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中型蒸気機関車: C50-21 号機

 

実車プロフィール

 国産初の標準形旅客機関車である大正の名機 8620 を引き継いで、昭和の初めに作られた中形のテンダー式蒸気機関車である。 9600 などよりひと回り大きな動輪はスピード感があり、当初は準幹線の旅客列車などに活躍した。その後支線の旅客用機関車として使われ、晩年は入換用などで都市近郊にも配置されて、鉄道ファンに親しまれました。

 牽引する客車はオハ31系の旧型客車がマッチする。

模型プロフィール

メーカー : KATO
品名 : Nゲージ生誕50周年記念 C50形蒸気機関車
品番 : 2027
車両番号: C50-21
発売日 : 2016年4月22日
入手日 :2016年4月27日 新品
定価 : \20,000.-

 

  株式会社関水金属 は KATO Nゲージ生誕50周年記念として、C50形蒸気機関車を発表した。 わが国初の Nゲージとして、1965年に発売された C50 と同じ車種を取り上げ、さら にKATO の最新技術結集して世に送り出した。 C50 のモデルとしては3代目にあたるようである。

 パッケージは予告通りの豪華な装丁である。 また、ケースも特別仕様のデザインとなっていると思ったのですが、初代のパッケージのデザインを再現させたものとか。

 説明用の小冊子とDVDも付属しているが、さらに 2016年夏に発売予定の記念誌も無料で申し込みが出来るようになっていたので、早速申し込んだ。

 そして、鉄道模型雑誌「N 」の 2016 JUN.VOL.88 号には、特集が記載されていた。 それには、設計にあたって留意したこと、本製品の見どころ、再現するにあたって苦労したところ、初代製品との一番大きな違いなど、開発担当者のコメントが掲載されていたので参考になると思います。

 小生が一番注目したのは、動力機構の断面図である。 このような類の図面が公開されるのは初めてであり、動力機構の構成が一目で理解できる。 書店でこの雑誌を手にし、この一枚の絵を見たとたんにレジに走ってしまったのである。 この図は組付図らしく、大切な部分の隙間量などが記載されているようであるが、写真化した図面であるので拡大鏡で覗いてもボケてしまって判読不可能であった。 大切なノウハウなので当然ですね! とはいえ残念!

 

諸元と分解調査

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● このモデルは、先に発売されたC59型に続くKATOの新シリーズSLで、フライホイール付コアレスモーターを搭載しており、消費電流がきわめて少ない上に、滑らかな低速走行を実現している。 走行性能もさらに改善したとの事である。

● 前部ヘッドライト点灯。テンダーのライトはダミー。

● カプラーはアーノルドカプラーからナックルカプラーに交換。

● 主要諸元は次の通りである。

連結面間距離
mm
動輪直径 D = φ10.6 mm ギャ比 i = 34.27
車体全重量 48.1 gf エンジン部荷重 32.6 gf テンダー荷重 15.5 gf

● キャブ、ボイラなどを分解した動力部の状態を下に示す。 Assy部品は設定していないようなので分解は慎重に実施した。

● 動力ユニットの側面も一段と細密に仕上がっています。

● 底面の動輪押さえの状態を下に示す。 動輪を取り外すとシャシーの状態が観察できます。 ギヤが入っていない前方の部分は、しっかりとシースルーになっており、向こう側が丸見えです。 さらに、シャシーの側面もしっかりとレリーフが刻まれています。

● 左右のシャシーをマイナスドライバを使って慎重に分離しました。 前後にある2ヶ所の突起ピンでしっくりと結合されています。 ネジ止めは使用していません。

 3種類のギヤは、左側のフレームに設けられている軸で支持されています。 ダイキャストの打ちっぱなしのようですが、精度は確保されているようです。 さすが! このモデルは、ギヤの支持軸を左側のシャシーにしていますが、右のモデルもありますので、左にした理由が推定できません。 なぜだろうか? 

