HOME >> 動力車の調査 > モータの特性調査 > モータの特性解析 まとめ 追加版2
■ はじめに
Nゲージ鉄道模型の電気機関車に搭載されているフライホイール付きモータについて、その特性測定がある程度実施することが出来た。 さらにモデル化手法を使って、モータを構成する6個の定数を推定することも出来た。 そこで、これらの定数データを比較して、各モデルの違いなどを検討してみよう。
対象とした測定データは、「モータの特性調査」に示す KATO と TOMIX の電気機関車に搭載されていたフライホイール付きモータである。 これらの測定データを使用して「モータ特性のモデル化 改良版」で紹介した方法で解析を実施した。
【追加版】 KATOのコアレスモータの解析データを追加しました。 2016/11/14
【追加版2】 KATOのBトレ用モータの解析データを追加しました。 2016/11/21
■ 解析結果の一覧
解析結果を下の一覧表に示す。
グループ | No. | 搭載モデル | 定数の推定値 | 特性線の勾配 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Kt | Rm | λm | Ra | Ke | Eb | Nm-E | I-E | Tm'-Nm | Tm'-I | |||
KATO 第3初期 | 1 | EF81-119 | 236.2 | 15.76 | 0.00047788 | 9.45 | 0.00025751 | 0.313 | 3615 | 0.007314 | -0.006914 | 253.7 |
KATO 第3中期 | 2 | EF65-511 | 220.1 | 22.1 | -0.0000874 | 11.6 | 0.00025691 | 0.252 | 3963 | -0.001574 | -0.004787 | 216.2 |
3 | EF65-1097 | 250.56 | 16.95 | 0.00044406 | 11.8 | 0.00027179 | 0.085 | 3416 | 0.006055 | -0.006215 | 269.8 | |
4 | EF81-81 | 260.1 | 34.6 | -0.0006791 | 11.6 | 0.00026968 | 0.193 | 4177 | -0.010906 | -0.005368 | 230.9 | |
5 | EF510-1 | 230.0 | 18.0 | 0.0003000 | 10.0 | 0.00024784 | 0.074 | 3833 | 0.005000 | -0.006000 | 242.1 | |
6 | ジャンク3 | 240.5 | 8.2 | 0.0004695 | 12.5 | 0.00025000 | 0.000 | 3644 | 0.007115 | -0.005280 | 264.0 | |
KATO 第3後期 | 7 | EF65-1124 | 228.7 | 29.3 | -0.0004289 | 10.0 | 0.00025210 | 0.766 | 4285 | -0.008036 | -0.005337 | 211.7 |
8 | EF58-60 | 239.3 | 17.8 | 0.0001588 | 14.4 | 0.00029054 | -0.313 | 3332 | 0.002211 | -0.004987 | 247.2 | |
9 | ED79-11 | 244.9 | 12.1 | 0.00015049 | 11.8 | 0.00031683 | -0.454 | 3086 | 0.001896 | -0.006726 | 250.5 | |
10 | EF64-1032 | 275.8 | 15.8 | 0.0002115 | 14.5 | 0.00027322 | 0.154 | 3517 | 0.002697 | -0.005408 | 287.0 | |
11 | DE50-44 | 269.1 | 18.01 | 0.00032882 | 12.2 | 0.00027193 | -0.067 | 3486 | 0.004260 | -0.006327 | 283.9 | |
12 | ジャンク1 | 245.5 | 17.1 | 0.0002287 | 12.0 | 0.00026374 | 0.478 | 3637 | 0.003389 | -0.005624 | 255.9 | |
13 | ジャンク2 | 235.0 | 13.9 | 0.0001748 | 12.5 | 0.00027420 | 0.078 | 3527 | 0.002624 | -0.005330 | 243.0 | |
KATO 第4期 | 14 | EF15-79 | 442.5 | 17.0 | 0.0006967 | 25.3 | 0.00042837 | 0.286 | 2136 | 0.003363 | -0.008189 | 483.6 |
