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鉄道模型工作室  モータドライバBD6231を使って簡易コントローラを作る

 このモータドライバBD6231を使った制御方法は、卓上レイアウトの自動運転を試しているのかで、給電制御での周波数アップの方法のひとつとして考えていた方法でした。 簡単な実験として「モータドライバBD6211FのVREF制御モードを実験」(2020/3/8)にて報告しましたが、このモータドライバのVREF制御モードを使えば、鉄道模型用の簡単なコントローラが手作り出来ると考えて、今回工作してみました。

 

■ モータドライバBD6231の準備

 まず、モータドライバBD6231を準備します。 秋月のサイトからこのICのカタログをダウンロードした説明書の一部を下記に転載します。

 この部品は、4.4mm×5.0mm に、1.27mm ピッチで8本の足のあるの小さな石ですが、最大出力電流が1.0Aもあり、鉄道模型用としては充分なスペックです。 このICのVREF 端子を使って可変電圧を入力させると、その電圧に応じて25KHz のPWM制御出力を出してくれるというモータドライバです。

 ただ、小さな石の上にピンのピッチがユニバーサル基板の半分ですので、ピッチ変換基板が必要でした。 その工作は、「モータドライバBD6211FのVREF制御モードを実験」(2020/3/8)と、「卓上レイアウトで楽しもう 自動運転 その24 3重円形路での半自動運転」(2020/3/14)にて紹介しましたので参照ください。

 

■ 電気回路図

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 この部品を使った簡易コントローラの配線図を右に示します。

 鉄道模型を走らせするために、電源としてDC12volt が必要でしたので、ACアダプター12V1A 仕様のものを準備しました。 電源用スイッチの後には、過大電流が流れた時のために、ポリスイッチを配置しました。 導電性ポリマーを使用した自己復帰型の過電流、加熱保護用ヒューズです。 定格の2倍の電流で切れるとのことでしたので、0.5A仕様のX50を使いました。

 電源が投入されると、パイロットランプが点灯するようにし、モータドライバBD6231に給電しますが、説明書に従って、10μFのコンデンサを挿入しています。

 また、モータの回転方向、即ち鉄道模型の進行方向を決める端子である FIN と RIN 端子にHIGH/LOW 信号を入力させるため、2回路2接点、中点付のトグルスイッチを設けています。 中間点では、どちらの端子も宙に浮いてしまいますので、10KΩの抵抗を通してGNDに接続させています。

 そして、メインの制御回路であるPWM制御は、12VとGNDに接続されて10KΩの可変抵抗を使って中間電圧を取り出し、ICのVREF端子に入力させています。 すると、供給電圧 Vcc とVREF端子に入力された電圧 Vref の比に応じて、デューティ比が制御された25KHz のPWM出力が、OUT1 または OUT2 から出力されるのです。

   超簡単にPWM制御された出力が得られるのです。

 また、せっかく12Vの電源があるので、ついでにポイントも制御することを考えました。 今までの自動制御では、このポイント制御のためにリレーや大きなコンデンサを使って来ましたが、これまた大げさな回路になるので、TOMIX のポイントコントロールボックス(5531)を借用することにしました。 ストック品としてありましたので・・・・。 電源スイッチから、別回路にしたポリスイッチを通してDC12volt を取り出そうとしたものです。

 必要な部品類をリストアップします。 材料費は、約2千円程度で済みました。

品名 型番、仕様 内容 価格
フルブリッジドライバIC BD6231F−E2、36V メーカー:ローム株式会社(ROHM) 180
DIP変換基板 SOP8、1.27mm 金フラッシュ、9枚入 100
細ピンヘッダ 1×4 2個使用 10
丸ピンICソケット 8P   15
片面ユニバーサル基板 Cタイプ緑(72×48mm) めっき仕上げ 70
ポリスイッチ RXEF065、0.65A 耐圧:72V、1.3Aで遮断 30
ポリスイッチ RXEF050 0.5A 耐圧:60V、1Aで遮断 30
小型ボリューム 10KΩB 速度調整用 40
電解コンデンサー 10μF、50V85℃   10
トグルスイッチ 2回路2接点、中点付 ON-OFF-ON、進行方向選択用、ストック品活用 100
トグルスイッチ 2接点 ON-OFF、電源用、ストック品活用 100
プラスチックケース TB−32−B、黒 外部寸法:60×100×\'30mm、材質:ポリスチレン 290
丸型プラ足 直径:11mmΦ、高さ:7mm 120
ブラケット入LED 緑凹タイプ VF:2.25V 、IF:20mA以下、電流が約10〜20mAの範囲 130
2.1mm標準DCジャック MJ−10、パネル取付用 パネル穴径:Φ12.5mm 40
ACアダプター STD-12010U2-T、12V1A 2.1φ標準プラグ 780
抵抗類 750Ω、1KΩ、10KΩ ストック品使用 ---
配線類   ストック品使用 ---
合計  
2,045

 

■ ケースの加工工作

 まず最初に、ケースの加工を行いました。 ポイントコントロールボックスを取り付けるために、ボックスの側面に穴を加工する必要があります。 

 ボックスの底には4個の足を取り付けて、 コントロールボックスの出っ張りの部分の位置をケガき、穴あけ加工を行いました。

 材質はポリスチレン製でしたので、ドリルややすり、ルータなどを使って加工しましたが、何度も現物合わせを実施しながら加工を進めました。

 加工に使った道具類を下左に示します。 

 この他に、ケースのパネル側にスイッチやボリュームを取付ける穴をあけ、さらに底側のケースの側面に、DCジャックを取付ける穴を開けましたが、ネットで締め付けるスペースが無いことに気が付きました。 トロイ・・・! そこで仕方が無くパテを使って固めて固定することにしました。

