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モータの測定データ KATO製電気機関車 第3期 フライホイール型モデルのモータ 追加

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■ 測定方法

 ● 測定対象シリーズ
KATO製の電気機関車について第3期のモデルは、EF70が登場してからおよそ20年後に、左右分割型からフライホイール型に進化した。 これによって、走行性能の改善がうたわれ、スムースな低速走行性能がセールスポイントとされた。 このモデルで使用されているモータについて、先回その特性を測定したが、他の同類のモータについても N 増し測定を実施した。
 ● 測定装置
モータ特性を測定しよう その7  出来た」で報告した装置を使用する。
 ● 測定方法
右の写真に示すように、モータホルダを測定台に固定し、そのホルダーにモータをセットした。 モータの一方のフライホイールには糸をかけてモータトルクを測定し、他方のフライホイールには白くのマーキングを付けて回転数を計測する。

 下記にそれぞれのモデルの測定結果を記載する。 順番は、品番や発売時期から推定した年代を想定し、なるべく古いものからリストアップしている。

 モータの写真は製造時にモータ外套やマグネット部分に付与されたマーキングを記録するため上下の面を撮影している。 このモータには品番やロット番号が記されていないが、マーキングは仕様変更などの目印と思われ、解析時の貴重な手掛かりとなるのでは無いかと想定したものである。

 

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■ EF81-119 号機

モデルの品番 3010-1
モデルの品名 EF81 一般色
発売時期 1989年
入手時期 2011年9月 中古ジャンク品購入
分解調査等 マイコレクション EF81 119 一般色
動力車の調査 KATO EF81-119

 このモータの整流子部分の形状が古いタイプの構造の物であった。 マーキングは白色のみ。

 このモータはフライホイール付き動力車の新シリーズ第一弾となったモデルに採用されちたもので、整流子の部分の構造から推定すると、従来のモータ本体にフライホイールを追加したものと想定する。 7ボルト以上で回転抵抗のバラツキが大きくなった以外、特性としては比較的安定した個体である。 低速でも安定した回転を示しておりトルクの粘りも見受けられる。

 

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■ EF65-511 号機

モデルの品番 3017-3
モデルの品名 EF65 JR貨物色
発売時期 1992年
入手時期 2011年11月 中古品入手
分解調査等 マイコレクション EF65 511
動力車の調査 KATO EF65-511

 整流子の部分は新しい構造に変更されている。 モータのマーキングは白色のみ。 回転部の鉄心には緑色の塗装がみられる。

 整流子部分の構造を変更した影響なのか、以前のモデルよりも不安定な状態を呈している。 回転数-電圧特性では直線性が崩れ、電流-電圧特性では特性がフラットになったものの、低速でのバラツキが大きく不安定となっている。 このためトルク特性にも乱れが生じている。 巻き線仕様なども変更しているのだろうか?

 

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■ EF65-1097 号機

モデルの品番 3019-1
モデルの品名 EF65 1000
発売時期 1996年 再生産品
入手時期 2011年11月 中古品入手
分解調査等 マイコレクション EF65 1097
動力車の調査  

 モータのマーキングは白色のみ。

 

 4年前のEF65-511 号機よりも特性は安定化しているが、7ボルトを過ぎるあたりから急に特性が変わっているのは何故なのだろうか? モータに関しては素人なので、原因については全く想像が付かない。 機械屋からすると不思議な現象である。 機械的か、あるいは電磁気的な共振現象なのあろうか? 

 

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■ ジャンク品 3

モデルの品番 不明
モデルの品名 不明
発売時期 不明
入手時期 2011年 単品のジャンク品入手
分解調査等  
動力車の調査  

 モータのマーキングは白色。

 

 EF65-1097 号機のような現象に遭遇したのでN増しを実施した。 即ち、手持ちのモータ類をすべて持ち出し、測定個体の数を増やすねらいで測定を実施したものである。 ネットオークションで入手したモータ単体の一つである。 7ボルトを過ぎるあたりから急に特性が変わっている現象はこの個体でも見られるので、構造的な要因と考えることが出来るだろう。

 

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■ EF65-1124 号機

モデルの品番 3035-1
モデルの品名 EF65-1000 (後期形)
発売時期 2004年 再生産品
入手時期 2006年 新品入手
分解調査等 マイコレクションEF65 1124
動力車の調査  

