HOME >> 動力車の調査 > KATO ED75-10011 その1 その2
■05 電気回路の電圧降下
電気回路の電圧降下について、有効な測定方法が見つからないので、車両特性の計算の中で、適切 に推定することにする。
■06 車両での速度特性の測定
走行特性を測定するにあたって、電気回路の電圧降下量の推定を少しでも信頼性が向上するように、ライト基板を取り去り、ダミーのプラ板に取り替えて測定を実施した。これによってライト基板への電流分離が無くなり、モータに流れる電流を供給電流と一対一に対応させて特性解析をより詳しく実施しようとするものである。
最初に、モータのウォームアップを兼ねて、速度と電流の時間変化も測定することにした。 条件は、重り車両を牽引した坂道路走行状態とし、49パーミルの勾配で牽引力が 11.2グラムの登坂状態で速度と電流を測定した。 電圧は 4.0 Volt に設定している。 小判形の周回路のため、登りがあれば当然下りもあります。
この車両は、速度や電流のバラツキがやや大きく、データの上でも凸凹しているのが判る。 スタートから速度が少し上昇すうが5分以降はほぼ平行状態を推移しているが、凸凹状態はそのまま継続している。 この凸凹は、走行状態を見ていてもわからないので、現実的には問題無いと考えている。
次に、平坦路単機走行での速度特性と電流特性を測定したので下に示す。 今回も牽引力の測定の後に測定したので、モータは充分に温まっていると考えている。
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速度特性と電流特性は殆んど直線的であり、4〜5volt付近での変形も見られない。
また、横軸をモータの回転数に取って、車両状態と単品状態の電流値を比較したのが、右のグラフである。 車両でのモータ回転数は、車速から滑り率ゼロと仮定して逆算したものである。
同じ構造のED79-11 では、単品と車両搭載状態では、回転数がアップするにつれてその電流値が開いていったが、このED75-1001 では、逆に狭まっている。 そして2万回転付近では交差している・・・・。
この単品と車両搭載状態の差は、駆動系の摩擦抵抗と考えると、高速になるほど摩擦が小さくなって、ついにはゼロになってしまうということなのか? 不思議だね!
もうひとつの考えとして、測定方法がまずいと言う事かも知れないのである・・・・・・・・・。
■07 牽引力特性の測定
次に、牽引力特性を下に示す。 パラメータとしての電圧設定は、設定値が±0.05 volt 以内を保つようにダイヤル調整を実施している。
当初は、ED79-11 と同じ様な負荷状態で測定しようとしたが様子が変なので(力が出ていない)条件をゆるめて測定した。 粘着限界での牽引力が20グラム近辺で、ED79-11 の30グラム近辺とはかなり差がある状態である。 車両重量は殆んど同じなので、測定データのミスなのか、ローフランジ車輪とそうでない車輪との違いだろうか、あるいはトラクションゴムの劣化か摩耗か・・・・・・・・・。 なんだか疑問だらけの測定結果になっている。
また、3volt での走行は、負荷が少し増えるとすぐに停車してしまうため測定を中止している。
■08 車両特性の解析
次に、計算モデルを活用して車両のいろいろな特性を解析してみよう。
1) 単機平坦路走行時の特性
伝達効率が100%と仮定した場合に車速を実測値と比較したものが、下の左のグラフである。 そして、電流値から推定したモータの出力トルクを伝達系の損失トルクと考え、それをグラフ化したので下の右のグラフである。
伝達系の損失トルクを示す右のグラフより、損失トルクは速度と反比例して摩擦損失がだんだん少なくなり、ついにはゼロになってしまうと言う不思議な現象を示している。 この現象は、他の車両でも見られているので、そろそろ現実的な事実として認識すべきなのだろうか。
とりあえず、このグラフの直線近似式より、速度項λd はλd = -0.0002 、そして固定項 R8 は、R8 = 5.3 と推定する。 そして、この損失トルクをもとに、単機走行状態を計算した結果を、実測値と重ねて表示したものを下のグラフに示す。
速度と電流値は、ほぼ計算とマッチしていると判断出来る。
2) 牽引力特性
次に、牽引力特性についても、効率100%の場合を計算し、伝達系の効率と速度差を下のグラフに示す。
この効率のグラフについて、駆動側はそれらしき値を示していると判断出来、他の車両と同等な値を示している。 また、速度差のグラフについては、相変わらずバラバラのデータではある。
3) 駆動系損失の分析