15 | EF510-510 | 412.7 | 14.5 | 0.0002761 | 18.8 | 0.00042108 | 0.559 | 2306 | 0.001543 | -0.009520 | 425.0 | |
16 | EF65-1103 | 438.8 | 17.2 | 0.0002858 | 23.0 | 0.00042456 | 0.475 | 2275 | 0.001482 | -0.008386 | 454.3 | |
17 | EF57-8 | 389.2 | 13.2 | 0.0003634 | 21.4 | 0.00046139 | 0.370 | 2077 | 0.001940 | -0.008755 | 406.1 | |
TOMIX | 18 | EF510-4 | 283.9 | 15.18 | 8.1471E-05 | 12.4 | 0.00035220 | 0.271 | 2811 | 0.000807 | -0.008145 | 286.8 |
19 | ED75-710 | 332.6 | 18.02 | 0.00051985 | 10.3 | 0.00033143 | -0.074 | 2877 | 0.004497 | -0.011222 | 348.8 | |
20 | EF210-109 | 277.6 | 11.73 | 0.00071517 | 10.4 | 0.00030186 | -0.121 | 3043 | 0.007839 | -0.008772 | 302.2 | |
KATO コアレス | 21 | C59-123 | 457.6 | 0.889 | 0.00006675 | 38.1 | 0.00047570 | -0.029 | 2078 | 0.000303 | -0.005780 | 462.9 |
22 | C56-149 | 475.3 | 0.908 | 0.00008101 | 39.2 | 0.00048400 | -0.005 | 2038 | 0.000347 | -0.005950 | 481.9 | |
23 | C56-144 | 497.3 | -0.228 | 0.0001347 | 41.3 | 0.0004913 | 0.03825 | 1990 | 0.000539 | -0.006050 | 508.6 | |
24 | C57-195 | 473.4 | 0.992 | 0.0000659 | 38.2 | 0.00048760 | -0.009 | 2029 | 0.000282 | -0.006109 | 478.6 | |
25 | C62-2B | 455 | 1.294 | 0.00009215 | 39.6 | 0.00048000 | 0.011 | 2049 | 0.000415 | -0.005607 | 462.6 | |
26 | D51-498A | 476.6 | 0.848 | 0.0000921 | 38.7 | 0.00050840 | -0.019 | 1938 | 0.000375 | -0.006353 | 483.6 | |
KATO Bトレ | 27 | Bトレ-1 | 332.5 | 3.02447 | 0.00013282 | 48.7 | 0.00036774 | -0.103 | 2583 | 0.001032 | -0.002644 | 350.1 |
28 | Bトレ-2 | 331.7 | 3.19394 | 0.00018382 | 48.0 | 0.00035862 | -0.069 | 2596 | 0.001439 | -0.002662 | 356.3 |
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各定数の単位は、 Kt:gf-mm/A、 Ke:volt/rpm、 Rm:gf-mm、 λm:gf-mm/rpm、 Ra:Ω、 Eb:volt である。
KATO のBトレ用モータの解析結果を追加しまいた。
数値だけでは良くわからないのでグラフ化した。 グラフの横軸は個別のモータを示す No. である。 そしてプロット点の色は右示す分類で統一しています。
まず、機械系の定数から見てみよう
Bトレ用モータの特徴を考えてみよう。
トルク定数については、KATO製の第3期と第4期の中間あたりのTOMIXと同じあたりに設定されている。 摩擦損失については、コアレスモータに近いゼロ近くに抑えてある。 速度係数については、右上がりを示す +0.0002 辺りの小さな値であった。
次に、電気系の定数を見てみよう。
巻線抵抗はおよそ 50 Ωと高い値であり、逆起電力定数はTOMIXと同じあたりであった。 また、ブラシ部の電圧降下は、推定方法の誤差によってあり得ないマイナスの値を示しているが、実質はゼロとみるべきであろう。
