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鉄道模型実験室  小型蒸気機関車の重連 (その3) 南薩5号機とA8-600号機

■ はじめに

 小生のコレクションでは、ミニレイアウトにマッチする小型の蒸気機関車が揃ってきた。 小さいスペースでぐるぐる巻きの路線や、高低差のあるレイアウトで、機関車を重連させたり補機を連結させて楽しんでいる。 その小型の蒸気機関車の幾つかの重連組合わせについて紹介しよう。 今回はワールド工芸製の南薩5号機とA8-600号機を重連させてみた。

 

■ 南薩5号機とA8-600号機の重連

 小型蒸気機関車の重連組合わせについては、「小型蒸気機関車の重連」(2013.12.6作成)にて紹介したデータをもとに検討した。 今回も速度の揃っているワールド工芸製の南薩5号機とA8-600号機を重連させてみることにする。 しかし、テスト走行を実施中に南薩5号機にトラブルが発生し、意外と苦労してしまったが、その顛末は別途報告するこにしよう。 いろいろいじくり回して、なんとか正常に走行することが出来たので、やっと重連走行の実験が出来るようになった。

 下の写真は、動力特性の測定後に、ミニレイアウトを走行させている状態である。

走行状態の動画:  「小型SLの重連 南薩5号機とA8-600号機」

 

 次に、重連時の動力特性を測定し、単独での特性と比較しながら重連時の色々な動きを考察することにする。 それぞれの車両の特性データは、「マイコレクション」の「南薩5号機」と「A8-600号機」に示しているが、南薩5号機のデータは安定化電源を使用する前のデータであるため再測定を実施している。

 

● 速度特性の測定

 客車などを牽引しない状態で平坦路を走行する、即ち無負荷での状態で走行させ、線路への供給電圧を変えて速度と電流を測定したグラフを右に示す。

 平坦路単機走行状態に於いて、南薩5号機とA8-600号機では、殆んど同じであり速度差はないと言える。 あえて言えば南薩5号機の方がすこし足が早そうなので前に連結させることにする。 即ち、本務機をA8-600号機とし、南薩5号機を前補機として重連させることにした。

 車速・電圧特性を見ると、重連時の速度は、単独走行の場合と殆んど重なってしまうように見えるが、車速は低めでバラツイテいる。 

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 また、電流特性を見ると、重連時の消費電流は、各車両の消費電流の合計とほぼ同じであり、余分に電流を消費していないようである。

 

● 牽引力特性

 南薩5号機の再測定を実施しまデータはマイコレクションを参照して下さい。 ここでは重連時の測定データを右に示すが、供給電圧は5Volt の場合だけを測定している。

 この重連時の特性は予想外のパターンを示した。 走行はかなりギクシャクしておいり、色々なトラブルがあったのでこんなもんかと思ってもみたが、それにしても牽引力の勾配が駆動側と制動側でこんなにも異なるパターンは初めてである。

 これらの個別のデータを見比べてもよく解らないので、データを重ねて見ることにしよう。

 まず、牽引力・車速グラフから見ると、牽引力は点線で示した線までたし算されるはずなのに、理屈どうりではないのに愕然としている。

 また、牽引力・電流値グラフからでは、先回も説明したようにグラフからは、不具合状態を読み取れない。

 そこで、小型蒸気機関車の重連 (その1)でトライしたように、電流を縦軸に、車速を横軸に取ってグラフ化してみたのが下のグラフである。 各車両が単独の場合の電流値をたし算したのものを点線で示すが、測定データはそれをかなり下回っている。 そして駆動側と制動側のスリップ領域に近ずくと足算の値に一致してくるが分かる。 このグラフより次の様に原因を推定してみた。

 

 各車両の電流値は重連時のモータ電流を直接測定しているものではない事に注目すると、重連時にはモータ電流がそれほど流れていないと考えられる。

 ズバリ、原因は集電不良と推定する。 片方あるいは両方の車両の集電不良により電圧降下が発生し、モータの端子電圧が低くなっているのではないだろうか。 このため、充分なトルクが発揮出来ず結果として牽引力が小さくなっているのである。 この結果、消費電流も小さくなった状態で走行しているため、この領域での電流値が小さくなっていると考えられる。

 そして、スリップ領域に近ずくとゴシゴシと磨きが入ったり、負荷によって車軸に力が掛り、軸受の接触が改善して集電不良が解消されるのではないだろうか。 これによって電圧降下も少なくなり、充分な電流が流れるので牽引力もアップすると推定するのは、無理無理なことだろうか?

 なお、今回の実験は、

  1. 最初の重連時の動力特性の測定。 この時、南薩5号機でサイドロッドと第1動輪の干渉発生により、動輪が度々ロックするので、測定を中止する。
  2. 思い切ってサイドロッドと第1動輪をピン結合させる工作を実施。 ギヤ駆動とロッド駆動のタイミング調整で苦労する。 サイドロッドを外してもギクシャク走行であったため、何度も分解掃除を実施、原因は集電不良か?
  3. やっとスムーズに走行出来るようになったので、重連時の動力特性の測定を実施。
  4. 南薩5号機の単機での動力特性を測定。
  5. ミニレイアウトでの重連走行を撮影。

の順序で実施した。

 

■ まとめ

 今回は、重連させた場合に発生する新たな現象に遭遇した。 原因の追求は充分ではないが、なにやら面白そうな現象である。 再び測定してみて再現出来るかどうかを確かめるべきであるが、 原因推定が当たっていれば、模型車両の “ご機嫌具合” によるので、再現性は定かでない。 でも日を改めて実施する価値は有りそうなのでいつの日か挑戦してみよう。

 

■ 再測定の実施

 気になっていた重連時の特性について、やはり再測定を実施した。 結果は予想どうりであった。 少し走らせているうちに当りがついて、通電性が改善されたと解釈すべきであろう。 再測定のデータを下に示す。

 前回のデータに重ねてみると、その違いがハッキリします。

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 また、前回の考察にて牽引力・速度と電流・速度のグラフに示した推定線に近いデータを示しています。 この事は、原因推定がやはり正しかったのではないかと判断しています。

                            ( 2014.1.13 追加測定と追記 )