次に駆動系の損失トルクを推定する。 損失トルク T1 をウォーム軸の回転数、即ちモータ回転数を横軸にしてグラフ化したのが、下の左のグラフである。 そして、このT1 から速度項を差引いた T2 の値を動輪トルクを横軸にグラフ化したのが、下の右のグラフである。
次に、T2 のデータより、左右の勾配を求めるため、グラフ表示をすこし細工する。 その結果を下の左のグラフに示す。 直線近似の勾配値を平均して、駆動時の抗力項の係数R7 は、R7 = 0.208 、制動時の抗力項の係数R7 は、R7 = -0.0908 と推定出来る。 そして、このT2 より、今求めた抗力係数によって計算された抗力項を差しい引いた損失トルクを下の右のグラフに示す。
4) 損失トルクの内訳
上記の駆動系損失の分析で求めた各損失項を分かり良く表示するために、各電圧パラメータ毎にグラフ化する。 グラフの見方は「車両の静的特性のモデル化と特性解析」を参照下さい。
動力機構のトルク損失について、ED79-11とは異なり、固定項の割合が意外と小さく、ジョイントシャフトを使用した他の車両と同等な値である、 これはモータとウォームをジョイントを使わずに直接連結させているものの、その芯ズレが小さいので、回転抵抗が少ないという事なのだろうか。
5) 電圧降下量の推定
次に、集電回路の電圧降下を推定してみよう。 車速や供給電流値から計算した電圧降下のグラフを下の左のグラフに示す。 今回の測定に際してはライト基板を取り去って測定しているため、電流値の値は供給電流の測定値そのままとなるため、データの信頼性はアップしたと考えていたが、相変わらずバラツイている。
今回のデータからは右上がりの傾向が見られるので、エイヤーと引いた赤線を電圧降下の特性線図とし、R5 = 0.04、 R6 = 0.2 と推定した。 この強引な線引きではあるが、実測値と計算値はまあまあのマッチングである。
そこで、見方を変えて横軸を速度に取って見たのが右のグラフである。 データの両端はスリップ領域があるのでその点を除いて考えると、速度に関係して右下がりの傾向を示しているのは4ボルトだけで、ED79-11での仮説は否定的である。
6) 牽引力特性の計算結果
ここでは、推定した定数を使用し、モデル化したモータと車両の特性式のよって牽引力特性を計算し、測定データのグラフの上に重ねて表示する。 これにより、計算式と定数の確からしさを検証しようとするものである。
■09 まとめ
この車両の動力特性に関する諸元をまとめて一覧表に表示する。
ED75形 交流直流電気機関車 | メーカー/品番 | KATO/3028 | 車両番号 | ED75-1001 | 製造年 | 1999年 | ||
車体諸元 | 車両重量 | 79.6 | 前台車荷重 | 39.8 | 後台車荷重 | 39.8 | ||
台車中心間距離 | 55 | 台車軸距離 | 17.5 | |||||
モータ諸元 定数 | モータ構造 | 2P5S、θ=0 | フライホイール諸元 | φ10.4*6.2-2 | マーキング | 狭い白 | ||
逆起電力定数 Ke | 0.00028 | 巻線抵抗 Ra | 9.0 | ブラシ部電圧降下 Eb | 0.0 | |||
トルク定数 Kt | 245 | 摩擦トルク Rm | 15 | 摩擦損失速度係数 λm | 0.00066 | |||
伝達機構 | ウォームモジュール m | 0.4 | ホイール歯数 Z | 19 | 動輪軸歯数 Z | 17 | ||
ギヤ比 i | 19 | 動輪直径 D | φ7.4 | 車輪形状 | 通常フランジ | |||
各種定数 | 電圧降下係数 R5 | 0.04 | 電圧降下係数 R6 | 0.2 | ライト基盤係数 R3 | 2.52 | ライト基盤係数 R4 | 0 |
速度係数λd | -0.0002 | 抗力係数駆動 R7 | 0.208 | 抗力係数制動 R7 | -0.0908 | 固定項係数 R8 | 5.3 | |
基本単位 | 長さ mm、 重さ gf(グラム )、 回転数 rpm、 電圧 volt、 電流 A、 抵抗 Ω、 スケール速度 Km/h、 ただしグラフの電流値は mA で表示。 |
(注記) これらのデータは、ホビーとして個人が手持ちの車両を測定したものであり、その信頼性は保証いたしません。
このED75形は、EF形に比べて車両長さが短くなっており、先回調査したED79形と同じ構造であったが、モータの特性は異なっている様であった。 充分な調査データを持ち合わせていないので、設計仕様の差なのか、製品のバラツキなのかは判断できないでいる。 また、伝達系の損失トルクについて、構造的には同じでも、その状態がかなり異なっているのは明らかであり、これは今後の探求テーマとしておこう。