 モータのマーキングは白色と青色。

 このモデルからは、モータのマーキングが変更になっているので何らかの設計変更が実施されたものと推定する。 電流・電圧特性の傾向ががらりと変わってしまっている。 7ボルトを過ぎるあたりから急に特性が変わっていく現象は無くなっているものの、全体に右下がりの傾向となっている。 速度がアップすると摩擦抵抗が減少する?という不思議な現象に戸惑いを隠せない。 普通の常識では考えられないからである。

 その上にトルク特性の傾向がバラバラになってしまっているのは、最悪の状態ではないか! この個体だけがおかしいのか? 不思議、不思議!

 

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■ EF58-60 号機

モデルの品番 3050
モデルの品名 EF58 60 お召予備機
発売時期 2004年12月
入手時期 2010年 新品購入
分解調査等 マイコレクションEF58 60 お召予備機
動力車の調査  

 モータのマーキングは白色と青色。

 

 EF65-1124 号機用モータで見られた現象では無くて、それ以前のジャンク品3と同様なパターンを示している。 しかし、7ボルトを過ぎるあたりからの特性変化は、この仕様の特徴なのだろうか。

 

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■ ジャンク品 1

モデルの品番 不明
モデルの品名 不明
発売時期 不明
入手時期 2012年 動力ユニットジャンク品入手
分解調査等  
動力車の調査  

 モータのマーキングは白色と青色。

 

 ジャンク品にしておくのはもったい無いような安定した特性を示している。 電流・電圧特性はやや非線形ぱたーんであるが・・・・・・・。

 

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■ ジャンク品 2

モデルの品番 不明
モデルの品名 不明
発売時期 不明
入手時期 2011年 単品のジャンク品入手
分解調査等  
動力車の調査  

 モータのマーキングは白色と青色。

 

 このジャンク品も安定した特性を示している。 電流・電圧特性がフラットになっているの点に注目したい。

 

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■ ED79-11 号機

モデルの品番 3031
モデルの品名 ED79
発売時期 2007年
入手時期 2010年 新品購入
分解調査等 マイコレクション ED79 11
動力車の調査 KATO ED79-11

 モータのマーキングは白色と青色。

 

 この時期のモータは、生産が安定して来たのか、改良が一段落したのか、特性が安定してきている。 電流特性がフラットになったのも良いね!

 

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■ DE50-44 号機

モデルの品番 7009-1
モデルの品名 DF50 四国形
発売時期 2010年
入手時期 2010年 新品購入
分解調査等 マイコレクション  DF50 44
動力車の調査  

 モータのマーキングは白色と青色。

 

 特性が安定してきたと思ったが、やはり個体差はあるようです。

 

■ まとめ

 先回の報告では、同じ形式のモータの中の5セットを選んで測定したが、正常と思われるデータが得られたのはわずかに2セットだけであった。 このため、残りの個体についても全部測定してみた。

 外見上の違いから、整流子部分の形状が古いタイプの構造の初期のモデルと、モータのマーキングが白色のみの中期のモデル、およびモータのマーキングが白色と青色の後期のタイプに分別出来たが、その特性の違いを見ようと検討するも、特性の不安定性からはっきりとした違いを見つけ出すことが出来なかった。 そこで、モデル化によってモータの設計要素を求めて比較検討すべく、モータモデルでの解析を始めている。 結果がどうなるか予測が付かないが、やってみてから考えることにしよう。

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 なお、今回は、ホビーとしての興味本位でいろいろな特性を測定したが、実際の鉄道模型の動力車としてどんな影響があるのか、あるいはどんな現象につながるのか興味があると思われるが、実際に運転させてみると、ほとんど分からない と考えている。

 電流値の特性が非線形だ・・・・・・・・・・・・といっても、走行状態ではそれを感じることは出来ないはずである。

 

 動力車を走らせて、その車両の良し悪しを判断するのは、

などの評価項目ぐらいであり、上記のグラフに示し項目ではこれらを評価出来ないのである。

 従って、この実験データが模型車両の良し悪しを決めるものではないことを理解して置いて欲しい。 しかし、その裏側にある製造者の方々の技術力を知る手掛かりになるのではないかと自負している。