気機関車として、このEF65 は、1000 番台の4代目モデルと思われる。 

 ホイールギヤは、ウォームと噛み合う歯が、m = 0.4、Z = 19、アイドルギヤと噛み合う歯は、m = 0.3、Z = 17 の2段になっている。 動輪の直径はφ= 7.4 mm 動輪の歯車は m = 0.3、Z = 17であるため、モータから動輪までの減速ギヤ比は、i = 19.0 であった。 即ち、1989年に発売された EF81 から諸元が全く変更されていないと言う事である。

 ただし、運転台のシースルー化や、クイックヘッドマークは採用済みであり、細かな改良は進められていたようである。 これらの改造はフレームの重量を減らし牽引力の低下をもたらしている様であるが、 ほとんど影響無いと思われる。

 


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  ■ ED75 一般形

 ED系の製品化は、1981年に左右分割型の動力機構で発売されてからおよそ20年後に、フライホイール搭載型として1999年に発売されたのが、このモデルである。

  ・品番 : 3028
  ・車両番号 : ED75 1001
  ・発売日 :  1999年

 ED系は車体長さが一段と短いため、モータとウォーム軸を連結するジョイント部品を廃止すると共に、フライホイールを少し削って対応している。 フライホイール端面の1C面取りも苦心の一端が伺える。

 そして、運転台のシースルー化や、クイックヘッドマークも時代の流れとして採用されている。

 ライトユニットは、品番が 3028G として新設されているが、基板に記された品番は 3010 である。 基板は長年そのまま使用してきたようである。 LEDの足の長さを調整しているのだろうか。

 

 


 ■ EF510-1

 フライホイール型の終期に発売されたモデルで、緑色のジョイント・カプラーを使用した構成により、フライホイール標準型に分類している。 しかし、KATOナックルカプラーを日本形として初めて標準搭載したり、目に見えないあちこちに改善の手が入っている様で、意欲的なモデルと思われる。 しかし、4年後の2010年には、新しい構造の新サスペンション型 EF510 が発売されている。

 今までのモデルから改善されている部分として、まず、ライトユニットのチップLED化である。 次に、ウォーム軸の軸受けがダイカストフレームに直接はめ込むのでは無くて、樹脂製の枠を介して固定するように変更されている。 当初はその事に気づかず今までどうりの手順で分解・組付けをしようとしたが、うまく組付けられなかった。 台車を組み付け後、板バネを組付ける必要がある。 この板バネも変更されていた。

 動力部の構造は、従来のフライホイール搭載動力ユニットであるが、板バネの使い方がサスペンション機構と呼ばれている考え方に基ずいて設計変更されている。今までは板バネの下に設置されていたプラ製のガイドが、板バネの上に設置され、板バネの前後で規制するようになっている。 即ち、片端支持から両端支持に変わっている。そして、台車を支える支持体の先端が接触する位置を、車体の後方にずらしている。この様にすることによる効果は、次のモデルで採用されたサスペンション機構の設計思想によるものである。

 下の左側の写真は板バネを取り付けた状態で、右側の写真はプラ製のガイドを組付けた状態である。 そして、台車を組付けようとしたがうまくはめ込めなかった。

   

台車とウォーム軸の軸受枠とがはめ込められないのである。 まず、台車とウォーム軸の軸受枠とをはめ込んだ状態でフレームに組み付け、その後、板バネやプラ製のガイドを組付ける手順が正解なのである。

 その他に、運転席のシースルーの構造など、変更されている様である。