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鉄道模型実験室  電圧降下の時間推移(2)

■ はじめに

  先回報告した「電圧降下の時間推移」では、KATO製の電気機関車を使用したが、集電機構が異なるTOMIX製の電気機関車でも同じ実験を実施することにした。 動輪の軸受構造と集電機構が異なるため、異なる結果を期待したのであるが、やっぱり!という結果が得られた。 

 

■ TOMIX製電気機関車の動力台車の構造

 今回、実験に用いたのは、TOMIX製で品番が2175の国鉄ED75-700形電気機関車(前期型)、ED75-710 号機である。 手持ちの車両の中で数少ないTOMIX製である。 この車両の分解調査と動力特性は、事前に実施しているので「マイコレクションのED75-710 号機」を参照ください。 その時の調査で得られた動輪周りのイラストを右に転記する。

 このTOMIX製車両は、動輪はφ2.4mm の軸部で台車フレームによって軸支されており、そのφ2.4mm の軸部の上側を集電子がバネによって押さえることによって接触し、電気の通電回路を形成している。

 これは、KATO製のピポット軸受方式とは構造的に異なっており、性能特性でも損違いが表れている。 上記の測定結果からは、牽引力特性のパターンの違いが表れており、駆動機構の摩擦抵抗が大きいため、ウォームギヤに掛る力が逆転する遷移点が10グラムと読み取られ、KATO製の2〜3グラムと比較しても可なり大きな値を示している。 これは軸受機構の違いと判断する。 摩擦抵抗としては、ピポット軸受の方が有利である事はうなずける。

 しかし、集電部の電圧降下量は、非常に小さいことに注目してほしい。 集電性能が不安定なピポット軸受方式より、接触シュー方式のほうが集電性能は安定しているようである。 そこで、連続走行を行って、集電部の汚れによる電圧降下量の推移を実験してみる事にした。

 

■実験方法とその結果

 電圧降下の時間推移を観察する実験は、前回のKATO製EF81-81号機と同じ方法で実験した。 性能測定後であったので、一度分解して各部をクリーニング再組付けを実施して測定を開始した。

 その結果を下に示す。 御覧のように、EF81-81号機のようにだんだん増加する事無く、かえって電圧降下量が小さくなっていくことに驚いて観察していた。 D値のデータを見ても、データのバラツキが少ないのである。 これは安定した集電性能をはっきりと示していると判断している。 実験は、スターから終了まで、660回測定し、測定台を330回周回している。 この間は、途中の10分間の停止時間があるものの、1時間38分も連続走行させている。

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 また、スリップ率のグラフを見ていても、LOCOオイルを塗布した時のように、増加する事はなく、安定した値を示している。 しかし、走行途中で、走行音が急に変化したので、一端車両をとめ、トントンと車体を突いてまた走行させると、再び順調に走行始めた。 電圧降下量やスリップ率のデータには異常が無かったので、何か異物か詰まったり、引っかかったのではないかと考えたからである。

 そして、速度データのグラフもチェック出来るようにして観察を続けた。 2度目も同様な処置のよって回復したが、3度目(204回目)からはそのまま様子を見る事にした。 すると暫くして、自然に回復したが、231回目からは速度が低迷して走行していたが、320回目からはもとの状態に回復した。 その後暫くは安定していたものの、再び速度低下をきたし、なかなか回復しないので、モータ焼損を心配して、480回目で停止させた。

 モータのある部分の車体を触ってみても、少しあったかくなっている程度で異常とは思えなかった。 そこで、モータ回転数と電流値のグラフも追加して、どこか異状はないか観察したが、電流値には異常はなく、ただモータの回転数が落ちているだけであった。

 走行音は確かに変化していたので、回転数が落ちているのは理解できるが、モータ端子電圧や電流値が変わらずに、回転数だけ落ちるには?

自分には、これ以上原因を追及する知恵はないので、連続回転によってモータの調子が悪くなったと判断して、10分経過後、実験を再開して、そのまま走行させた。 何故かマイナスのスリップ率を示すも、その後データは落ち着き、当初の値よりも少し速度や電圧降下量は変化していたものの、その後安定していたので、実験を終了させた。

■まとめ

 この途中状態で何が起こっていたのか、理解に苦しむが、当初の目的であった電圧降下量の時間推移のデータは、バッチリと得る事が出来た。

 このTOMIX製のED75-710号機は、KATO製のELモデルと比較して、駆動機構の摩擦抵抗が大きいが、電圧降下量は非常に小さいと言える。 これは集電子の構造的な差異のよるものと考えられる。 動力車に於いては、多少駆動機構の摩擦抵抗が大きくても、その分、モータのパワーを大きくしておけば問題無いので、電圧降下量が小さい事は、メンテナンス頻度を少なくする事が出来る事なので、この方が動力車としては有利かも知れない。 そして、時間経過による各部の汚れによる電圧降下量の推移をみても、その集電性能は安定していると言えよう。

 車輪とレールの汚れに関しては、KATOとTOMIXは同じと思っていたが、今回の電圧降下量の結果からでは、レールも汚れていないと思われる。 実際に指で撫でてみても殆ど汚れが観察できなかった。 軸受部の集電が安定していると、車輪の汚れも少ないのかな?

 但し、1台ずつでの実験結果で断定するのは早いので、今後は実験数を増やす必要があるだろう。