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鉄道模型実験室  SLのモータ回転数を測定しよう その6  まとめ

■ はじめに

 やっと、SLのモータ回転数をなんとか測定出来るようになったが、測定方法の制約によりどのモデルも測定できるとは限らなかった。 なんとか3台は測定出来たので、その特性を比較しながら、今回のプロジェクトのまとめとすることにする。

 

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■ 測定方法の制約

 レポートのその4 「SLのモータ回転数を測定しよう その4  またも・・・・」にて報告したように、モータ回転数を検知するためのマーキングをモータのロータにペイントした場合、測定上の問題点を報告した。 この問題をクリアー出来なかったので、ロータ以外の場所にマーキングする必要があったが、多くのSLのモデルの場合はその適切な場所が見つからなかったのである。

 例えば下記の写真で示すモデルの場合は、細いモータ軸とウォームホイールしか露出していないのでマーキング出来なかったり、重りやフレームが覆いかぶさって、モータ軸を覗くことも出来なかったのである。 モータのロータはしっかり覗くことが出来るのに・・・・・・・・・・。

 従って、測定出来る車両は、フライホイールがあるモデルや、外から覗けるカップリングを有するモデルに限られるので、マイクロ系は全滅と思われる。 小生がサイドロッドやモータのロータを測定対象にした意図が分かってもらえると思うが、自分の技術ではこれが限界である。

 

■ 測定出来た3台のモデルの比較

 現在までに3台のSLの測定が実施出来ているので、その性能を比較しながら、観察してみる事にしよう。 KATO 製の代表的な構造の3車種である。

車両番号 C57-180 号機 C62-36 号機 C62-2 B 号機
メーカー KATO KATO KATO
品番 2013 2019-2 2017-2
発売時期 2006年 再生産品 新品購入 2008年 新品購入 2011年 新品購入
特徴 オーソドックスな構造 ボイラ内にモータを収めった新世代動力
ユニットの96型に続く第2弾製品
D 51-498 (品番:2016-1)に続く、次世代型動力
ユニットでコアレスモータを採用

 なお、下記に示す測定データのグラフは、各モデルのマイコレクションに記載しているグラフをそのままここに転記している。 そして、横並びのグラフについてその表示スケールがまちまちである。 このため、横並びで比較する場合には非常に見難いが、スケールをいちいち変更するのが面倒だったのでそのままにしているが、ご容赦ください。

◆ 速度特性

 平坦路無負荷走行での、速度や電流値を測定している。 C62-36号機が特に遅いことがわかるであろう。

 電流値については、顕著にエコ化しているのが分かる。 ここまで電流値が小さくなると、前照灯の点灯有無を統一しておくべきであった。

 モータ端子までの電気回路損失による電圧の降下量は、0.5〜1.0ボルト程度が一般的と見ていたが、C62-36号機については特に大きく、速度低下の大きな要因と考えている。 フレームとモータ間の回路構造はかなり異なっているのであるが、どこが原因かは未調査である。 また、電圧降下量と電流値は比例関係に見えるが、牽引力特性での様子を見るとそうとは言えないのである。 解析不十分な状態である。

 スリップ率については、牽引力特性にて考察する。

 モータの回転数とモータ端子電圧を示すグラフは、モータの負荷状態を計測していないので厳密には意味のないデータであるが、モータ形式の異なるC62-36号機と、C62-2号機の特性は、偶然にも一致しているが不思議である。

◆牽引力特性

 負荷車両を連結している時の牽引力を測定した。 特性の勾配などから伝達効率などを求めようとしても、モータ単品の特性が未把握なので計算出来ないでいる。 各モデルとも似たようなパターンであるが、C57-180号機では摩擦抵抗が10グラム程度もあるのは調整不良なのだろうか。

 次に注目していた電圧降下量に対し、横軸を牽引力、電流、車速としてグラフ表示してみた。

 横軸を色々な項目で表示してみたが、電圧降下量と明確な関係は見いだせなかった。 期待していた電流値とも比例関係は見いだせなかったのは、がっかりである。

   電圧降下量はどんな場合でも一定である・・・・・・・・・・・・・?

 どうしても理解できない現象である。 参った!

 次にスリップ率を見てみよう。 データは綺麗に取れているのでモータ回転数の計測は成功と言える。 モデルによって、パターンが少し異なっている事が分かる。 また、C62-2号機の場合は測定中にトラクションタイヤが3回も外れている、 このためなのか、スリップ率が大きくなった場合はバラツキが大きくなっており、データの信頼性には疑問符を付けて置くことにする。

 牽引力を動輪の軸荷重で割って摩擦係数を計算したグラフを下に示す。 C57-180号機では特性パターンより想定して、少し滑りやすい特性と推定されるが、如何であろうか。 もう少し色々なモデルのデータを集める必要があると思っている。

 

■ まとめ

 測定上の制約により、測定対象が限られてしまったが、蒸気機関車モデルでもモータ回転数を測定出来る事が分かった。 モータ端子電圧の測定と合わせて、新たな解析が出来るようになったと少し満足している。 今後は測定例を増やして、新たな知見を増やしていきたいと思っている。