HOME >> 動力車の調査 > KATO EF66-51 その1 その2
■05 電気回路の電圧降下
電気回路の電圧降下について、有効な測定方法が見つからないので、車両特性の計算の中で、適切 に推定することにする。
■06 車両での速度特性の測定
走行特性を測定するため、車両を再び組付けたが、この時、ライト基板をダミーのプラ板に取り替えて測定を実施することにした。 これは、ライト基板への電流分離を無くすことにより、モータに流れる電流を供給電流と一対一に対応させ、特性解析をより詳しく実施しようとするものである。 特に、電気回路の電圧降下量の推定については少しは信頼性がアップすると考えている。 このEF66-51車両は、モータ端子とライト基板との接触方法が先回のEF65-511車両と少し異なっていた。 このため、ダミーの基板の裏側に、0.05mm の銅板を両面テープで張り付け、通電のための回路を作っている。
このため、測定データについても新しく測定しなおすことにした。
最初に、モータのウォームアップを兼ねて、速度と電流の時間変化も測定することにした。 条件は、重り車両を牽引した坂道路走行状態とし、70パーミルの勾配で牽引力が 16.2 グラムの登坂状態で速度と電流を測定した。 電圧は 4.0 Volt に設定している。 小判形の周回路のため、登りがあれば当然下りもあります。
この車両は、速度や電流のバラツキが少ない様である。 これはモータが安定して回転しているためと思われる。 しかし、10分を過ぎたところで、突然電流がアップし、速度も低下した。 アレーと思ってそのまま見ていると、すぐに元の状態に戻ってしまった。 先回観察された異常現象と同様な現象の様であるので、この車両の特徴ではないかと勘繰っている。 また、全体的に見ると、速度は少しづつ上昇し、それに従って電流は下がっているが、10分過ぎから安定している様である。
次に、平坦路単機走行での速度特性を示す。 今回は牽引力の測定の後で、そのまま測定したので、モータは充分に温まっていると考えている。
電圧を高くして行っても、即ち、速度を上げて行っても電流は殆んど増加しないようである。 このことより、駆動系の損失トルクの速度項が小さそうであることが想定される。
■07 牽引力特性の測定
次に、牽引力特性を測定し、その結果を下に示す。 今回から、パラメータとしての電圧設定は、設定値が±0.05 volt 以内を保つようにダイヤル調整を実施している。 パワーユニットの微妙な設定違いや測定誤差などにより、プロット点は少しギクシャクとした並びになってしまったが、計算値との比較のためにはこの方がベターと判断する。
ライト基板の撤去や、より厳密な電圧設定により、整ったデータが得られたと思っている。 また、5volt で測定中に前記の異常状態が3回発生した。 それは、突然発生して、そしてまた戻ってしまうのであるが、原因が良く分からない。 上記のグラフ上ではそのデータを除外してプロットいる。 粘着領域は駆動、制動領域とも 20 グラム程度で、電気機関車としては、やや物足りないのではないかと思う。
■08 車両特性の解析
次に、計算モデルを活用して車両のいろいろな特性を解析してみよう。
1) 単機平坦路走行時の特性
伝達効率が100%と仮定した場合に車速を実測値と比較したものが、下の左のグラフである。 そして、電流値から推定したモータの出力トルクを伝達系の損失トルクと考え、それをグラフ化したので下の右のグラフである。
伝達系の損失トルクを示す右のグラフより、損失トルクは速度に殆んど影響していない様であるが、このグラフの直線近似式より、速度項λd はλd = -0.00008 と推定する。 そして、この損失トルクをもとに、単機走行状態を計算した結果を、実測値と重ねて表示したものを下のグラフに示す。 ほぼ計算はマッチしていると判断出来る。
EF65-511号機の解析でも、速度項がマイナスになってしまったが、測定方法がまずいかも知れないと思っており、本来は速度項はゼロでなないだろうかと考えている。 モータ単体の測定方法について、充分に温まっていない内に測定したため、モータ温度による影響が出ている可能性を少し疑っている。 今後の課題としよう。
2) 牽引力特性
次に、牽引力特性についても、効率100%の場合を計算し、伝達系の効率と速度差を下のグラフに示す。