● 全部品を分解して並べてみました。

● 左右のシャシーの表側と裏側を下に示す。 上側に突起が伸びている側がキャブ側、すなわち後方ですし、細かいレリーフがあるのが表側です。 品番 2027 の刻印も見えます。 亜鉛の金型鋳造でしょうかね。 ベテランの金型設計者と製品開発設計者とのコラボで完成した芸術品を見ているようです。

● ウォームとモータを下に示す。 モータは見慣れたφ7×20mm のコアレスモータです。

● 動輪とロッド類は Sub-Assy 状態のままで分解できます。 そして、ギヤ駆動部は第3動輪だけであり、分割式のサイドロッドすから、分解組付けがとても簡単です。 一般敵には、この動輪周りの取り扱いに四苦八苦させられることが多いのですが、このモデルではまさにポン付けですね。

 ただ、取り扱をミスって下のようにクランクロッド部まで外れてしまいました。

● 駆動機構について、右のイラストに示す。 鉄道模型雑誌「N 」に記載された断面図をスキャナで取り込んで記載すればどれなりの説明が可能であるが、著作権の問題のために実行していません。

 また、イラストの右側が車両の前方となりますが、これは、ギヤ類の支持軸が左のシャシーの裏側に設置されているため、このような写真となっています。 以前には、写真の左右を反転させて、車両の前方を左側に持ってきたこともありましたが、今回は撮影した状態のままです。 従って、雑誌の断面図とは向きが反対になっています。

● ウォームはモジュール m = 0.3 の2条ねじで、ウォームは片持ち状態で軸支されている。 そして隙間のある部部分にはフライホイールが形成されている。

● モータとウォームだけを組み込んだ状態で、モータを回すと非常に静かに回転し、手に感じる振動はほんの僅かです。 C59よりも改良されているようです。

● モータから駆動された2条ねじのウォームは、歯数26枚のウォームギヤを回転させている。 このウォームギヤには、歯数11枚の小ギヤが一体で形成されており、歯数21枚と34枚の2個のアイドラギヤを介して、動輪軸に設けられた歯数29枚のギヤを駆動します。

● ギヤ駆動はこの第3動輪だけであり、、第1と第2はリンク駆動です。 ロッド類の結合部は、一般的にはこじれ防止のために長穴などの逃げが施されいますが、サイドロッドを分割式にしたこと、各部の寸法精度を向上させたこと(と推定する)、などで、ほとんどガタの無い組み合わせであり、第1動輪のサスペンション機構と相まって、スムースな動きを確保されているように思われます。 最近発売されたT社さんのC11とは、この辺が技術の差なのでしょうか。

● 動輪押さえを下に示す。 ネジを1本も使わずに、細かい細工と重要な機能を両立させています。

● テンダー車は、3軸構成ですが、構造はC56と同じですね。 おもりの部品もC56の品番を示す2020が刻印されていますので、同じ部品ですね。 さらに、真ん中の車軸は線路の凸凹にも対応するようにサスペンション機構になっていますので、集電性は向上していると思われます。

● ドローバーと照明基板を下にしめす。 照明基板の品番は2020ですので、C56と同じ部品ですね。

 

関連報告

 ◆ KATO製 C50-21号機の動力特性の解析 (2018/8/7)
「新解析法の修正」(2018/8/5)にて報告した方法で解析した結果を報告する。
 ◆ KATO製 C50-21号機の動力特性 (2018/7/16)
空転特性などを追加して、再度測定を実施した。

動力特性

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 有線式の動力特性測定装置を使用して動力特性を測定する。 この測定装置では、走行中のモータ端子電圧とモータ回転数の測定を可能にしている。 

● 測定日: 2016年5月26日、 測定時の重量:エンジン部 32.6グラム、テンダー車 15.5グラム  
 センサーを取り付けた時のC50-21号機の状態を下に示す。また、ボイラー部やキャビンなどを取り付けていないので、その代わりに水草の重りを取り付けて、重さを補正している。 光ゲートの通過のために先頭に遮蔽版を取り付けている。

 センサーを取り付けるために、ウォームとモータの上側に厚紙でトンネルを作り、その上にセンサーをセロテープで貼り付けている。

1)速度特性:

 動力車の速度特性として、速度・電圧特性と電流・電圧特性を下に示す。 最初に速報にて報告したデータを再掲載する。

 今回の測定のためには、フライホイール部へのマーキングが必要なため、分解調査に合わせて分解組み付けを実施している。 上のデータと下のデータを比較すると分解前と後の特性変化を比較することが出来る。 はたして元通りの状態に復帰させることが出来るであろうか?

