■ いきさつ
先回の報告で、動力特性はウォームギヤの歯面のねじれ角が大きく寄与していることが予想された。 このため、このウォームギヤの関係をモデル化することによって、駆動状態と制動状態でのモータトルクと動輪トルクの特性勾配の差異などを解析できるつ踏んでいる。 そこで、今まで進めてきた車両モデルの構成を見直し、新たにウォームギヤの歯面に注目したモデル化試みた。
■ ウォームギヤの噛合い状態
まず、ウォームギヤの噛合い状態を考えてみよう。 これは以前報告した「制動領域での動力特性」(2014/6/18)で検討しているが、数式を使用したモデル化までは実施していなかったので、今回挑戦することにした。
まず、関係する項目を整理するために、簡単化したイラストで噛合い状態を表現した。
駆動時と制動時では、ウォームギヤの歯面に掛かる力は逆転している。 そこでこの時のウォーム側が受ける力に注目してその力関係を上記の様に表示してみた。 かのニュートンの大法則 F = mα で示された様に、その物体が受けている力関係を整理する事は、力学の基本中の基本なのだ。 なお、ウォームの軸受けから受ける力(ラジアル力)とモーターから受けるトルクについては、省略している。
歯面に直角に働く抗力 fm のよって、摩擦力 μ・fm が生じる。 この両者の関係は摩擦角αとして表現されている。
この関係は、駆動時でも制動時でも同じであり、抗力 fm と摩擦力 μ・fm の合力を合成力 f1 とする。 この合成力 f1 をウォーム軸方向のスラスト力 fs とラジアル方向のラジアル力 fr に分解する。 ここでねじれ角をαとすると、
駆動時: 制動時:
ここで示したスラスト力 fs は、ホイールにも反作用として働き、それはホイールトルクと作用するし、また、ラジアル力 fr は、ウォームのトルクとなり、モータから作用するモータトルクと釣り合うことになる。
図からも分かるように、駆動時と制動時を比較して、同じスラスト力 fs であったとしても、 ラジアル力 fr は異なってくるのが明白である。 そしてその差は、ねじれ角βによるものである。 そして、 ラジアル力 fr と スラスト力 fs の関係は、
駆動時: 制動時:
ここで、動力伝達機構の関係を見ておこう。 右にイラストを示す。 まず、ウォームのねじれ角を求めておこう。 ねじれ角はリード角とも呼ばれているが、ねじれ角をα、ウォームのピッチ円直径を d1 、リードを L とすると、
tanβ = L / πd1
となる。 ここで、リード L は、ウォームが一回転する間に歯が進む量を示し、2条ネジの場合は、歯のピッチの2倍となるのだ。
ここで注意しておくことは、例え、2条ネジあるいは3条ネジにしたとしても、それに応じてピッチ円を大きくしてしまえば、なじれ角は大きくならないのである。 ウォームギヤの逆孤立を上げるには、2条ネジあるいは3条ネジにする事ではなくて、なじれ角を大きくするのが重要なのである。
ウォーム歯面で発生しているラジアル力 fr や スラスト力 fs はピッチ円上で作用していると考えられるので、この力を、ウォームトルク t1 とホイールトルク t2 に換算するとすると、
t1 = fr ・d1/2 t2 = fs ・d2/2
となる。 これらの関係式を整理すると次のようにまとめる事ができる。
また、摩擦力に関してはまだよくわからないので単純に固定項だけを考える事にしておきます。
そこで、 ウォーム軸の固定摩擦を Rw とすると、モータトルク Tm' との関係は、
t1 = Tm' - Rw
となる。 また、動輪トルク Td に対して動輪周りの摩擦トルク Rd を加味した値を修正動輪トルク Td' とすると、
Td' = Td + Rd
となり、さらに、ホイールと動輪間の減速ギヤ比を i0 とすると、
t2 = Td' / i0
となる。 ここで、先回のモデルでははっきりしていなかった自分自身の車体重さの勾配に対する影響を、車両要因から環境要因として分離しておくことにした。 即ち、カプラーに掛かる牽引力 Fk から勾配要因である Wosinθを分離して、有効駆動力 F2 とすると、
Fk = F2 - Wosiniθ
F2 = F1 - R2
となる。 ここで、R2 はテンダー車や従台車などの動輪以外の車輪の摩擦力を示す。
これらの一連の関係を、「車両の静的特性のモデル化と特性解析 その1」(2012/1/1)で示したブロック図を修正して下に示す。 この拡大図。
ここで赤色で埋めた変数は、動力特性の測定中に測定可能な変数を示している。 また、青色で埋めた定数は、分解調査や単独テストで測定可能な定数を示す。
そして、この原稿を記述中にオオポカに気が付いた。 ねじれ角βとスリップ率βの記号がブッキングしているのだ!
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次に予定しているC59-123号機での解析結果の報告を優先し、その後、最終的に修正することにしますので、ご容赦下さい!