■ 特性としての比較
モータを実際に使用する場合、モータ特性を構成する6個の定数を見ても素人には 「それでなあに?」 と言った漠然とした状態でしか理解できない。 そこで、実際にモータの特性として表れる、回転数特性やトルク特性を見て置くほうが理解しやすい。
しかし、モータとしての回転数特性やトルク特性は、「モータ特性のモデル化 改良版」でも述べたように、モータ特性を構成する6個の定数がに複雑に影響しあっているので、これらの特性上ではどのように比較できるのか検討してみた。
その比較方法として、モータとしての4個の特性は殆ど線形を示しているので、勾配と X または Y 切片の値を取り出して比較した。
● 無負荷特性(回転数特性)のグラフ
まず、回転数-電圧のグラフの一例として、EF57-8号機のグラフを下に示す。 そして、この様なグラフで表示される勾配と X 切片について、各モータ毎に計算して計算値をその右側に示す。
この勾配のグラフは、コントローラのダイヤルの回し具合によるモータの回転数の様子を示している。 また、右の X 切片のグラフは立ち上がりの電圧を示す。 Bトレ用モータは、コアレスモータに近い特性を示している。
次に、電流-電圧のグラフの例と、このグラフの勾配と Y 切片を計算したものを下に示す。
Bトレ用モータは、これもコアレスモータに近い特性を示している。
● トルク特性のグラフ
モータの出力トルクと回転数を示すグラフの例と、このグラフの勾配を計算したものを下に示す。 このトルクのグラフは、電圧をパラメータにして表示しているが、X 切片の切り出しはパラメータ毎に変化するので比較検討を保留している。 さらに、X 切片の値とは、すなわち負荷がゼロの場合なので上記の無負荷回転時のデータと同じ事であるため、あえて重複をさけている。
勾配については、パラメータの値が違っても原理的には平行移動するはずなので、ここでは勾配だけを検討した。
この勾配は、負荷が大きくなった場合の回転数の落ち込み程度を示すもので、マイナスの勾配となる。 そしてその絶対値が大きいモータは、その傾斜が立っている、すなわち負荷に対して回転数の変化の少ない、強い体格のモータを示している。
Bトレ用モータは、小さなモータであるために体格的には無理が効かないので、このTm'-Nm の勾配は、その絶対値が小さくなっている。 負荷に対する回転すの落ち込みが大きいのである。
次に、出力トルクと電流値を示すグラフの例と、このグラフの勾配を計算したものを下に示す。
この勾配は、同じ電流変化でどれだけのトルクが出せるかを示しているが、KATO製の第4期のモータは大きなトルクを発揮していることを示している。 Bトレ用モータはTOMIXと同じあたりであった。
このBトレ用モータのデータを追加してみて、なんだかスッキリしない、もやもやしたものを感じていた。
そこで、モータの出力に注目して比較してみることにした。 ⇒ 次回報告
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■ おまけの検討・・・トルク定数と逆起電力定数の関係
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専門書などによると、トルク定数 Kt と逆起電力定数 Ke は同じ値になるとの解説がなされている。 これは理論式でも証明されているが、それならば何故 同じ記号を使わないのかと不思議であった。
今回の解析データを見ても、値的には同じではないのである。 でも、その単位が違うことに注意しよう。 ここでは、測定データやグラフとの関係で、普段使用している単位をそのまま使用している。 このため、測定データから計算されたトルク定数 Kt と逆起電力定数 Ke の単位がマッチしていないのである。
そこで、専門書などによる使用している単位に変換して比較してみよう。 まず、トルク定数 Kt の正式(?)な単位は N-m/A であり、逆起電力定数 Ke は volt・s/rad である。
EF81-119号機の場合のトルク定数 Kt の値は、
Kt = 236.2 gf-mm/A = 0.00231 N-m/A
逆起電力定数 Ke の値は、
Ke = 0.00025751volt/rpm = 0.00246 volt・s/rad
となって、値そのものが合致してくる! やはりこの事実は正しいののである。 ちなみに他の場合も同様に換算して、グラフ化したものを右上に示す。 データから直線近似したものを赤色で示し、Y切片を 0.0 に指定した場合を黒色で示す。
この「トルク定数 Kt と逆起電力定数 Ke は同じ値になる」と言う事を納得した次第である。
なお、このグラフにはコアレスモータのデータを追加しており、上記の関係はコアレスモータと言えども成立していることを追記しておこう。