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鉄道模型工学  電圧降下の時間的変化 その1

 先回報告した「電圧降下の時間的変化とLOCOオイルの効果」では KATO製EF81-81号機の電気機関車を使用したが、集電機構が異なるTOMIX製の電気機関車でも同じ実験を実施することにした。 動輪の軸受構造と集電機構が異なるため、異なる結果を期待したのであるが、やっぱり!という結果が得られた。 

 

 

■ TOMIX製電気機関車の動力台車の構造

 今回、実験に用いたのは、TOMIX製で品番が2175の国鉄ED75-700形電気機関車(前期型)、ED75-710 号機である。 構造については「電圧降下について考察する」で紹介している。 KATO製のピポット軸受方式とは構造的に異なっており、性能特性でもその違いが表れている。 駆動機構の摩擦抵抗が大きいため、ウォームギヤに掛る力が逆転する遷移点が10グラムもあり、KATO製の2〜3グラムと比較しても可なり大きな値を示している。 これは軸受機構の違いと判断する。 摩擦抵抗としては、ピポット軸受の方が有利である事はうなずける。

 一方、集電部の電圧降下量は、非常に小さいことに注目してほしい。 集電性能が不安定なピポット軸受形より、接触シュー形のほうが集電性能は安定しているようである。

 

■ 実験方法とその結果

 電圧降下の時間推移を観察する実験は、前回のKATO製EF81-81号機と同じ方法で実験した。 性能測定後であったので、一度分解して各部をクリーニング後に、再組付けを実施して測定を開始した。

 その結果を下に示す。 御覧のように、EF81-81号機のようにだんだん増加する事無く、かえって電圧降下量が小さくなっていくことに驚いて観察していた。 D値のデータを見ても、データのバラツキが少ないのである。 これは安定した集電性能をはっきりと示していると判断している。 実験は、スターから終了まで、660回測定し、測定台を330回周回している。 この間は、途中の10分間の停止時間があるものの、1時間38分も連続走行させている。

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 また、スリップ率のグラフを見ていても、LOCOオイルを塗布した時のように、増加する事はなく、安定した値を示している。 しかし、走行途中で、走行音が急に変化したので、一端車両をとめ、(1) トントンと車体を突いてまた走行させると、再び順調に走行始めた。 電圧降下量やスリップ率のデータには異常が無かったので、何か異物か詰まったり、引っかかったのではないかと考えたからである。

 そして、速度データのグラフもチェック出来るようにして観察を続けた。 (2) 2度目も同様な処置のよって回復したが、(3 3度目(204回目)からはそのまま様子を見る事にした。 すると暫くして、自然に回復したが、(4) 231回目からは速度が低迷して走行していたが、(5) 320回目からはもとの状態に回復した。 その後暫くは安定していたものの、(6) 再び速度低下をきたし、なかなか回復しないので、モータ焼損を心配して、(7) 480回目で停止させた。

 

 モータのある車体部分を触ってみても、少しあったかくなっている程度で異常とは思えなかった。 そこで、同時に測定していたモータ回転数と電流値のグラフも追加して、どこか異状はないか観察したが、電流値には異常はなく、ただモータの回転数が落ちているだけであった。

 走行音は確かに変化していたので、回転数が落ちているのは理解できるが、モータ端子電圧や電流値が変わらずに、回転数だけ落ちるには?

 

 自分には、これ以上原因を追及する知恵はないので、連続回転によってモータの調子が悪くなったと判断して、10分経過後、実験を再開して、そのまま走行させた。 何故かマイナスのスリップ率を示すも、その後データは落ち着き、当初の値よりも少し速度や電圧降下量は変化していたものの、その後安定していたので実験を終了させた。

 

 この途中状態で何が起こっていたのか、理解に苦しむが、当初の目的であった電圧降下量の時間推移のデータは、バッチリと得る事が出来た。

 このTOMIX製のED75-710号機は、KATO製のELモデルと比較して、駆動機構の摩擦抵抗が大きいが、電圧降下量は非常に小さいと言える。 これは集電子の構造的な差異のよるものと考えられる。 動力車に於いては、多少駆動機構の摩擦抵抗が大きくても、その分、モータのパワーを大きくしておけば問題無い。 しかし、電圧降下量が小さい事はメンテナンス頻度を少なくする事が出来る事なので、この方が動力車としては有利かも知れない。 そして、時間経過による各部の汚れによる電圧降下量の推移をみても、その集電性能は安定していると言えよう。

