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鉄道模型実験室 No.109  バイナリカウンタの動作を観察する

■ はじめに

 先回「モータの無負荷回転特性を測定する」で報告したように、モータの無負荷回転特性を測定した結果と動力特性を測定する測定台での測定結果とが合致しない件について、老人ボケのせいにして誤魔化していたが、その後のモハ102-81号車の測定においても、同様な現象が起きていた。 これは明らかに何かの原因があると判断し、その調査を実施した。

 

■ 使用していた状態

 モータの無負荷回転特性の測定状態と動力特性の測定状態を整理して比較しておこう。

比較する項目 動力特性の測定 モータの無負荷回転特性の測定
車両の状態 走行可能な車両状態 モータのみ組み込んだ状態
回転センサ 同一状態
シールドとその回路、スケッチ 有線通信のための信号ユニットを作る はか モータの無負荷回転特性を測定する
使用カウンタ 途中から CD74HC4020 (TI ) に変更 TC74HC4020AP (TOSHIBA)
モータ回転数カウントのロジック 指定時間でのパルス数を計測する。
パルスカウントは、Arduino内で割込み処理でカウント。
外付けカウンタでカウント。
回転数の計算式 N = 60,000×パルス数÷マーキング数÷計測時間
  単位 : モータ回転数はrpm、計測時間は msec
測定方法 光ゲートを通過中に測定 押しボタンにてカウント開始

 モータの回転数を計測する方法が少し異なっているが、ロジック的には同じと考えていた。 しかし、モハ102-81号車の測定においても、同様な現象が起きていたので、明確の原因があると判断した。 そしてそれは、使用しているカウンターICが怪しいと睨んだのである。

 動力特性測定の場合、カウンタは使用しているもの、実際はパルスが送信されている状態を点滅させるために使用しているのみで、実質的にはカウンタ機能は使用していないのである。 しかし、外付けカウンタでカウントして規定回数になったり信号を送る方式は、以前にサテライト・ユニットで採用してきた方法でもある。 「赤外線通信の確認」参照。 

 

■ カウンターの機能

 ここで、カウンターについて復習しておこう。 使用したカウンターはTOSHIBA 製のバイナリカウンタで、TC74HC4020AP である。 そのデータシートから真理値表とシステム図を抜き出したものを下に示す。

 これより、パルスのタイムチャートを描いてみると下のようになるはずである。

 CLRポートを Low にすると、全ての出力ポートの Low 状態が解放され、CKパルスによるカウントが開始される。

 1番目のパルスが Low に代わるときに Q1 ポートが High に代わり、2番目では Q2 ポートが、4番目では Q3 ポートが、8番目では Q4 ポートが、16番目では Q5 ポートがそれぞれ High に立ち上がる。  こうして、Q8 のポートでは128 個のパルスがカウントされたら、 High に立ち上がる。 Q9 では 256 である。 こうし規定回数のカウント完了の信号が得られのである。

 

■ 実際のパルスを観察する

 モータの無負荷回転特性測定用のシールドを使用してパルスの状態を観察することにした。 先回と同じように、オシロシールドも持ち出し、下の回路図に示す位置にクリップを取り付けてオシロのチャンネルに接続する。 入力電圧のゲインは1/2とした。 こうして簡易オシロで波形を観察した。

   

 パルス設定のジャンパピンを Q8 ポートにセットしてオシロ波形を観察した。

 上左の画面と上右の画面は、時間軸をかえてコピーを取っている。 すなわち、CH2 に示すクロックパルスは 0.15パルス/ms と読み取れる。 そしてCH1 の Q8 のポートでは 64.5 パルスで Low から High に変化している。 次の出力ポートの位置を変えてみよう。

  .

 Q9 ポートでは129パルスで変化しているし、Q10 ポートでは 254 パルスで変化しているのである。 これは想定していたカウント数の半分なのである。

 納得できないので、リセットボタンを押した状態を観察して見ることにした。 その時のオシロ画面を右に示す。 ポートは Q10 ポートでる。 なお、処理プログラムの内容は、「モータの無負荷回転特性を測定する」のスケッチを参照してください。

 リセットボタンを押すとCLRポートが High になり、Q10 ポートは強制的に Low となる。 そして、500msec 後からカウントを開始して、254 パルス後に high 信号を出している。 全くプログラム通りである。

 

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 何を問題にしているかお分かりと思います。

 そこで、確認のために、Q4 ポートと Q5 ポートも観察してみました。 下のオシロ画面に示します。 Q4 ポートは4個のパルスで High とLow を繰り返しています。 Q5 ポートは8個のパルスで!

 この結果を最初に紹介したパルスのタイムチャートと見比べてください。 実際のパルスは、自分が想定していた数の半分なのです。 なんで?

 自分には充分に理解できないので、カウンターの石を変えてみる事にしました。 実験中のシールドに差し込んであるTOSHIBA製のTC74HC4020APを取り外し、TI製の CD74HC4020 石をそこに差し込みました。 ポートの構成は同じなのでこのような取り換えが出来るのです。

 そして同じように観察してみましたが、異なる結果を期待していたのですが・・・・・・・・、残念ながら結果は同じでした。  しかし、Q4 ポートと Q5 ポートでは面白い現象を発見してしまいました! これまた不思議な現象ですね。

 2つのメーカーのデータシートに記されているロジックダイアグラムの図は似ているようですが、どこかに違いがあるようです。 しかし、門外漢の小生にはわかりません。本当にパルスを正確にカウントしているのでしょうか? と言う疑問が沸いてきます。

 

■ 結論

 実際にバイナリカウンタの動作を観察して、今までの疑問点が解決しましたが、しかし、新たな疑問点が沸いてきてしまいました。 単にLEDをピカピカ光らせるためのカウンターであればこのような疑問は問題ないとのですが、測定用として使用する場合には、大問題です。

 そして、何故?と言う疑問は残ってしまいましたが、自分の理解が足りないのかもしれません、測定方法の間違い、回路の間違い、あるいはメーカーの説明書の間違い、など いろいろな疑いが沸いてきましたが、その解決方法がまだ見当たりません。

 70を過ぎた老人の頭の中は、もうぐちゃぐちゃです。 でも、兎に角も以下の事実を認識して測定を続けることにしましょう!

このカウンターIC は、
  Q4 ポートは4個のパルスで、 Q5 ポートは8個のパルスで、 Q8 ポートは64個のパルスで、 Q9 ポートは128個のパルスで、
  Q10 ポートは256個のパルスで、
High とLow を繰り返している。

と覚えておきましょう。

 そして、「測定装置の改善」などで報告した回路でもCD74HC4020を使用しているのであるが、こちらの場合には何故矛盾が出なかったの不思議である。使用を中止した装置の不具合調査は置いておく事にしょう。 だって、データ的には疑問のない測定値が得られているのであるから。 いや、疑問解決の手掛かりになるかも?

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 2016/6/23 作成