 コントロールボックスは、その爪によってしっくりと固定されていますが、やや不安でしたので中央部のななじ部を使ってネジ止めすることにしました。 当然長いネジに交換しています。

 

■ 電気回路の工作

 電気回路は、ユニバーサル基板に部品を取り付け、スイッチ類と配線で接続します。

 DCジャックからの配線や、パネルにスイッチ類を取付けました。

 コントロールボックスへの配線は、0.3mm厚さのリン青銅を使ってスナップ部品を作り接続部にはめ込んでいます。

 出力の取り出し線は、これまたストック品の中から、TOMIX の延長コード(DCフィーダー線)の切れ端を取り出してきて活用しています。 延長コードは1本で、660円もしますので、ピンヘッダで代用しても良いのですが、たまたまストック品がありましたので活用しました。 この様な形のコネクタが一般の市販品にあるといいのですが・・・・。

 出来上がったコントローラです。

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■ 作動テスト

 コントローラの操作スイッチを右の写真に示します。 電源スイッチを入れると電源ランプが点灯して表示されます。 進行方向スイッチは中立位置で停止し、上または下に倒すことによって電車は指定した方向に走り出します。 また、速度調整ツマミによって電車の速度を調整します。

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 作動テストは、机上に簡単なレイアウトを組んでBトレ電車を走らせました。 ポイントは3ヶ所設けましたので、ポイントコントロールボックスを2個追加しましたが、正規品を使用していますので、いつもの様に簡単に増設出来ます。

 速度調整も難なく実施出来、何よりもPWMのキャリヤ周波数が25KHzと高いため、キーンという音がしない事が良いですね。

 でも、一つだけ問題がありました。 あるポイントを操作すると、ランプが消えて電車がチョット停車してしまう状態が発生するのです。 その後はまた復活して走り出すのですが、これは、ポイント切り替えによって発生するノイズの影響ではないかと考えてその対策を検討しました。

 

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■ 原因調査と対策

 まず、ノイズの具合をチェックするために、オシロを持ち出し、電源ラインを調べてみましたが、ノイズらしき現象は発生していませんでした。 でも、電源が切れてしまう現象は発生していました。

 色々調べているうちに、ポリスイッチX50 の前後の足の電圧を観察している時に、その原因が分かりました。 右のオシロの画面は、黄色のCH1が前の足で、青色のCH2が後ろの足の電圧波形です。

 波形の左の方に少し凹んでいる部分は正常にポイント操作出来た時であり、次の波形は、ランプが消灯した場合の波形です。 少し凹んでからゼロまで落ち込んでいるのですが、ポリスイッチの前後足共、同じように落ち込んでいる・・・・・・・・・・という事はポリスイッチが作動して電源が切れたのでは無くて、それより上流で切れた事を示しています。 X65側でも同じような波形でした。

 上流とは?・・・・・・ACアダプタしかありません!

 ACアダプタは、12Vの1A仕様でしたから、1A以上の電流が流れてしまったので、アダプタの安全装置が作動したとの結論になるのですが? 

 また、過電流が流れて自動停止したとしても、1秒後には自動復帰しているとは素晴らしいですね。

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◆ ポイントのソレノイドの抵抗を測る

 露太本線さんのサイトを参考にして5個のソレノイドの抵抗を調べてみました。 その結果、6.7Ω、6.8Ω、7.0Ω、7.1Ω、7.1Ωでした。 もし、電源が12volt でしたら流れる電流は、計算上で1.79〜1.69Aとなります。 ムムム・・・・・・・! これでは、電流制限に引っかかってしまいますね。

 そこで、ポイントコントロールボックスの中立位置を保って、抵抗値を測定しましたが、0.2〜0.3Ωアップするのみでした。 問題となったソレノイドは、低い抵抗値のソレノイドでしたので、この時の電流値が引っかかったものと考えます。

 ちなみに、TOMIXのN-1001-CL専用のアダプターは、12V、1.25Aと書かれていました。 そして、こちらのアダプターを使用した場合には問題は起きませんでした。 このチョットした違いですが、製品毎のバラツキもあります。 

 この結果より、問題を起こした状態ではギリギリの状態で安全機能が働いたものと考え、電源として使用した12V 1A仕様のACアダプター(右の写真)の選択が間違っていたと結論付けました。

 

■ まとめ

 モータドライバBD6231を使った簡易コントローラは、Bトレなどの簡単なレイアウト用に気楽に使える鉄道模型用のコントローラとして、充分に機能することを確認出来ました。 それも、DC12voltのPWM制御ですから、テープ式LEDも使用出来ます。 ただし、電流は1Aまでですが・・・・・・。

 

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■ 追記 (2020/3/20)

 TOMIXのN-1001-CL専用のアダプターは、12V、1.25A 仕様なので、ギリギリ設計なのかと不思議に思っていましたが、「Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記」さんのブログを読み直している時に、その疑問は解決しました。 2019/3/22のブログ「電源電流容量について考える その1.5」に、TOMIXのN-1001-CLコントローラの回路図が説明されております。 そして、サイドコネクター出力回路には、12Ω/2Wの抵抗が電源との間に挿入されている事が分かります。 12 + 7 + α = 19 + αΩになるので電流は? これでソレノイドが動くの? (αは逆流防止ダイオードの抵抗分です) と思いきや、なんと 4700μF のどでかいコンデンサが入っていました

 この大きなコンデンサにしっかりと電気を貯めて一気に放出するので、ソレノイドを楽々駆動させているようです。 自分でもこのコントローラを 2017/1/21 に分解調査しているのですが、全然参考になっていませんね・・・・・・・・・・・・・( ^^) _旦~~ 。

 

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 2020/3/19 作成  3/20 追記