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測定装置の製作 傾斜台式測定法

 

■ 傾斜台方式の検討

 傾斜台を使用した測定法を検討した。 車両に掛る負荷に応じて、車両自身が速度を決めるので走行上の不安定性が解消されるのではないかと考える。

 まず要となる速度の計測方法を検討していたら、手ごろな測定器を見つけた。 理化学ショップの「BeeSpi(ビースピ) -簡易速度計測器-」である。 品番:54032、 である。 ミニマム速度は、cm/s のスケールで、0.5Km/h のスケール速度まで測定出来るので充分である。 

 次に測定台を新しく作った。 車両を連続走行状態に保ちたいため、円形のエンドレス線とする。 線路はKATO製を使用することにし、標準曲線路の R282-45°を8本使用する。 測定部は直線路とし、S248+S62F+S186 の 496mm を取っている。 このため、縦方向の長さは 1100mm 以上が必要なため、800mm×1200mm のベースを作る事にした。

 直径1インチの丸棒を測定台の裏側の4ヶ所に取り付けて、この丸棒の下にブロックを差し込んで傾斜角を設定する。 その傾斜角を与えるために、いろいろなサイズの木片を用意した。 丸棒のスパンとブロックの高さで、傾斜角が計算できるのである。

 次に、計測装置であるが、今回はアナログの電圧計と電流計を用意した。 二つのフィーダー線路からの配線を分岐コネクターに接続し、電流計を通ってパワーパックに差し込めるように配線を加工した。 読み取ったデータは脇に置いたノートパソコンに入力していきます。

 装置全体は下の写真の通りである。 書斎はフローリング床であり、ビー球を転がしても勝手に転がらないので、水平はしっかり出ているものと安心している。

 

 測定方法について説明する。 

 まず、重り車両を用意します。 重り車両は、金属の塊と化していた EH10 の2エンド車両を利用している。 台車はコロガリ抵抗を少なくするため、GMキットの台車を利用し、 1mm のプラ板などを使って細工した。 フレーム内の空間には、水草の重りを詰め込み、精一杯の重量を稼いだ。 その結果、重量は、85.0 グラムとなるも、走行抵抗は、わずか0.5 グラムと抑えることが出来た。 そして、この重り車両は、供試車両に牽引させて走行中の負荷とします。

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 手順(1) 
まず、供試車両の重量を測定しておく。  さらに、重り車両の重量と走行抵抗を測定しておく。 走行抵抗は、右の写真の様に、傾斜線路を設け、車両が転がり始める傾斜角から算定している。
 手順(2) 
馴らし運転を実施する。 供試車両のモータを温めるため、3分程度の走行運転をしておく。
 
 手順(3)
台の下にブロックを差し込み、傾斜勾配を設定する。
 手順(4) 
供給電圧を設定する。 走行場所によって電圧が変動するので、速度計を通過する時の電圧が、設定値となるように調整すること。
 手順(5) 
車両通過後、速度計のリセットボタンを押し、測定可能状態にし、車両が1周してくるのを待つ。 この間に電流計の変化を睨んでおく。
 順(6) 
車両が速度計を通過する時の電流値を読み取る。 そして、速度計の数値を読む。 速度計は計測した数値を表示したままなので、後からゆっくりと読み取る事ができのである。
 手順(7) 
読み取ってそれぞれのデータをパソコンのExcelに打ち込みグラフ化する。

 

■ 測定結果

 実際の模型車両を走らせて測定してみた。 車両は、EF58-60 号機である。

◆ 車速・電圧特性

 まず、車速・電圧特性から測定した。 この特性は、平坦路単機走行状態での特性であるので、傾斜を水平状態にし、機関車単体で走行させたものである。 この時の、供給電圧と電流、および速度を測定し、グラフ化したものが下のグラフである。 今回は速度計測の上限が無いので 8 Volt 近くまで上げて見た。 データを見るかがり、以前測定したデータと同等と判断している。 

 

◆ 牽引力・車速特性

 次に牽引力を測定する。 今回は 4.5 Volt 一定で測定することにした。測定は、特性の傾向を見たいので、牽引力が大きな状態からマイナスの制動状態まで連続して測定した。 また、重り車両を併用して測定している。

 結果はご覧の通りである。 制動領域でも明確に測定出来ている。 思っていた通りにS字カーブ的な特性を示しており、メカニズムを考えるヒントにもなると考えている。 電流値も制動領域で上昇しているのも、特徴と言えよう。 この方式の欠点は、車輪が空回りして車両が止まってしまう粘着領域での牽引力を測定出来ないことである。

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■ 測定台の改良

 データとしては意図通りの綺麗なデータを取る事が出来ていると評価している。 しかし、傾斜を設定するするために木片を一回ずつ入れ替える方法は、さすがに非能率であった。 そこで、連続的にリフト出来るよう工夫することにする。

 リフト装置の連続化と共に、今回配慮した点は登り坂の手助けである。 急な登り坂ではスピードダウンして最後には車両は止まってしまい測定限界となる。 駆動側の粘着限界である。 しかし、下り坂では逆に段々スピードがアップして何処までも走らせることが出来る。 制動側の粘着限界を超えても走らせる事さえもできる。

 今までの測定データを見ると、この制動側の粘着限界を超えても、少しは測定して於いた方が良いと思われるケースが多くあった。 しかし、この状態での測定を実施するには登坂限界を超えた傾斜にする必要があり、動力車が上の峠まで登ってくれないのである。 そこで、この様な時には傾斜台の下側を手で持ち上げ、傾斜を緩くしてやる 「登り坂の手助け」対策が必要がある。 峠の上に登ってしまえば、もとの急勾配の下り坂に戻せば良いのである。

 このための工夫として台枠を2重構造にし、勾配を緩和する方向に手動で持ち上げる事が出来るようした。

 台枠のヒンジ部は蝶番を使用して回転出来るようにし、リフト装置は長めのナットとボルトと組合せて手動式ジャッキとして機能するように組み込んだ。

 完成した状態を下に示す。 傾斜角は、測定台の両側で床からの高さを測定して計算している。

 こうなると、次の改善目標は明らかである。 測定を出来る限り自動化しよう!

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