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鉄道模型実験室 No.130  パワーユニットを知ろう TOMIXのパワーユニット N-1001-CL

■ はじめに

 パワーユニットを知ろう の第3弾として、TOMIX 製のパワーユニット N-1001-CL の速度特性を調べることにした。

 

■ TOMIX製パワーユニット N-1001-CL の測定準備

 このパワーユニットは、旧モデルのN-1000-CLのリニューアル版で、電源が別部品のアダプター式となっている。 出力仕様は、直流1.2A(0〜12V車両走行用)/12V TCS用/12V 電動ポイントN駆動用)と説明されており、本体とその底面のラベル、およびアダプターとその仕様を下に示す。 スイッチングレギュレーター式のアダプターで、直流出力である。 先回の報告で、パワーユニットの出力波形の観察によりPWM制御の場合の様子を把握することが出来た。

 今回は、ダイヤルの回転具合とPWM制御の様子を調べる。 そのために、まずパワーユニットのダイヤル回転状態を測定する道具を工夫した。 下に示す。

 まず、パワーユニットの側面に木片にて枠を作り、そこに 10KΩの可変抵抗をを取り付けた。 パワーユニットのダイヤル部は、黒いゴムの輪っかを取り外すと具合のよい円筒溝が表れたので、そこにタコ糸を巻き付け、可変抵抗に取り付けたプーリーにその回転を伝達するように工夫した。 プーリーはタミヤのプーリーセットからφ50mm の物を加工した。 タコ糸の張力を保持するために、可変抵抗を取り付けた部分は揺動可能にして輪ゴムで引っ張ている。

  10KΩの可変抵抗には、Arduino から +5volt の電圧を掛けて中間部の電圧をArduino の A5 ポートに入力して回転角情報を取り込んでいる。

 Arduino のシールドは、「モータの無負荷回転特性を測定する」や「モータ特性を測定しよう その5 ロードセル」 で使用したシールドに、追加工作を実施した。 「モータの無負荷回転特性を測定する」で作成されたものに、ロードセル入力のために、A3とA4ポートを使用し、今回はA5ポートを追加した。 これに合わせて、測定項目を追加すようにスケッチも修正している。

 測定状態の全体を下に示す。

 負荷として接続しているモータの回転数や電圧・電流を測定するために、すこしゴチャゴチャとしているが、測定要領はモータの特性を測定する場合と同じである。

 しかし、モータが回転しないダイヤルは左いっぱいに切られている状態でも測定したいために、工夫が執拗であった。 モータが回転しないため規定回数のカウント完了信号が出てこないので、+5volt 信号を手動で発生させる必要があった。 右上の写真の緑色のコードがそのリード線である。 測定スタートボタンを押した後、しばらくしてこのリード線をカウント完了の信号ポートに接触させるという、まったの幼稚な方法であるが、これで充分機能した。

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 なお、10KΩの可変抵抗はB特性であったので、回転角と抵抗値は直線変化であったが、立ち上げリなどのデッド部分が有ったので、そのゾーンを避ける様に調整し、測定中の最小データと最大データをダイヤルのゼロ位置と最大位置とみなして、EXCEL上で修正計算している。

 使用した負荷モータはジュンク品2の2P5S モータで、KATO の GM - 5 タイプである。 この特性は、すでに「KATO製電気機関車 第3期 フライホイール型モデルのモータ 追加」にて特性を測定済みなので、このデータと比較することが出来るのである。

 

■ モータ供給電圧の測定

 今回使用した測定用のシールドの回路の一部を右に示す。 「モータの無負荷回転特性を測定する」で紹介している回路で、A3、A4、A5ポートの追加は記入していないものである。

 モータ電圧は、モータへのプラス回路から、 10kΩと5.1kΩの抵抗を介してGNDに接続しているが、中間部からArduino のアナログポートに取り込んでいる。 これは5ボルト以下に抑えるための回路であるが、ここに、100μFのコンデンサを挿入して、モータ電圧回路の脈動成分をカットしている。 即ち、 10kΩと100μFによるCRローパスフィルタになっており、カットオフ周波数は0.16Hzである。

 確認のために、オシロで観察してみた。 まだ小さな脈動成分が残っているが、殆ど直流であった。

 なお、Arduino で測定された電圧は、 測定回路図からも分かるようにローパスフィルタを通してArduino のアナログポートで測定されており、さらに測定中はモータが 256/2 回転する間に、800〜20,00 回も測定された値を平均平均化した値を示している。 質の高い直流電源を使って測定している場合には、この値は信頼性が高いと言えるが、PWM制御などのパルス波形を持った電源の供給電圧とは言い難い。 この点に注意して、参考測定項目として見てください。

 

■ TOMIX製パワーユニット N-1001-CL の速度特性

 最初にオシロ画面から読み取ったデューティ比をダイヤル目盛との関係を報告する。 いくつかのオシロ画面の例を下に示す・


 オシロ画面から読み取取ることが出来たデューティ比の値を使って、ダイヤル目盛とデューティ比の関係を右のグラフに示す。

 ダイヤルの10%以下の位置では、綺麗な矩形波になっていないのでデューティ比は求められなかったし、80%以上では飽和している。 また、ダイヤルとデューティ比の関係が少し歪んでいるのが分かる。

 さらにモータの回転数についても、デューティ比を横軸にしてグラウ化したものを右に示す。 デューティ比と回転数は直線的であるが、立ち上がり部分はモータの磁力により、すぐには回転を始めないのは、直流電源の場合と同じ理由であろう。

 また、デューティ比と測定されたモータ端子電圧の関係もグラフ化してみた。 回転数と同様に直線的である。

 そして、オシロ画面に示されたパルス波形の平均電圧と、この測定されたモータ端子電圧の関係もグラフ化してみた。

 このグラフより、二つの電圧は比例しているものの、パルス波形の平均電圧の方が低く出ており、さらにマイナスを示す場合もあるのである。

 

● 速度特性のデータ

 測定の目的である、パワーユニットによるモータの制御具合をグラフで表示しよう。 今までは、速度特性の横軸として供給電圧値を取ってきていたが、ここではパワーユニットのダイヤ位置を示す値を採用してグラフ化している。 即ち、ダイヤルの回し具合によって、モータはどのように回転するのかを見ているのである。

 ダイヤルと回転数の関係は、少し曲がっているがこれはダイヤルとデューティ比の関係が少し歪んでいるためと思われる。 さらに、前後にデッドゾーンがある事も明らかである。 参考にダイヤルと測定電圧の関係もグラフ化してみた。 そして、その電圧値を元に回転数や電流との関係もグラフ化してみた。

 これらのグラフを、安定化電源で測定した場合のグラフと比較すると、ピタリと一致する。 これは、PWM制御された電源を使用してモータを駆動しても、良質な直流電源を使用した場合と同じ特性を示すことを示唆しているのではないだろうか。 モータが無負荷状態で回転している場合には!

 やはり、負荷状態での場合も確認してみよう。


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 2017/1/9 作成