 車輪とレールの汚れに関しては、KATOとTOMIXは同じと思っていたが、今回の電圧降下量の結果からでは、レールも汚れていないと思われる。 実際に指で撫でてみても殆ど汚れが観察できなかった。 軸受部の集電が安定していると、車輪の汚れも少ないのかな?

 但し、1台ずつでの実験結果で断定するのは早いので、実験数を増やす必要があるだろう。

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■ 実験のN増し

 そこで、TOMIX製の電気機関車で同じ実験を追加実施することにした。 今回は、手持ちのTOMIX製の電気機関車の中で、最も新しいモデルであるEF210-109号機を対象とした。 先回のED75-710号機では、電圧降下量が非常に小さかったが、今回のEF210-109号機はそれより大きいので、時間推移に注目して実験した。

 

 

■ 実験方法とその結果

 電圧降下の時間推移を観察する実験は前回と同じ方法で実験した。 ただし、実験前のクリーニング方法は、「クリーニング方法の違いによる影響」にて説明したクリーニング方法Cで実施した。 勿論台車部分は、一度分解して各部をクリーニング再組付けを実施して測定を開始した。

 実験条件は、無負荷状態、( と言っても測定車を牽引しているので、1.3グラムの負荷が常に掛っている ) で、黙々と周回させて、その時の様子を測定している。

 走行条件は 

である。 また、0〜450回( 0〜225周) までは連続走行させている。 時間は62分間、即ち1時間も連続走行させた。 速度の低下が顕著に表れ出したが、急用が出来たため、ここで実験を中断し、翌日その続きを再開させた。 再開に当たっては、レールと車輪を方法Cでクリーニングする。 451〜570回まで18分間走行させる。 その後、集電シューの部分にクリーニング液を垂らして実験を再開する。 571〜780回まで31分間走行。

 この実験結果を下に示す。

 電圧降下量はED75-710号機のように、だんだん小さくなって行かなかった。 期待はずれである。 そして一度は上昇するも、その後だんだんと下がって来るが、途中からまた上昇している。 しかし、走行は安定しており、走行音も変化はなかった。 D値のデータを見ても、データのバラツキが少ないのである。 これは安定した集電性能を示しているとおもわれるが、電圧降下量がこのように変動する原因は、よくわからない。 電流値が少しずつ上昇しているのは、どこかの摩擦抵抗が大きくなってきたためなのうだろうか?

 中断後、レールと車輪を方法Cでクリーニングしたので、電圧降下量が少しは低下しているのではと期待したが、高止まりでとなっている。

 これも期待を裏切られたが、と言う事は、それまでの電圧降下量の変動は、レールと車輪の間の電圧降下ではない事を意味する。 すると、集電シューの部分での電圧降下なのだろうか。 そこで、570回の走行後に集電シューの部分にクリーニング液を垂らしたのである。 その結果は、やはり電圧降下量はドスンと下がるものの、すぐに上昇を始めている。 早とちりかも知れないが、集電シューは意外と早く汚れると言うことではないだろうか。

 中断後の運転再開時に、電流値が高く、速度が遅いのは、モータが冷えていたからと勝手に解釈している。 また、集電シューのクリーニングは、電流値がだんだん下がっていっているが、液が軸受などの摺動部に浸み込み、摩擦が小さくなったのではないかと想定するのであるが、何とも言えない。 でも、この方法は影響度合いが良く分からないないので、推奨出来ない方法と考えます。

 

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■まとめ

 実験前は、TOMIX製のED75-710号機の様なデータを期待していたが、見事に裏切られてしまった。 構造的には殆ど同じなのに、どうして違ってくるのだろうか、腑に落ちない点が多い。 やはり、1個や2個の測定データで判断するのは危険であるとの教訓としておこう。

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