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動力車の調査  KATO EF66-51  その3

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 悪戦苦闘するEF66-51の分解調査もやっと目途が立って来た。 今回もいろいろ改良しながら解析を進める事ができた。

 

■08 モータ単品の再測定

 測定台へのモータの取り付け方法を改善した。

 右の写真のように、モータを支持する支持部材をそのまま使用し、支持部材の側面端部を押さえて固定する。 押さえ部材は2mm 厚さのプラ板を使い、 3mm のネジで固定する。 これによってモータは実際の取り付け状態と同じ方法で支持されているので、モータに無理な力が掛らないはずである。

 電極もモータと押さえ板の隙間に銅板をはめ込み、給電している。 モータの回転計測はこれまでの方法と同じである。

 測定装置の全景を下記の写真に示す。 写真の状態は無負荷状態での様子であるが、負荷を掛けた場合の測定は、従来と同じである。

 

 次に無負荷状態での測定結果を下のグラフに示す。

 モータ回転数と電圧の関係は、先回と同じ特性であったが、電流値は低圧側で 50mA 近くも低下し、そして右上がりの特性を示している。 やはり、今までが異常であったと言うことか。

 そして、今回不思議な現象に出くわした。 測定の途中でモータの回転音が急に変化し、電流が急上昇したのである。 モータには一切手を触れていないのに、何かのきっかで回転数が下がり、変な音だなと思っている状態でしばらく回転していたが、また、元の状態に戻ったのである。 この間のデータを残そうと測定したデータが黄色のポイントである。 データをグラフ化した時、電流は確かに急上昇しているが、回転数のデータを見ると同じ特性上に乗っかているのに初めて気が付いた。 てっきり回転数は下がっていると思っていたが、そうでは無かったようである。 もっと正確に状態を把握しておけばよかったと反省したものの、再現出来ず、冷静さを失った観察記録となってしまった。

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 小生は、モータの設計は門外漢なので、原因を考察する力が全く無い。 このような現象を起こす原因は何であるのか不思議である・・・・・・・・・。  軸関係のコジレなのか、整流子かブラシの異常なのか、見当が付かない。 ただ、このような現象が起こると言う事を始めた体験した。

 

 なお、折角のデータであるので、その2で掲載した “ウォーム付” と “車両” とのグラフに重ねて見よう。 それを左に示す。

 今回測定したモータ単品のデータを “再モータ” で示す。 “車両” や “ウォーム付” の下に位置しており、納得のデータである。 ウォームが付いたり、台車が組込まれたして、抵抗がだんだん増加している様子が理にかなっているし、右上がりの特性もモータに始まり、少しずつ広がっていることなど、当たり前のことであるが、 “大発見!” したような気分である。

 第1弾の EF510-1 の調査に於いて、 ■05 駆動系の損失特性の調査 台車のギヤ部 でも同じ様な問題が発生し、理由が良く分からないままにしてあったが、もしかしてその原因は同じだったかも知れない。 と言うことは、もう一度測定し直しと言うことになる・・・・・・・・!

 つぎに、トルク特性を測定した。 電流値も小さくなっており、トルク・電流特性が大きく変わっている。 また、比較的バラツキの小さい測定結果で、正常と判断出来るデータと考えている。 また、トルクゼロの状態でつながっているポイントは、無負荷状態でのデータである。

 

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拡大図   

■09 モータ特性の再モデル化

 トルク・電流特性が大きく変わってしまったので、再計算することにした。 表計算ソフトを使用した手作業の逐次計算法のために、6個の評価グラフをまとめて表示出来るように工夫し、計算結果を赤色の線で表示するようにしました。 右の図にその表示部分を示します。

 今回実施した手計算によるモータ定数の最適推定値を下の表に示します。 先回の計算とは、トルク定数 Kt が大きく変わっており、速度係数λも一桁アップしています。

 

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 また、今回の改善効果を見るために、「その1」で述べた方法により、モータ軸の損失トルクを計算してみた。 左のグラフがその計算結果である。 損失トルクとして値が下がっていると期待したのであるが、結果は逆にアップしている。

 あれー? モータ軸がこじれていたのではないのか? コジレが無くなったので、正常に作動するようになったと考えていたが、 なんで・・・・・・・・?

  ********** 頭が混乱中である *********              

 ○≠△%□◇?▽   空白状態 <$÷△□£#≠¢△ ???