 低速での走りは少し悪化したように感じられたが、電流値は電圧の高い領域で5〜10mA も低下していた。 注油の効果かあたりが付いたのか? また、先回測定したC59よりも電流は高く、かつモータ回転数は低めである。 これは、C59よりも回転抵抗が不利になっているためと推定する。

  

 電圧降下量も大きく変化していますが、C59と同じような傾向ですね。 集電機能は不安定であることを意味しているのかなぁー----・・・・・・・・?

 今回は、スリップ率のバラツキが大きかった。 測定中に気が付いたが原因がわからずじまいであった。 データを整理していたとき、右のようなグラフを描いてみてやっと気が付いた。 以前の報告「使いながらの小改善」で問題となった現象と同じではないかと推定する。 

 このモータパルス数は、動輪のスリップをゼロとした場合、モータは白黒マークにより1回転当たり2回のパルスが発生し、光ゲート間の距離は108mm であるので、ゲート間を通過する間に

  パルス数 n = 2×i/πD ×108 = 222.3 パルス

を発生することになる。 即ち、1パルスは 0.49mm の移動距離となるし、10,000rpmの場合は、3msec のパルス間隔となる。  1×3mm の光ビームなど、我が工作精度からすると±1パルスは許容範囲と考えているが、周期的な変動である上に、±3〜4パルスは測定誤差以外の要因があることは明らかである。

 遮蔽板の取り付けが不安定であるために、各ゲートでの測定状態によってカウントするタイミングでズレてしまったのではないかと判断している。 前面の連結器取り付け穴に差し込んだ遮蔽版が少しふらつていたのではないかと考えている。 速度の計測値もその分誤差となるであろう。

2)牽引力特性

 いつもの通りに、スケール速度が100Km/h 前後になるような電圧値を設定して牽引力を測定している。 最初に速報にて報告したデータを再掲載する。

 次に今回の計測データを記載する。

 速度計測の不安定さに影響されてデータのバラツキが大きくなっているが、制動側の消費電流が半分程度に減少していることに注目する。 やはり動力機構の摩擦抵抗が減少したものと推定する。 そして、-2グラムのあたりで断層が観察されるが、ウォームギヤの歯当たり方向が変化したために、噛合い状態が変化したものと思われる。

 駆動側のスリップ限界(粘着限界)は、12〜13グラムで、制動側は 10グラム程度である。 制動側がやや小さいののは重量バランスのせいであろうか? また、駆動側と制動側ともに、7グラムを超えたあたりから目に見えてスリップが大きくなっている。 

 次に、電圧降下の状態を観察する。 牽引力、電流、車速などの値を横軸に取って傾向を見たが、駆動力、あるいは電流値に比例しているように思われる。 駆動力と電流値は、右上のグラフで示されているように、明らかに関係しているので、どちらの影響下は判断し難いが、電圧降下は電流に比例すると考えるのが一般的な常識のように思える。

 スリップ状態を見てみよう。 スリップ率のグラフはバラツキが小さく安定している様に見えたが、駆動側で初めて見る特異なパターンを観察した。 最初は意味不明であり、原因を特定できないままに測定を続行した。 牽引力が1グラム程度にてスリップ率が少し減少し、5グラム以上になるとダブルの特性を示すのである。 そしてその傾向は電圧を変化させても同様なパターンとなっている。 なんで? ・・・・・・・・・駆動側でマイナスのスリップ率????  ・・・・動輪の回転による進みよりも車体の進みが早いだって? ・・・・・・誰かが後ろから押してくれているの?

 速度特性の測定に現れた遮蔽板の取付けの不安定さが原因なのだろうか?

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● 出力と効率

 上記の牽引力測定データを基にして、右に示す様に、出力と効率のグラフを追加する。 2016/11/28 追記

 

3)考察

 今回のC50-21号機の測定に際しては、偶然にも分解組付けの前後での測定結果を比較することが出来た。 以前から気にはしていたが、やはり分解組付けの影響があるようである。

 また、光ゲートを通過させるための遮蔽板の取付けが安易であったことを反省している。 細密に作らているデッキ部分を取り外し、しっかりとした遮蔽版を設置して再測定をすれば問題は解決するものと考えているが、今はその意欲が無い・・・・・・・。 少しガックリとしているのである。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 測定は意外と面倒であるので、ある程度の意気込みが必要なのである。