500系新幹線「のぞみ」 516-3号車

実車プロフィール

 JR西日本が、航空機に対する競争力強化の一環として、より一層の高速化を目指して開発した。 車体強度・台車強度・力行性能などすべて320km/h対応として設計・計画され、1996年1月から1998年12月にかけ、16両編成9本合計144両が製造された。 山陽新幹線と東海道新幹線での「のぞみ」運用を中心として運転される。

 その後、700系やN700系に置き換えられた東海道新幹線を引退後、山陽新幹線で「こだま」編成としてうんこうされている。 カワセミのくちばしを参考にした言われる先頭形状は今でも人気である。

模型プロフィール

● メーカー: KATO
● 商品名:  500系新幹線「のぞみ」 4両基本セット
● セット品番: 10-510
● 発売年 : 2007年7月 リニューアル発売
● 購入日 : 2007年10月 新品購入

   

諸元と分解調査

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● この 516-3号車は、KATOの500系新幹線「のぞみ」シリーズの中で、10号車を構成し、この編成での動力車を構成している。

各車両は専用のKATOダイヤフラムカプラーで連結される。

● 主要諸元

台車中心間距離
109mm
台車軸距離
16mm
動輪直径 φ D = 5.5
車体重量
86.2 グラム
ギャ比
i = 12
   

● 車体を外した状態を下左に示す。 動力ユニットには新幹線の床下を表現するための、床下カバーが設けられている。 その床下カバーと動力ユニットの状態を下に示す。

● 動力台車とフレーム部材の様子を下に示す。 モータの回転数を検知するには、モータ軸に挿入されているカプラーの外周にマーキングするしか無いようである。 トラクションタイヤが内側の動輪に装着されている。

● 全部品の分解状態を下に示す。

● 車体の表側と裏側を示す。 白色室内灯セット(11-209)を取り付けている。

● 動力ユニットの上部に装着されている床カバーは、モータと集電シューの保持と共に、フレームへの固定のための形状が施されちる。 床カバーの表裏を下に示す。

● フレームの表裏を下に示す。 台車が入る部分には、分解当初は気が付かなかったが、フレームと同色の樹脂部材が嵌め込まれており、その天井側に丸いへこみがあって、ここが台車の回転を規制している。 すなわち台車の回転軸となっている。 さらに側面には台車の脱落防止の引っ掛ける部分が形成されている。

● 床下カバーの表裏を下に示す。 このカバーの両端には、このモデル専用のダイアフラムカプラーを止めるピンが形成されている。 このピンはカバーと一体で形成されているが、チョットした取り扱いによって、すぐに破断してしまうため、真鍮線を圧入して補修している。 4ヶ所中の3ヶ所もである!

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● モータは、外径が 14mm で2面幅が9.5mm のKATOの見慣れたモータである。 マグネット部のマーキングは青色で、反対側は白色であった。 軸のカップリング部には、白色のペイントマーカーでマーキングを実施した。 一回転で2個のパルスが発生するはずである。

● 動力台車を分解して、動力系の諸元を調査した。

 下左の写真に示すように、台車の上部の丸い部分が回転軸になっている。 また、下側の部材を外すと、ギヤ部とウォーム軸が分解出来る。

 ウォームは、外径がφ4.0 のモジュールが m = 0.3 右ネジである。 ウォームホイールは歯数が Z = 13 で、小歯車は無い。 従って、ウォームホイールの回転は、歯数 Z = 13 のアイドラギアを介して、動輪の Z = 12 のギヤに伝達される。 即ち、ギヤによる途中の減増速が無いので、ウォーム軸が一回転すると、ウォームホイールの歯車がひと歯進むが、動輪の歯車も同じく、ひと歯進むことになる。 即ち、減速ギヤ比 i = 12 となる。

 動輪の直径は、φ= 5.5 mm であった。

● 上右に専用のKATOダイヤフラムカプラーを示す。 連結部の幌を表現している。

動力特性

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■ モータ単品状態での測定

 先の実験でモータ回転の計測装置の問題が解決したのでこのモデルで測定を実施した。 センサーユニットを取り付け方法は、「電車形動力車の動力特性の測定を始める」の方法と同じである。

 

 その時の測定状態とデータを下に示す。

 今回も測定中にデータがドリフトしてしまった。 30回毎のグループに分けてプロットしてみた。 3回目からは、電流値も増え回転数が低下している。 原因は、モータの回転抵抗が増えたのか、あるいは温度が上昇したのだろうか。 

 