この効率のグラフについて、これだけバラツキが小さくなると、それらしき値を示していると判断出来そうである。 そして、この車両では効率が10%前後まで低下しているが、ギヤ比が i = 26 と大きくなり、ウォームモジュールも m = 0.3 と小さくしたことなどが影響しているのだろうか。 また、速度差のグラフについては、相変わらずバラバラのデータではあるが、理屈に叶った傾向を示している。
3) 駆動系損失の分析
次に駆動系の損失トルクを推定する。 損失トルク T1 をウォーム軸の回転数、即ちモータ回転数を横軸にしてグラフ化したのが、下の左のグラフである。 そして、このT1 から速度項を差引いた T2 の値を動輪トルクを横軸にグラフ化したのが、下の右のグラフである。
次に、T2 のデータより、左右の勾配を求めるため、グラフ表示をすこし細工する。 その結果を下の左のグラフに示す。 直線近似の勾配値を平均して、駆動時の抗力項の係数R7 は、R7 = 0.192 、制動時の抗力項の係数R7 は、R7 = - 0.189 と推定出来る。 そして、このT2 より、今求めた抗力係数によって計算された抗力項を差しい引いた損失トルクを下の右のグラフに示す。
4) 損失トルクの内訳
上記の駆動系損失の分析で求めた各損失項を分かり良く表示するために、各電圧パラメータ毎にグラフ化する。 グラフの見方は「車両の静的特性のモデル化と特性解析」を参照下さい。
5) 電圧降下量の推定
次に、集電回路の電圧降下を推定してみよう。 車速や供給電流値から計算した電圧降下のグラフを上の右のグラフに示す。 今回の測定に際してはライト基板を取り去って測定しているため、電流値の値は供給電流の測定値そのままとなるため、データの信頼性はアップしたと考えている。 スリップ領域を除いて考えると右上がりの傾向を示しており、これらの見ながらエイヤーと引いた赤線を電圧降下の特性線図として見た。 その結果、R5 = 0.002、 R6 = 0.6 と推定した。 この 今回のデータは、今まで試行錯誤してきたいろいろな方法のデータと似かよっており、信用できそうである。
6) 牽引力特性の計算結果
ここでは、推定した定数を使用し、モデル化したモータと車両の特性式のよって牽引力特性を計算し、測定データのグラフの上に重ねて表示する。 これにより、計算式と定数の確からしさを検証しようとするものである。
■09 まとめ
この車両の動力特性に関する諸元をまとめて一覧表に表示する。
EF66形 直流電気機関車 | メーカー/品番 | KATO/3047 | 車両番号 | EF66-51 | 製造年(再生産) | 2011年 | ||
車体諸元 | 車両重量 | 90.4 | 前台車荷重 | 37 | 後台車荷重 | 37 | ||
台車中心間距離 | 72 | 台車軸距離 | 18.5 | |||||
モータ諸元 定数 | モータ構造 | 2P5S、θ=0 | フライホイール諸元 | φ10.4*7.5-2 | マーキング | 青/白 | ||
逆起電力定数 Ke | 0.0002555 | 巻線抵抗 Ra | 9.863 | ブラシ部電圧降下 Eb | 0.0 | |||
トルク定数 Kt | 260 | 摩擦トルク Rm | 16.5 | 摩擦損失速度係数 λm | 0.0003 | |||
伝達機構 | ウォームモジュール m | 0.3 | ホイール歯数 Z | 26 | 動輪軸歯数 Z | 17 | ||
ギヤ比 i | 26.0 | 動輪直径 D | φ7.4 | 車輪形状 | ローフランジ | |||
各種定数 | 電圧降下係数 R5 | 0.002 | 電圧降下係数 R6 | 0.6 | ライト基盤係数 R3 | 1.82 | ライト基盤係数 R4 | 3.27 |
速度係数λd | -0.00008 | 抗力係数駆動 R7 | 0.192 | 抗力係数制動 R7 | -0.189 | 固定項係数 R8 | 6.0 | |
基本単位 | 長さ mm、 重さ gf(グラム )、 回転数 rpm、 電圧 volt、 電流 A、 抵抗 Ω、 スケール速度 Km/h、 ただしグラフの電流値は mA で表示。 |
(注記) これらのデータは、ホビーとして個人が手持ちの車両を測定したものであり、その信頼性は保証いたしません。
牽引特性などの実測値と計算値とは、かなりピッタリと合って来ており、計算モデルと推定した定数は信用出来ると考える事ができる。 そして、他の車両の定数と比較することによって、この車両の特徴を示すことが出来るものと考えている。