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モータの特性調査 GMとKATOのコアレスモータを比較する

 GM製コアレスモーター動力ユニットのモータ単体での特性を測定&解析したので、KATO製と比較しながらまとめることにする。

 比較対象とした個体は、GM製は(下左の写真)、モデル品番が5711の製品(名鉄1000系に装着)で、KATO製は(下右の写真) C59-123号機に装着されていたモータを使用した。

  

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 モータのサイズは、GM製がφ10.0×20mm、両側にフライホイールを付けている。 KATO製はφ7.0×20mmでフライホイール無しの状値である。 KATO製よりも胴体がやや太くなっている。

  また、他のモータとはその測定データ等から求めた勾配やY切片などの値をグラフにて表示して比較できるようにした。 この時のグラフのプロット点は、右の凡例にて示す。

 なお、グラフの説明等については、「モータ特性の測定とモデル化 特性解析のまとめ」(2019/5/26)を参照ください。

 

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■ 無負荷特性(回転数特性)の回転数と電圧の関係

 まず、無負荷状態での回転数と電圧の関係を比較してみよう。 この特性は供給電圧と回転数関係を示もので、模型車両のスピードをコントロールするもっとも重要な特性なのである。

    

     

 まず、回転数が半分程度であることに驚きである。 この特性はほぼ原点をとおる特性なので勾配の値で特性が決まってくる。 他の色々なモータと比べてもその勾配はダントツに小さいのである。 同じ電圧でもモータの回転数は低いままなのだ。

 なお、たびたび述べますが、これはモータ単体の特性であって、車両の特性ではないのである。 車両には、減速ギヤ比と動輪直径が関与して車速として現れますので、くれぐれも誤解の無いように。

 

■ 無負荷特性(回転数特性)の電流と電圧の関係

 次に電流と電圧の関係を見る。 無負荷状態なので、ここで消費される電流はモータ内部の電気抵抗とか、回転抵抗などの内部損失の程度を示している。

   

   

 消費電流が極めて小さいというコアレスモータの特徴がそのまま表れている。 KATO製と殆ど同じである。 この特性は、直線的であったり、弓なりになったりするがその違いの原因はよく分からない。 また、軸の共振状態が発生している個体もあった。

 

■ トルク特性のトルクと回転数の関係

 負荷状態でのトルクと回転数の関係を示すグラフと、このグラフの勾配を計算したものを下に示す

 グラフの縦横軸のスケールが異なっているが、GM製は垂直に立っているようである。 この特性は右下がりの特性なので、勾配の値はマイナスであり、その絶対値が他の製品とは数倍も多きい事が分かる。 これは、言い換えれば負荷に対してびくともしないぞ! 少々の負荷変動に対しても回転数を落とすことはない、即ち体力のある、体格が大きいモータである事を意味している。

 

■ トルク特性のトルクと電流の関係

 出力トルクと電流値を示すグラフの例と、このグラフの勾配を計算したものを下に示す。

 グラフも縦横軸のスケールが異なっているので分かりにくいが、GM製はKATOせいに比べて、同じ電流でもおよそ2倍の出力トルクを発揮している。 即ち勾配が大きのである。 他の製品と比べても群を抜いている。 力強いモータと言える。

 

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 次に、測定データを使って推定したモータ特性を決める6個の定数について比較する。 

■ 機械系の定数

 機械系に関する定数を比較してみよう。

 まず、流れている電流がどれだけトルクに変換されたかを示すトルク定数 Kt を比較する。  上記のグラフで示したようにGM製はダントツである。 また、軸の摩擦損失も非常に小さいが、損失の速度係数は低速傾向なのにやや大きいのは何故だろうか。

 

■ 電気系の定数

 電気系の定数については、トルク定数と同じムジナの逆起電力定数 Ke はやはりダントツである。  一方で巻線抵抗 Ra はKATO製と同等である。

 モータの設計は完全に門外漢である小生には、これ以上の解析は不可能であるが、巻線抵抗が同等なので同じ電圧ならほぼ同じ電流が流れるはずである。 それなのにトルクは2倍も大きいのは何故だろうか? 巻線の巻き数が異なる? あるいは磁石が強力なのかもしれない。 ネオジュウム鉄の強力な磁石を採用しているのではないかと推察する。

 

■ モータ特性線図

 モータとして一般的に表現されているモータ線図に倣って、線図上で比較してみよう。 専門家なら一目瞭然で理解できる筈である。 なお、定格とは何かの議論があるが、電圧=6volt 状態として統一して表示している。

 赤線がKATOコアレスで、こげ茶の線がGMコアレスである。 おわん型曲線の両端は、回転数ゼロ、即ち静止状態で、左端が電流がゼロの時であり、右端が最大電流が流れているスタック状態、即ち単なる電熱器の状態で、焼損の危険がある状態である。 速度がゼロなので当然に出力はゼロなのである。

 この時のトルクは、KATOコアレスで 70 gf-mm に対してGMコアレスは 150 gf-mm の2倍のトルクを発生している。 しかし回転数が低いため、最大出力としてKATOコアレスよりわずかに大きいだけである。 これは、KATOコアレスは回転数を上げて出力を確保し、GMコアレスはトルクで出力を維持していると考える事ができる。

 鉄道模型Nゲージ用モータとして使用するとき、動力車の特性としてマッチングさせるために、KATO は減速ギヤ比を大きくした動力機構を採用し、GMはギヤ比を小さくして構成しているのである。 ( ただし、蒸気機関車の場合と電車の場合の違いがあるが・・・ 設計方針としてはこのような考えをしているものと推察する。 )

 

■ まとめ

 GMのコアレスモータは、KATO製と比較して胴体がやや太く、特性としては低速・高トルクモータである。