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鉄道模型実験室   96型SLの比較と重連運転について

 

 自動測定システムにて、96型SLの動力特性を再調査した。 その結果を比較しながら、各車両の違いと、重連運転の可能性について検討してみよう。

 

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■ 96型SLの動力特性の一覧

 各車両の特性データは、「マイコレクション」の「蒸気機関車リスト」の各ページに記載したグラフを少し縮小して表示しています。 グラフのスケールが不統一なのでごめんなさい。 詳しくは、各車両のページをご覧ください。

車両番号 29611号機 69659号機 39679号機 29608号機
メーカー
KATO
KATO
MICRO ACE
TOMIX
品番
2014
2015
A0327 ばらし
2050
車両重量
64.3 グラム
65.1 グラム
71.3 グラム
58.0 グラム
動輪荷重
44.7 グラム
46.3 グラム
54.5 グラム
41.7 グラム
発売日
2009年10月再生産
2002年10月
2003年1月
1999年

 

 速度特性、即ち、平坦路単機走行時の、速度・電圧特性と電流・電圧特性を下に示す。 グラフのスケールが不統一なので、グラフのパターンに注目して下さい。 注目点は、特性の直線性とバラツキです。 KATO製の96が安定しているのが判ります。

 次に、牽引力特性を記載致します。 この特性も、パターンとバラツキに注目して下さい。 メーカーや個体によってそれぞれ異なっています。 KATOの同じ96でも様子が異なるのは、生産時期によって少し変更された仕様の違いではないかと思われます。 個体差にしては差が有り過ぎるからです。

 

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■ 速度特性の比較

 次に、各車両の違いについて、もうすこし詳しく見て行きましょう。 まず、速度特性について、各車両のデータをひとつにまとめて表示したグラフを右に示す。

 KATO製の29611号機と69659号機は、同じシリーズなので、ほとんど同じ特性を示している。 しかし、他の車両については、電圧が5.0 ボルトの場合、MICRO製の39679号機はKATO製の約1.5倍、TOMIX製の29608号機は逆に0.5倍の速度となっていることが判る。

 

■ 重連走行の検討

 この速度特性は重連走行を検討する場合に、重要な情報を提供してくれます。 動力車両を重連させる場合には、

などが言われています。 その理由については、鉄道模型工学概論の重連特性にて記述しましたが、要点は、重連させる車両の駆動状態を合わせることです。 片方が駆動状態である時に他方が制動状態であれば、お互いが 引張やっこ かあるいは 押しやっこ している状態になります。 これによってギクシャク運転や脱線などの不具合を引き起こすと考えています。 出来るならピッタリと合わせるのが最適ですが、まず無理な場合が多いはずです。 そこで、少しでもその状態に近づけることが大切です。

 この駆動状態か制動状態かを分ける境は、カプラーに掛る外力がゼロ、即ち、平坦路単機走行状態であるということです。 カプラーに掛る力がプラスであれば、牽引している状態、即ち駆動状態であり、マイナスであれば押されているので制動状態であると言えます。 そして、この平坦路単機走行状態での電圧に対する速度を示したグラフが、とりもなおさずこの「速度特性」のグラフなのです。 従ってこのグラフから、重連に適した車両同士であるかどうかが判別出来るのです。

 重連している場合には、それぞれの車両について、

と言う制約条件があるので、この条件にて重連させたい車両の特性を見て行けば良いことになります。

 即ち、上のグラフから、KATO製の29611号機と69659号機は、電圧に対する速度が殆んどピッタリと一致しているので、重連させる場合には問題ないことが判ります。 また、TOMIX製の29608号機は他の車両とはかけ離れ過ぎているので無理であると判断出来ます。

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 では、MICRO製の39679号機とKATO製の96とはどうでしょうか? 速度差がかなりありますので無理のようですが、次の牽引力特性からもう少し詳細に検討してみましょう。 

 MICRO製の39679号機とKATO製の69659号機について、5ボルト状態の牽引力特性データをひとつのグラフ上に表示したのが、左のグラフです。 平坦路単機走行時、即ち、牽引力がゼロの状態の速度が、80Km/h と 120Km/h と異なっていますが、この車両を重連させると、「同じ速度で走行している」という制約を満たすには、39679号機が引張役の機関車で、69659号機がブレーキ役の機関車として、赤線で示した 90Km/h の状態で走行していることになります。 また、グラフに記入した太い赤線が合計した牽引力を示しています。

 二つの機関車の牽引力は合計してゼロになり、なにも牽引していない状態にも関わらず、お互いが引張やっこか、あるいは押しやっこして走っていることになります。 足の早い39679号機を前補機、足の遅い69659号機を本務機とすると、前補機が常に引張ので、引張やっこの状態になります。

 でも、お互いに粘着領域のスリップ状態にはまだ入っていないので、力を出しているものの、涼しい顔をして走行しているでしょう。 勿論、引張やっこしている分、余分な電流を消費しているのです。

MICRO製とKATO製の96の重連は可能である。           

 牽引する負荷が増加すると、ブレーキ役であった69659号機が応援に入り、2両で協力して力を出す状態になります。 この様子は、グラフに記入した太い赤線、即ち、合計した牽引力を見て行けば理解できると思います。 このように、39679号機の牽引力特性がやや寝ている特性であり、69659号機が立っている特性であるので、協調運転が可能となったともいえるのです。

 では、実際に重連させて走行させてみたくなりますが、なんと、3年も前に実施していました!

 この、3重連の様子について「ミニレイアウトを走る96の3重連」として、鉄道模型レイアウト集の「遥友鉄道 (3)大改造」の中でも記述していました。 さらに、2010/04/23 にトレイン・トレインのブログに投稿していました。 その内容を下に転記します。

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  我がミニレイアトの遥友鉄道において、96の3重連で貨物列車を引かせてみました。 R140×150°のヘアピンカーブ、ミニポイントなどの難所を力強く走行しています。 SLは、先頭から、マイクロの39679、カトーの9600とデフ付きの3台です。 貨車は、2軸貨車は脱線しやすいため、ミニレイアウトに適応する短いボギー車を集めました。 67パーミルの坂道は、2重連でも充分に登りますが、マイクロの96が手に入りましたので3重連にして見ました。 半径140mmのカーブを走行させるため、重連部の連結部を細工しました。 見栄えは少し悪いのですが、下左の写真のごとく連結しています。 加工内容は、下右の写真のように、重連部品を切断加工し、0.5 mm の真鍮線を使って首振り可能に加工しています。

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 このように、動力特性を詳しく知ることにより、自分の愛する車両達の特性が理解できるようになりました。 3年前の現象も理解できるようになりました。 そして、それぞれの特徴を生かして、Nゲージを楽しんで行きたいと思います。

 さらに、ムービーも作っていました。 「貨物列車 96の3重連」 ミニレイアウトをスムーズに走行しているのがご覧頂けると思います。

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 2013.4.12 作成   2016/5/4 追記