 

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ともかくもモータは正常状態に戻っているようなので、この件は宿題事項にして、このまま解析を進めることにした。

 6個の評価グラフにおける、最適推定値をもとにして計算した特性グラフを実測値と比較して表示しておこう。 最適推定値をもとにして計算した特性は赤色の線で表示している。

 

 回転数とトルクの全体的な (無負荷と負荷状態のデータを含むもの) 状態の計算結果を下に示す。 このグラフより、計算値と実験値とほぼ合致していると見れるであろう。 この回転数の計算の場合は、Nm = ( E - Eb - Ra・I ) / Ke の計算式を使用して計算しているが、関係する定数が少ないのでバラツキが小さい。 一方のトルクの方は、測定精度の問題や定数が増えたことにより、バラツキが増加するのも止むをえないと考えている。

 また、無負荷状態における電圧とモータ回転数、および電流の関係を次のグラフに示すが、この状態でも良しと判断出来る。 この回転数の計算の場合は、上記と同じ計算式を使用して計算している。

 負荷有りの状態については、下記のグラフに示す。 もう少しピッタリ合いそうであるが、他のグラフとのバランスを見ているので、これで妥協している。

■10 車両特性の計算値との比較

 上記のモータモデルの定数を使用して、車両特性を計算で求める見る。 実測データは、「その2」の■07 再組付けの実施 に示すデータを使用している。

 まず、単機平坦路走行時の車速の計算結果を下の左のグラフに示す。 この式は、線路への供給電圧と電流値の実測値をもとに、推定した定数を用いて計算している。電気回路の電圧降下は■05 で推定した 0.004x の式を用いている。 計算値と実測値は良く合致していると言えよう。 電圧・電流特性は検証していない。

       

 つぎに、この単機平坦路走行時の電流値をもとにモータの出力トルクを計算し、それをモータ回転数と共にグラフ化したものを上の右のグラフに示す。 グラフのタイトルと縦軸の項目名を見て頂ければ、このグラフの目的を理解してもらえると思う。 単機平坦路走行の場合、モータの出力トルクは、自分自身の車両を動かすために必要な力しか必要とされていない。 この自分自身の車両を動かすための力とは、ギヤ類や車輪を回す為に必要な力の事である。 このEF66-51車の場合、中間台車以外は全て動輪であり、この中間台車のコロガリ抵抗は無視出来るくらい小さいと考えると、必要な力とは 「モータ軸から駆動輪までの伝達トルク」 と考えて差支えないだろう。

  即ち、単機平坦路走行時では、

       モータ出力トルク = 伝達系損失トルク  

と言えるのである。 このデータを前記の「モータ軸損失トルク」と比較してみると、モータ軸よりも小さいことに驚いている。 そして、SLなどのリンクを伴なう動力系の解析には有力な道具となりそうな気がするので、この解析方法の確立を進めて行きたいと思っている。

 次に、牽引力特性に当てはめて見よう。 今回は、EF510-1などの場合の様に速度を合わせるための細工はしていないが、上で求めた伝達系の損失トルクを計算式の中にさっそく取り込んでいる。 実測値と計算値の合致具合に、なんだか嬉しくなって来るのである。

 そして、最後に 「伝達系の効率」 と 「モータと車体の速度差」を計算した。  効率計算には、上記の伝達系損失トルクを計算していない。 即ち、EF510-1などの場合とおなじ計算方法で実施している。 分母を効率 100%として計算している。 EF510-1などのデータよりも綺麗に揃っているのが嬉しいね。 でも、伝達効率が10%台になってしまっていることに、すこし戸惑っている。 今回は制動領域に於いても、駆動領域とまったく同じ計算式で計算しているが、矛盾の無い結果となっている。

 また、速度差のグラフは、縦軸を7〜8%ずらすと理想的なグラフになるような気がする。 駆動側では、数%のプラスのスリップ、制動側ではやはり数%のマイナスのスリップ状態となり、粘着限界に近ずくにつれてスリップ率が大きくなると言った特性を示せば全く理にかなったグラフとなるであろう。

 ■11 まとめ

 動力車調査の第3弾としてKATOのEF66-51を選び、分解調査することにしたが、意外と手間取ってしまった。 8月の始めから取りかかっていたのに、孫の夏休みの相手や、南薩鉄道5号機の組付けなどで、中断はあったものの、道具の改良や再測定、あるいは疑問点などで時間がかかってしまった。 しかし、新たに知り得たノウハウもあり、夢中(霧中?)となって取り組んでいたのは楽しい時間であった。

 今回の調査で、モータ単品での測定上の注意事項が明らかになり、EF510-1とEF65-51の測定データは疑問符付きのデータとなってしまった。 再測定が必要と判断している。 しかし、この調査方法の手法が、もっともらしくなって来ており、意を強くしているので、さらにN増しの努力をしていきたい。