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動力車の調査  KATO ED75-1001  その1

 動力車調査の第8弾として、KATOのED75-1001を選び分解調査することにした。 このモデルはKATO 製電気機関車のフライホイール・シリーズの中で、車両長さが短いEDシリーズの一つであり、その構造上の工夫と性能特性を見ることにしよう。

 

■01 車両の概要

 性能測定の前に、このモデルの概要と分解調査の結果を報告する。

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このモデルの詳細は、マイコレクションの ED75-1001 を参照して下さい。 重複記載あり。

メーカー KATO 商品名 ED75 一般形
品番 3028 車両番号 ED75-1001
発売日 1999年
入手日 2010年10月13日 中古品入手

 

                模型車両の特徴:  ・ヘッドライト点灯   ・フライホイール搭載動力ユニット   ・シースルー運転台 など。

 ◆構造を理解するために、車体を少しずつ分解していきましょう。

  

 主な部品の分解状態を上の写真に示します。  まず、フレームを見て見よう。

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 亜鉛ダイカスト製のフレームは一体的に作られているタイプであり、刻印された品番は 3028 であった。 この3028は、ED75 の品番であるので新設された部品であることが判る。 そしてED79のフレームと共通で使用している。 

次に、モータとウォームを右の写真に示す。 フライホイール付きで、2ポール5スロットのスキュー無しマグネットモータである。 このモータもED79 と同じ様であるが、マグネット端部のマーキングは、右の写真の様に、白色(幅は狭い)が施されていた。 このモータのその寸法を下に示す。

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 フライホイール搭載の標準型の車両に搭載されているモータと比較すると、モータ本体は同じ様である。 また、ウォームとの連結は、長さの必要なユニバーサルジョイントが使用出来ず、6角穴と6角軸を用いて、フライホイールとウォームを直接係合させる構造になっているのもED79 と同じである。 

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 次に台車について右の写真に示す。この台車は ED79と比べて、灰色のアイドラギヤが黒色であった以外はおなじであった。 二つの動輪の中心点と台車の回転芯軸がズレているのもおなじである。 台車とその下のフレームは両方とも3028の刻印があり、この車両用の専用部品として新設されている。

 歯車の構成は、ウォームは m = 0.4 の1条ネジで、ウォームと噛合うホイールは Z = 19 である。 このホイールは2段歯車となっており、アイドラギヤを介して動輪につながる歯は Z = 17 であるが m = 0.3 で作られているので外形はかなり小さくなっている。 そして、動輪の歯車は Z = 17 であるので、動輪とホイールの回転は同じとなり、動輪を1回転させるためにはウォームを19回回転させる必要があるので、減速ギヤ比は i = 19 のギヤ列を構成していることになる。 動輪の中心点と台車の回転芯軸がズレているので、ウォームホイールから動輪までの距離が前後で異なるようになってしまった。

 動輪径は、φ7.4mm の通常タイプのフランジであり、 ED79 のローフランジと異なっている。 内側の片方の動輪にトラクション・ゴムを履いている。 その他の諸元として、車体重量は 79.6 グラム、前後の台車の動輪に掛る荷重はそれぞれ 39.8グラムであった。

 

■02 ライト基板の特性調査

 まず、電気回路上、モータと並列に挿入されているライト基板の特性を調査しておこう。

 

 この基板は、裏側のみに回路が形成されているタイプである。 そして両端には前後のライト用の砲弾型のφ3mm のLED が半田付けされており、 このLED と直列にチップ抵抗が半田付けされている。 チップ抵抗の記号は271で、実測値は267Ωであった。

 中央部の導線部をクリップで挟み、電圧を掛けながら電流を測定したのが右上のグラフである。 前進と後進(極性を反転)ともに電流は一直線状に上昇し、その間も赤線で示したように一直線で結ぶことが出来る。 この特性は今まで調査してきたライト基板と異なっており、まして同じ形状のEF65-511とも異なっているのが解せないでいる。電気に疎い小生には良く解らない。

 電流の上昇勾配は、平均 2.5mA/Volt である事から、約 400 Ωとなり、チップ抵抗の実測値と合致しない。 回路にはあとLEDだけなので、このLEDの特性によって計算上で不足する抵抗を発生していると解釈するのだろうか。 

 

■03 モータ単品の速度特性とトルク特性の調査

 馴らし運転を兼ねてモータ単品での時間変化の測定についてはED79-11で実施しましたが、糸の張力と摩擦により負荷を与える方法は、時間と共に負荷が変化してしまい、常に一定の負荷を与えるという運転条件に疑問がありました。 このため、今回は同じ運転方法ですが、計測するのは中止致しました。

 馴らし運転の条件: 電圧は 4volt 、電流は、およそ150 mm A の負荷を掛けて15分間運転する。

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 無負荷状態での速度と電流の特性を下に示す。 速度(回転数)については、4volt 近辺から特性の勾配が変化している様であるが、電流特性にはその傾向が見られない。 電流値を見ているとバラツキがやや大きいが、実際に測定していてもメータの針はゆっくりと行ったり来たりしているので、モータの回転自体がやや不安定の様子である。

 

 これらのプロット点を直線近似させ、その直線とのズレを計算したものを下のグラフに示す。

 

 この近似直線との差分を見て見ると、やはり4〜5 volt 付近に何かが有る事が判る。 共振現象なのだろうか?

 次に、負荷特性を測定した。

 

 これらのデータからモータの特性を定める各定数を求める。

 

■04 モータモデルの定数の推定 

 モータモデルの各種定数の推定を整理した推定方法に従って計算を実施た。

 

1) 電圧系定数の推定

 まず、外部電圧、電流、回転数のデータより、Ke 、Ra 、Eb の定数を推定する。 負荷と無負荷状態の外部電圧、電流、回転数の全データより、下のグラフを作成する。

 

 このグラフを参考にして推定した定数の数値は、Ra = 6、Ke = 0.000308、Eb = 0.04 とすると、 y = 1.0x + 0.0 に最も近かったが、モータの負荷特性の勾配が違いすぎたので、 Ra = 9、Ke = 0.00028、Eb = 0.0 と推定値を修正した。

2) トルク系定数の推定

  同様に、回転数 Nm 、電流 I 、出力トルクTm’のデータより、Kt 、Rm 、λm の定数を推定する。  負荷と無負荷状態の外部電圧、電流、回転数の全データより、下の二つのグラフを作成する。 

 

 このグラフを参考にし、他の項目を見ながら最適値を探し、 Kt = 245、Rm = 15、λm = 0.00066 と推定した。 この時の値を右のグラフ上の青い線で示す。

3) 無負荷特性とモータ特性のマッチング具合

 実測データのグラフの上に、推定した定数を用いて計算したデータを赤線で示し、推定した定数のマッチング具合を検証する。 

 

 

 このモータ特性は、実測値と計算値は良く合致しており、モータのモデルとしては充分に活用出来ると言える。