■ 動力特性の測定

 有線式の動力特性測定装置を使用して動力特性を測定する。 しかし、重り車両をどうやって連結させるか思案した。 この車両は専用のKATOダイヤフラムカプラーを使用しており、さらにカプラーを保持する部材、床下カバーもセンサユニットを取り付けているので装着出来ないのである。 そこで、下の写真に示すように、TOMIXのボディマウント式のTNカプラーを持ち出し、両面テープでフレームに張り付けた。 重り車両側は鉄コレのシャシーを使用していたのでポン付けて装着出来た。

● 測定実施日: 2016/7/3、 連結した重り車両: 126.4 グラム、摩擦抵抗 1.0 グラム。

1)速度特性:

 動力車の速度特性として、速度・電圧特性と電流・電圧特性を下に示す。

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 モータの回転数のデータには、上記のデータの中から3回目のデータをこちらのデータに追加してプロットした。 やはり回転数は少し落ちているが、駆動機構の摩擦抵抗による負荷のためと思われる。 ちなみに電流値のデータをモータ端子電圧を横軸にとって比較したグラフを右に示すが、電流値もアップしていることが明白である。 そして回転数が上がるにつれて抵抗も増えているのだ。

 速度と電圧のグラフを見ると、スケールスピードが 50Km/h 〜 400Km/h まで対応していることが分かり、さすが新幹線モデルである。 400Km/h 近くまで走らせるとさすがに速い!

 モータの形状から推察すると、313系のモハ 313-8 号車と同じモータと思われ、さらにギヤ比などの諸元も同じなので、同じような特性を示している。 E231系のモハ E231-601 号車では速度を落としているので、KATOの電車系では、新幹線系と通常電車系の二つの仕様があるようである。

 スリップ率のグラフは、プラス側に偏っていたので、ゼロ近辺になるように動輪直径をφ5.45mm に修正して表示させている。

 電圧降下量がやや大きい傾向がある。

2)牽引力特性

 スケール速度が100Km/h 〜300Km/h 程度になるような電圧値を設定して牽引力を測定してみた。

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 牽引力特性も313系のモハ 313-8 号車と同じ特性を示している。 しかし車体が長い分、車体の重量は20パーセント以上も重くなっているので粘着領域での牽引力はもう少しおおきくなってもよさそうである。 これは、摩擦係数のグラフにも表れている。 また、電圧降下量は多くなっているが、電流値は小さくなっている。 この辺はモデルによる違いなのか、製品ごとのバラツキなのかは判断できない。

 最初の牽引力特性のグラウを見ていると、このモデルは高速で走らせる方が安定した特性を示しているのは、偶然だろうか。 新幹線モデルとして、何かのチューニングでもしているとは思えないのである。 そして、2番目のグラフを見ると、負荷が 10 グラムを超えるあたりから動輪が滑り始めているのが分かる。 

 気になって、測定後に動輪を観察したところ、トラクションタイヤがゆるゆるであることに気が付いた。 ドライバの先で突くと簡単に回転するのである。 トラクションゴムの緊迫力がゼロなのだ。 そして溝の底面はピカピカであった。 これはトラクションゴムが車輪とは別に自由に回転していることになる。

 いつものように円形のテンプレートの穴に嵌め込んで直径を見ることにした。 右の写真。 鉛筆の芯の太さを0.5mm としているので、表示の直径よりも 0.5mm プラスして見る必要があるが、右側の 5.5mm の穴に入っているのが 装着されえていたトラクション・ゴムである。 5mm の穴 (実際の内径は5.5mm ) に入らなかったの、ゴムの外径が 5.5mm よりも大きかった言える。 

 一方で、左の4mm の穴は新品のトラクションタイヤで、表記がφ4×1mm (品番:Z01A4012 )の純正品である。 その写真に示すように、新旧のトラクションタイヤでは、これだけの差があることになり、使用していたタイヤは、これだけゴムが硬化、あるいはへたってしまって直径に差があることになる。 そしてその結果、ゴムがしっかりと車輪に吸い付いているかどうかの違いとなって表れて、そして牽引力の違いとなって表れてくるのだ。

 このため、トラクションゴムの効果が確実に発揮で出来なったのではないかと想像するが、ゴムを新品に取り換えてはおくが、再測定は面倒なので止めときます。 今回の測定はへたってしまったトラクションタイヤの例としておこう。 無責任!・・・・・・・・

 

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● 出力と効率

 上記の牽引力測定データを基にして、右に示す様に、出力と効率のグラフを追加する。 2016/11/28 追記